第五十話 湯の沢メディカルリゾート構想
佐久野市役所での会談から一ヶ月後。
旧湯の沢村――
現在の 佐久野市湯の沢地区。
山の斜面に建つ温泉施設
白樺の湯。
その会議室で、
小さな会議が開かれていた。
出席者は五人。
湯沢。
李。
常田医師。
そして、
佐久野市企画部長と観光課長。
机の上には新しい資料が置かれている。
タイトルは――
「湯の沢メディカルリゾート構想」
湯沢が言った。
「今日が」
一拍置く。
「スタートです」
李がスクリーンを操作する。
一枚目のスライド。
全体計画図。
山の斜面に、
三つの建物が描かれていた。
常田が説明する。
「中央が医療棟」
「右が宿泊棟」
「左がリハビリ棟」
観光課長が驚く。
「かなり大きいですね」
李が答える。
「総事業費」
一拍。
「120億円」
企画部長が言う。
「白樺の湯の改修は?」
湯沢が言う。
「残します」
常田が続ける。
「むしろ」
一拍置く。
「主役です」
窓の外には白樺の湯の露天風呂。
山の風景。
静かな温泉。
常田が言う。
「普通の病院ではありません」
スライドが切り替わる。
医療リゾートの概念図。
・温泉療養
・リハビリ
・予防医療
・長期滞在
観光課長が言う。
「ホテルみたいですね」
湯沢が笑う。
「ホテルでもあります」
李が補足する。
「滞在型医療です」
「一週間」
「二週間」
「一ヶ月」
企画部長が言う。
「患者が泊まるんですか」
常田が答えた。
「はい」
一拍置く。
「東京から来ます」
観光課長が言う。
「本当に?」
常田は静かに言う。
「東京の病院は混んでいる」
「リハビリは短い」
「温泉はない」
湯沢が言う。
「だから」
「ここに来る」
李がスライドをめくる。
雇用計画
・医師
・看護師
・理学療法士
・介護士
・ホテルスタッフ
・温泉管理
合計。
百人。
観光課長が小さく言う。
「百人……」
企画部長が言う。
「この地区の人口の一割です」
窓の外を見る。
静かな山村。
人影は少ない。
常田が言った。
「若い人を呼びます」
一拍。
「医療スタッフ」
「ホテルスタッフ」
「家族も来る」
湯沢が言う。
「町ができる」
観光課長が笑った。
「リゾートというより……」
李が言う。
「医療の村です」
沈黙。
窓の外で風が吹く。
白樺が揺れる。
その先に、
古い温泉施設。
白樺の湯。
湯沢が静かに言った。
「ここから」
一拍置く。
「全部始まります」
こうして――
湯の沢メディカルリゾート構想
が正式にスタートした。




