第35話、大発見。
「本当にあった」
潜望鏡をのぞきこむ潜砂艦艦長、”ドワイフ”が言った。
潜望鏡の向こうには見渡す限りの水面。
「何十年ぶりの新しいオアシスの発見ですね」
艦長の後ろの椅子に座った、”ナハトーラ”皇女が聞いた。
紅い瞳。
漆黒の髪を三つ編みに。
シックな黒い女性士官用の軍服。
ひざ下のスカートがよく似合う。
まだ幼さの残る十代前半だが、将来美人になることは確定しているだろう。
「ああ、水の境界面近くまで微速前進」
潜望鏡で見える景色が前に動く。
「停止」
あと少しで水中だ。
「給水チューブ、展開」
ガコン
艦の前方から水を取り込むためにチューブが伸びているはずだ。
「チューブ展開完了、給水開始」
艦内に水を取り込み始めた。
「失敬しますわ」
ナハト―ラ皇女だ。
ガンド帝国の超軍事機密である潜砂艦は、その存在を誰にも知られていない。
”サーマルカーン”でもそうだが、水の使用料金は一切払っていないのだ。
少し罪悪感を感じているような表情のナハトーラ皇女であった。
「で、どうします? 皇女」
ドワイフが潜望鏡から顔を離しながら聞く。
一応、亜人かつ使徒の色持ちのエルフと獣人を捕獲するためにつけてきたのだ。
「攻撃しますか?」
「無理でしょう」
「ですよね」
潜砂艦の武装は、試作砂中用魚雷が二発。
これは砂の中を進むが、人が歩く速さと変わらず直進しかしない。
命中してもキャラバン船を足止め出来たらよいくらいである。
もう一つの攻撃の手段も、
「弩級戦艦相手にはいろんな意味で無理ですね」
「偵察くらいには出れますよ?」
ナハトーラ皇女だ。
「ふむ、多分新しいオアシスの認定のためにギルドの戦艦は先に帰ると思います」
新しいオアシスは大発見だ。
足の遅いキャラバン船を置いて報告を急ぐはず。
ドワイフ艦長が潜望鏡をのぞきこむ。
「うっ……?」
キャラバン船の上に座る装甲巨兵の顔がこちらを向いている。
――目が合った!?
「……まさかな」
「どうしました」
皇女の不安そうな表情。
「キャラバンの装甲巨兵が気になります」
「はい」
「戦艦が離れたら見に行ってくれますか?」
「分かりました。 ”アリエル”を出しましょう」
皇女はもう一つの攻撃手段の名前を出した。
予想通りギルドの弩級戦艦が先に出発したのである。




