第29話、ヴァカンス。
当たり前だが砂上船は水に浮く。
透明な水の底は砂色の砂の波がくっきり見える。
砂底についた砂上船の錨がユラユラと輝いていた。
「ひゃっほおおう」
ザパアアン
ワイルダーキャラバンの子供たちが船の甲板からオアシスに飛び込む。
キャラバンの家族分、水着を高性能 3Dプリンターで打ち出した。
将来、水着がオアシスで水遊びができる超富豪層に売れることになるのはここだけの話だ。
「あ”あ”」
シャル殿の地の底から響いてくるような低い声。
目の前には、ホタテビキニだ。
台所でGを見つけたような目で見てきた。
「さ、さすがに着てはくれないか」
性的感情が薄いハイエルフでも限界があるのだ。
「まあ、生前でも現実に着てる人は見たことないなあ」
TENGAとかかれた医療用アームに持ったホタテビキニを下げた。
「……そんなものをすすめるなっ」
虹彩に金色が少し混じる。
結局、白のセパレートの水着、腰にパレオを巻いた。
「美しい」
チャールズの長女、アリーシャだ。
「すごいっ」
オルソンの長女、ネリーである。
「シャルさん、すてきですっ」
オルソンの次女、ソフィーである。
三人とも十代前半、色とりどりの水着を着たワイルダー家の女子たちだ。
「そ、そうか、あ、ありがとう」
褒められなれていないシャル殿が頬を赤く染め照れていた。
ちなみに、チャールズの次女であるローラは、
「ろぼちゃ、もふもふ~」
水の中でロボの顔にしがみついて耳を触っていた。
「こら、ローラ、獣人が耳や尻尾を触らせるのは恋人か番だけよっ」
甲板からローラも母であるキャリーが声をかけた。
「ガウッ!」
ロボが初めて知ったという驚いた顔をした。
「ろぼちゃ、だいすきだからいいも~ん」
さらにしがみついた。
「キャッキャ、キャッキャッ」
腕には、オルソンの次男であるウイルがしがみついていた。
神獣、フェンリル。
子供は、最も守ってくれる存在を本能的に知っているのかもしれない。
「さて、マーカーを設置しようか」
位置信号を送るビーコンだ。
いつ置いたかわかるためワイルダーキャラバンが来た証拠になる。
長年、水が止まっていた影響か過去の街の遺跡が水の中に沈んでいた。
「では、新たなオアシスの発見を、”デザートギルド”に報告しに行こうか」
デザートギルドは、砂漠に点在するオアシス都市をつなぐ小連邦国のような組織だ。
ここに報告して登録すると褒章金と水の使用料の免除が許可されるのだ。
ワイルダーキャラバンは、砂上船の水のタンクを満タンにして、”デザートギルド”のある大オアシス都市、”サーマルカーン”へ向かう。




