↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
47/71

第四十七話 最後の一押し

三日後。

東京・赤坂。

美容整形外科最大手グループの本部。

ガラス張りの会議室に、

湯沢、李、そしてM&Aアドバイザーが座っていた。

向かいには二人。

最大手グループの経営企画部長と、法務担当役員。

テーブルの上には契約案。

すでに大筋はまとまっていた。

事業譲渡。

価格 二十七億円。

常田美容外科クリニックは、

グループの銀座院として再出発。

そして常田医師は、

非常勤理事としてグループに参加する。

ほぼ合意だった。

だが――

李が静かに口を開いた。

「一点だけ」

部長が言う。

「はい」

李は言った。

「価格です」

部長は少し笑った。

「二十七億」

「かなり高いと思いますが」

李は淡々と答えた。

「評価しています」

「ただ」

一拍置く。

「他社もまだ動いています」

部長が眉を上げる。

「ファンドですか」

李は答えた。

「はい」

嘘ではない。

実際に二十三億の提示はあった。

ただし、もう追う気配はない。

部長は腕を組んだ。

「なるほど」

李は言う。

「御社は」

「日本最大手」

「そして」

一拍置く。

「院長は業界のカリスマ」

部長は小さく笑う。

李は続けた。

「そこに」

「常田医師が加わる」

「これは」

「業界としても象徴的です」

法務役員が口を開いた。

「つまり?」

李は静かに言った。

「二十九億」

部屋が少し静かになる。

湯沢は何も言わない。

部長は少し考えた。

そして言った。

「高いですね」

李は言う。

「ブランド統合の価値です」

部長が聞く。

「常田先生は?」

湯沢が答えた。

「理事就任」

「問題ありません」

法務役員が言う。

「非常勤ですね」

湯沢が頷く。

「はい」

「実務は不要」

「ブランド参加」

部長は椅子にもたれた。

窓の外には赤坂の街。

少し考えてから言う。

「実は」

李が顔を上げる。

部長は続けた。

「院長が」

「かなり乗り気です」

湯沢が言う。

「会ったことは?」

部長は答えた。

「ありません」

「ただ」

少し笑う。

「常田先生の症例は全部見ている」

李が言う。

「尊敬している?」

部長は頷いた。

「はい」

「同業者として」

沈黙。

部長は資料を閉じた。

そして言った。

「分かりました」

湯沢が顔を上げる。

部長は続けた。

「条件があります」

李が言う。

「何でしょう」

部長は言った。

「理事ではなく」

一拍置く。

「顧問兼理事」

湯沢が言う。

「肩書きが増えたな」

部長は笑った。

「ブランドですから」

そして言った。

「二十九億で行きましょう」

沈黙。

李がゆっくり頷いた。

「ありがとうございます」

部長は言う。

「ただし」

「スピードです」

「一ヶ月以内にクロージング」

湯沢が言った。

「問題ありません」

法務役員が言う。

「契約書を修正します」

会議は終わった。

エレベーターの中。

湯沢が言う。

「二十九億か」

李は静かに言った。

「満額です」

湯沢は笑った。

「銀行の土地」

「十一億」

李も少し笑う。

「銀座は別世界です」

ビルを出る。

赤坂の空は晴れていた。

湯沢が言った。

「これで」

「湯の沢の病院が作れる」

李は頷いた。

遠く長野の山の中。

まだ何もない土地。

しかし今、

その土地に建つ未来の病院の資金が

ほぼ揃った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。