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第六十三話 土の下の歴史

数日後。

湯の沢村役場・会議室。

机の上には

数枚の写真と

土器の破片が並んでいた。

集まっているのは

湯沢

李

箕輪

そして

発掘調査団の主任調査員 松岡。

松岡は

眼鏡を押し上げながら言った。

「正直に言います」

一拍。

「最初は」

「よくある縄文遺跡だと思っていました」

湯沢が聞く。

「違うんですか」

松岡は資料をめくった。

「違います」

写真を一枚出す。

「これです」

写っているのは

地面から出てきた

円形の石の配列。

箕輪が言う。

「石?」

松岡が言った。

「環状列石です」

李が眉を上げる。

「ストーンサークル?」

松岡が頷く。

「はい」

一拍。

「しかも」

資料をもう一枚出す。

「規模が大きい」

さらに写真を出す。

「この土器」

湯沢が見る。

松岡が言う。

「縄文後期」

一拍。

「おそらく」

静かな声。

「三千年前」

箕輪が口笛を吹く。

「三千年か…」

松岡が続けた。

「さらに」

写真を出す。

「この炭化物」

一拍。

「炭素年代測定をすれば」

静かな声。

「年代がはっきりします」

湯沢が言う。

「価値は?」

松岡は

少し間を置いて言った。

「かなり高い」

そして

はっきり言った。

「国史跡級の可能性があります」

部屋が静まり返る。

箕輪が言う。

「それ」

一拍。

「すごいの?」

松岡が答えた。

「はい」

一拍。

「保存対象になります」

李が聞く。

「つまり」

一拍。

「工事できない?」

松岡が首を振る。

「いえ」

資料を出す。

「調査範囲をずらせば」

「保存しながら」

一拍。

「公開遺跡として活用できます」

湯沢が考える。

李が言った。

「観光」

松岡が頷く。

「縄文遺跡は」

一拍。

「観光資源になります」

箕輪が笑う。

「温泉」

「医療」

「縄文」

一拍。

「盛りすぎじゃない?」

湯沢は少し考えてから言った。

「いや」

一拍。

「むしろ」

静かな声。

「村の歴史です」

松岡が言う。

「縄文人も」

一拍。

「温泉を使っていた可能性があります」

李が言う。

「三千年前から温泉村」

箕輪が笑った。

「ロマンあるね」

そのとき

会議室のドアが開いた。

入ってきたのは

川上だった。

「話は聞いた」

全員が振り向く。

川上は

机の上の土器を見た。

松岡が説明する。

「縄文後期の土器です」

川上が言う。

「この山に」

一拍。

「人が住んでたのか」

松岡が頷く。

「三千年前から」

川上は

しばらく土器を見ていた。

そして

ぽつりと言った。

「……村の歴史だな」

湯沢が頷く。

「はい」

川上は腕を組んだ。

「医療リゾート」

一拍。

「縄文遺跡」

静かな声。

「ずいぶん賑やかになった」

箕輪が笑う。

「観光パンフレット作れますね」

川上は無視した。

そして

湯沢を見る。

「もし」

一拍。

「遺跡が国史跡になったら」

静かな声。

「どうする」

湯沢は答えた。

「守ります」

川上が聞く。

「工事は?」

湯沢は言った。

「設計を変えます」

一拍。

「遺跡を中心にした施設にします」

室内が静まる。

川上が

少しだけ笑った。

「辞めてきた官僚」

一拍。

「本当に」

静かな声。

「面倒くさい男だ」

だが

その顔には

最初の強い拒絶は

もうなかった。

湯の沢の計画は

少しずつ

村の未来の話に

変わり始めていた。

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