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異界見聞録。九十六式歩行空挺戦車、ハイエルフ、フェンリルと異世界を旅する。  作者: トウフキヌゴシ


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31/33

第31話、ナハトーラ皇女。

 ギルドの軍艦とニュウロウラン(予定)に出発する一週間前、ワイルダーキャラバンの船がサマーンカーンに入港した。

 オアシスの発見の報告と手続きに時間がかかるのだ。


 その間、シャル殿とロボは、”サマーンカーン”の観光を行った。


「シャルさん、こちらがサマーンカーンの名物、”バザー”通りです」

 馬車三台が余裕ですれ違えるくらいの大通りの左右に、布製の屋根の下いろいろな店が並んでいる。

 案内は、ワイルダーキャラバンの若い娘三人。

「ろぼちゃろぼちゃ」

 ロボにはローラが引っ付いていた。

 全員、ゆったりとしたキャラバンの衣装に身を包む。

 シャル殿の金髪はターバンのようなもので隠されていた。

 干した果物や珍しい香辛料、異国情緒漂うアクセサリーなど、シャル殿を含めた娘たちが楽しそうに買い物をしていく。

 ローラを肩に乗せたロボはさしづめ娘たちの護衛と言うところか。


「きゃっ」

 カチン

「むっ」

 パサリ


 シャル殿が誰かに当たった。

 ターバンが落ち見事な金髪が流れる。

 足元には尻もちをつい少女。

 三つ編みの黒髪に白い肌。

 足元には分厚いグルグル眼鏡(認識阻害付き)。

 紅い瞳がシャル殿を見上げていた。

「すまないっ、けがはないか?」

 驚きのため虹彩に金色が混じる。

 シャル殿が少女に手を出した。

「ひっ、使徒の虹彩っ」

 尻もちをついたまま後ずさる。

「ガ、ガウ?」

 ロボが心配そうに(金色の瞳で)少女を見た。

「ひいい」

「ご、ごめんなさいっ」

 シャル殿の差し出した手を取ることもなく、逃げるように走り去った。


「な、なんだったんだ?」

「ガウ?」

 シャル殿とロボが怪訝そうに首をかしげた。


 少し離れたところだ。

「ふんっ、どこにいっていたのですか、……第八皇女」

 ゆったりとした神官服を着た三十代の男性がえらそうに言った。



 胸には、青色と銀色の大小二つの丸の模様。

 ”ファーストビル教”の、”チキウと”、”トゥキ”をあらわすという紋章である。

 主神は、”ワクセイカイハツコウシャ”。

 罪を犯した人類は星の世界からこの地の堕とされた。

 いずれ星の世界に帰り、失われた大地母神、”チキウ”を取りもどす旅に出るのが目的である。

 ガンドーラ王国の時代から続く、ガンド帝国の主教でもあった。 


◆  


「いえ……」

 グルグル眼鏡をつけた少女が小さな声で答える。

「誰かとぶつかりましたか、相変わらずどんくさい」

 感じの悪い神官がぶつかったほうをみた。

「……おやあ」

 シャル殿が金髪をターバンの中に隠しているのを見た。

「金色の亜人と獣人……ですか」

「けがわらしいあのもの達をつけなさい」

「はっ」 

 近くにいた部下が答えた。

「あの」

 少女がやめて欲しそうに手を出した。

「何ですか」

「いえ、何でもありません」

 少女がうつむいて答えた。


 後に、ガンド帝国、”ナハト―ラ第八皇女”所有の潜砂艦がワイルダーキャラバンの後をつけていくことになる。


 潜砂艦は黒く塗られていた。

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