第22話 銀座のクリニック
数日後。
三人は東京にいた。
銀座の通り。
高いビルが並び
人の流れが絶えない。
湯沢は周りを見渡した。
「相変わらずだな」
李が言う。
「久しぶりですか」
湯沢は少し笑った。
「いや」
「3ヶ月前まで、霞が関にいた」
箕輪さやかが驚く。
「えっ」
湯沢は肩をすくめた。
「仕事でな。中央省庁の会議ばっかり。つか、箕輪さん知っていたでしょ…アレだけ人を煽っておいて」
李が言う。
「それは大変ですね」
湯沢は苦笑した。
「だから」
「今こうして山にいるのが」
少し空を見上げる。
「楽なんだ」
箕輪が笑った。
「東京の人多すぎます」
目の前には高いビル。
ブランド店。
高級レストラン。
そして
そのビルの一つに
看板があった。
常田美容外科クリニック
湯沢が言う。
「ここか」
三人はエレベーターに乗った。
十階。
ドアが開く。
そこには
ホテルのような受付があった。
受付の女性が微笑む。
「ご予約はありますか」
湯沢が言う。
「いや」
「院長に会いたい」
受付の女性は少し困った顔をした。
「院長は本日手術が…」
李が静かに言う。
「これを」
封筒を出した。
三十年前の手紙。
宛名は
御代田彦衛門
受付の女性が首をかしげる。
「少々お待ちください」
奥へ消えた。
数分後。
別の男性が出てきた。
スーツ姿。
四十代くらい。
「院長秘書の佐伯です」
湯沢が言う。
「湯の沢村から来ました」
李が手紙を差し出す。
佐伯がそれを見る。
そして表情が変わった。
「これは…」
李が言う。
「院長に渡してください」
佐伯はしばらく考えた。
そして言った。
「院長の常田は今、手術中です」
箕輪が小さく言う。
「わかっています」
佐伯は続けた。
「ですが」
「終わったら」
「見せます」
湯沢が言う。
「お願いします」
三人はロビーで待つことになった。
窓の外には東京の街。
車。
人。
霞が関のビル群も遠くに見える。
湯沢が言った。
「3ヶ月前まで」
「あそこに通ってた」
箕輪が言う。
「信じられません…私生活あんなにポンコツなのに」
湯沢は笑った。
「俺もだ」
李は黙っていた。
三十年前の手紙。
必ず戻る。
そう書いた医者。
その人が
今ここにいる。
一時間後。
佐伯が戻ってきた。
「常田が」
三人を見る。
「お会いします」
箕輪が小さく息をのむ。
「本当に?」
佐伯が頷く。
「ただし」
少し言いにくそうに言った。
「常田は少し驚いています」
湯沢が言う。
「そりゃそうだ」
佐伯は続けた。
「三十年前の話ですから」
李は静かに言った。
「はい」
佐伯がドアを開ける。
「こちらへ」
三人は奥へ進んだ。
院長室のドア。
佐伯がノックする。
「院長」
「湯の沢村の方々です」
中から声がした。
少し年を感じる声。
「入ってください」
ドアが開く。
そこにいたのは
白髪の医者だった。
眼鏡。
白衣。
鋭い目。
机の上には
三十年前の手紙。
男はゆっくり言った。
「御代田彦衛門」
そして三人を見る。
「まだ生きているんですか」
李が答える。
「はい」
医者は少し驚いた顔をした。
そして
静かに言った。
「私が常田真一です」
三十年前に
湯の沢村の未来を考えた医者。
その人物と
三人は
ついに
向かい合った。




