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第五十五話 市議会の壁

数週間後。

佐久野市議会。

議場。

傍聴席には

湯沢

李

常田

箕輪。

そして

湯の沢の住民たち。

議題はただ一つ。

「白樺の湯 売却議案」

議長が言う。

「それでは質疑に入ります」

最初に立ったのは

年配の議員だった。

「質問」

市長を見る。

「この白樺の湯は」

「旧湯の沢村が二十億円をかけて作った施設です」

一拍。

「それを」

「六億円で売る」

議場がざわつく。

議員が続ける。

「市民に説明がつくのですか」

市長は静かに答える。

「現在の資産価値」

「将来の修繕費」

「赤字運営」

一拍。

「総合的に判断しました」

別の議員が立つ。

比較的若い。

「質問」

資料を掲げる。

「この湯の沢メディカルリゾート計画」

「雇用百人」

「本当に可能なんですか?」

議場がざわつく。

傍聴席。

箕輪が小声で言う。

「来たわね」

議員は続ける。

「夢物語では?」

議長が言う。

「答弁を求めます」

市長は言った。

「計画の説明のため」

一拍。

「事業者に発言を許可したい」

議場がざわつく。

議長が頷く。

「許可します」

市長が言う。

「湯沢さん」

傍聴席。

湯沢が立ち上がる。

静かな足取りで

議場の中央へ。

深く一礼する。

「湯沢と申します」

議員たちがこちらを見る。

湯沢が言う。

「まず」

一拍。

「白樺の湯を六億円で買う理由ですが」

資料を掲げる。

「この施設」

「設備更新が必要です」

一枚めくる。

ボイラー更新

屋根防水

配管更新

「これだけで」

一拍。

「七億円以上かかります」

議場がざわつく。

湯沢が続ける。

「さらに」

「赤字は毎年八千万円」

一拍。

「十年で八億円です」

議員たちが黙る。

湯沢が言う。

「つまり」

「この施設は」

一拍。

「放置すれば市の負債になる」

議場が静まる。

湯沢が続ける。

「私たちは」

「それを」

一拍。

「民間の力で再生する」

若い議員が言う。

「しかし」

「雇用百人は」

「根拠が薄い」

湯沢は頷く。

「確かに」

一拍。

「簡単ではありません」

議場が静かになる。

湯沢が言う。

「ですが」

資料をめくる。

そこにある図。

医療棟

宿泊棟

温泉施設

弥生パーク

湯沢が言う。

「医療スタッフ」

「ホテルスタッフ」

「温泉スタッフ」

「観光スタッフ」

一拍。

「合計」

「百十七人」

議場がざわつく。

議員が言う。

「そんなに?」

湯沢が言う。

「医療施設だけで」

「四十人」

「ホテルで」

「三十人」

「温泉施設」

「二十人」

「観光」

「十人以上」

一拍。

「計算すると」

「百人を超えます」

議場が静まる。

湯沢が続ける。

「しかも」

一拍。

「医療観光は」

「長期滞在です」

議員が聞く。

「長期?」

湯沢が言う。

「リハビリ」

「温泉療養」

「美容医療」

一拍。

「平均一週間以上」

議員たちが顔を見合わせる。

湯沢が言う。

「つまり」

「宿泊」

「飲食」

「土産」

一拍。

「地域にお金が落ちます」

静かな議場。

湯沢が最後に言った。

「この計画は」

一拍。

「温泉施設の売却ではありません」

議員たちを見る。

「地域の再生です」

議場は

静まり返っていた。

そして

議長が言った。

「……質疑を続けます」

しかし

空気は

さっきまでとは

明らかに変わっていた。

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