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第2話 雷剣ドンデルを一振りしたら、なぜか敵が消し炭になった

 どうにか雷将ヴォルフを仕留めた俺の手には、奴が最後まで握っていた禍々しい大剣が収まっている。

 柄には稲妻を模した細工が施され、刀身からは今も紫がかった光がゆらゆらと漏れ出している。見るからに「触るな危険」と書いてあるような代物だ。

(って、やばっ! なんかこの剣、握った途端に俺の魔力をごっそり吸収してきてるんだけど!?)

 まるで底なし沼のように魔力を吸い上げられる感覚。体の芯から力が抜けていくような、不快この上ない感触だ。歴代の持ち主たちが命を削って振るってきた魔剣なのだ、普通の人間なら一瞬で干からびて死んでいるだろう。

 だが、全スキルレベル1の器用貧乏である俺には、なぜか魔力量だけは無駄に豊富にあるという謎スペックが備わっていた。

(これだけ吸われてもまだ耐えられそうなのは助かるが……問題はそこじゃない)

「おい! 今のすさまじい雷はヴォルフ将軍様だ!」

「あっちだ! 敵の生き残りがいるぞ!」

(あ、やべ。さっきヴォルフが派手に雷使って自爆したから、敵のえらいさんたちが護衛を引き連れてゾロゾロ来ちゃったよ……どうする!?)

 逃げ道はない。周囲は倒れた兵士ばかりで、俺を助けに来てくれる味方の影もない。

(逃げるか。いや、この剣を持ったまま走れば目立つ。捨てるか。いや、売れば老後の資金に……)

 考えている間にも、敵の足音が迫ってくる。

 結論。考えるよりも先に、俺は生き残るための防衛本能から、魔力を吸い続けるその大剣をヤケクソ気味に横に一振りした。

「ええい、くそっ! こっち来んな!」

 バチバチバチバチッ!!

 大剣の軌跡から、目を焼くような青白い電撃が扇状に放たれた。それはさっきヴォルフが放とうとしていたものよりも、はるかに太く、凶悪な雷の津波だった。

「ぎゃあああああっ!?」

「ば、ばかな……将軍様以上の――」

 すさまじい轟音とともに、迫ってきていた敵の幹部や兵士たちが、まとめて黒焦げになって吹き飛んでいく。

 やがて、戦場に不気味なほどの静寂が落ちた。

(……うわぁ)

 俺はしばらく呆然と、煙の上がる戦場を眺めていた。

(俺、魔力だけは無駄にあるから、剣の威力がとんでもないことになっちゃったよ……)

 周囲を見渡すが、もう動いている敵は一人もいない。ひとまず命の危機は去ったようだ。

 さて。

 いつまた敵の増援が来るかわからない。ここは崩壊した最前線だ。早く逃げるに越したことはないが、逃げるにも金がいる。食料もいる。

(戦場あさりとか言ってる場合じゃない。命がけなんだから、これくらい貰ってもバチは当たらないよな)

 俺は何も考えず、倒れている敵の中でも、身分や階級が高そうな連中から片っ端に指輪や金目のものを回収していく。あとで高く売れそうな装飾品ばかりだ。

 腕の装飾品、指輪、腰の小剣、革袋の中の金貨——

(老後の安心のためだ。断じて欲がかいてじゃない)

「お、おい、あそこを見ろ……!」

「信じられん。たった一人で雷将ヴォルフを討ち取り、あまつさえ敵の幹部連中を全滅させ……なんだあれは。まだ身ぐるみを剥いでいるのか」

 ふと背後から声がして振り返ると、急いで駆けつけてきた味方の部隊が、少し距離を置いてこちらを唖然と見つめていた。その目は、まるで理解不能な化け物でも見るかのようだ。

(なんだ、近くにいたのかよ。ならもっと早く助けに来てくれよ……)

「あ、いや、これは生活費というか……老後の資金の確保というか……」

「も、もしや閣下は、戦利品を以って我らに富をもたらそうという御心か……! なんという御大将だ!」

(そんな大層な話じゃないんだが)

 俺は内心でため息をつきながら、手の中の金貨をこっそりポケットにねじ込んだのだった。

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