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異界見聞録。九十六式歩行空挺戦車、ハイエルフ、フェンリルと異世界を旅する。  作者: トウフキヌゴシ


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第36話、魚型多関節構造式完全思考同期型装甲巨兵、”アリエル”。

 ウーボートの格納庫の中、巨大な金属の人魚があおむけに横たわっている。 

 ガンド帝国の皇族は生まれついた時、専用の装甲巨兵が造られる。

 皇位継承権の低い八番目の皇女、”ナハト―ラ”も例外ではなかった。


 魚型多関節構造の下半身を持つ水陸両用の完全思考同期型装甲巨兵、”アリエル”である。


 褐色の肌に、切れ長の目。

 本来は白い肌だが砂漠の迷彩仕様で褐色なのである。

 ()()ゴン、()()クト仕様だ。

 瞳を模した紅くて丸い光学素子。

 かすかに笑う口元は薄い布で隠される。

 曲線を描く金属の板で作られる肩下の髪は放熱板と舵の役目を担う。

 薄めの胸部装甲にくびれた腰。 

 そして、複雑に組み合わされた魚のような下半身。

 金属製の尾びれと背びれがついていた。


 手には一本の三又のトライデント


 人一人が通れるほどの丸いハッチ。

 そこから狭い格納の巨兵の腹の上に一人の少女が下りた。

 巨兵用の黒い操縦服を着ているナハト―ラだ。

 丸いハッチを閉め丸いハンドルを回してロックする。

 赤い照明の中、薄めの胸部装甲に目を向けると、


 シュッ


 静かな音とともに胸部装甲が上に開く。

 簡素なシートにレバー。

 モニターが操縦席を包むように配置されている。

 ナハト―ラが座ると音もなく胸部装甲が閉まった。

 完全思考同期型の操縦席はシンプルである。


「アリエル起動、思考同期」

 ナハト―ラがつぶやく。


 シャラン


 各部の関節、特に魚型の下半身がピクリと反応した。


 ギュン


 槍を持たない腕が前に出て手のひらを開いて閉じる。


「思考同期確認、出撃準備完了」


「ナハト―ラ皇女、潜砂時間の限界は10分ですっ」

「それ以上は必ず砂から出てくださいよっ」

 アリエル内臓のマナバッテリーでは10分が限界である。

 それ以上は圧壊、砂につぶされるだろう。

 これは潜砂艦でも同じである。

「分かりました、砂を入れてください」

 

 ザザザザ


 流動術式で液体のようになった砂が狭い格納庫に満ちる。

「キャラバン船はほぼ真上です、そのまま上昇を」


「行きます」


 ガコン


 潜砂艦の下部のハッチが左右に開く。


「流動術式起動」


 ゾプン


 下半身の装甲を虹色に輝かせ、金属の巨大な人魚が砂の中に泳ぎだした。

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