第1章 最終話 魔王の始まり
「見てくださいシオンくん! 私たちのことが新聞に載ってますよ!」
アルピナの処刑を止めた翌日。魔力を大量に使用したからか10時過ぎに起きてきたクロが、屋敷の食堂でナイフに魔法を流す訓練をしながらコーヒーを飲むシオンに駆け寄ってきた。
「また外に行ったのか?」
「軽いものならイーダの方から送れるんです。それより新聞ですよ新聞! ついに全国デビューです! なんでそんなにテンション低いんですか!?」
「別に俺はよく載ってたから……」
「うわ有名人アピール! 私だって魔王軍幹部なんですけど!?」
有名になりたいんだったらこんなダンジョンに閉じこもってるなよと思いつつも、シオンはクロから新聞を受け取って一面を見る。
「『次期勇者と呼ばれたシオン・オーラ。アンデッドとして復活し、次期魔王を宣言』……地味にずれてるな」
「そうなんですよ! 私のこともシオンくんを蘇らせたただのアンデッドってことになってるんです! 魔王軍幹部なのに!」
「幹部の素性がわかってるのなんて数体だからな。国王軍の軍人が簡単に捕まってたしメンツとしては幹部の方がいいんだろうが、記事なんて所詮記者の思想の具現化。王政への批判がしたかっただけじゃないか? 快く受けたインタビューが批判目的だったなんてしょっちゅうだ」
「まったく、あんな人類にとって大きな危機を迎えておきながら人間同士で争う種を生み出すなんて。こういう無駄な対立を作ろうとしてるところが人間のダメなところですよね」
クロが腕を組みながら文句を垂れているが、まさしくその通りのようだ。見出しはシオンについてのものだが、内容はシオンの魔王宣言よりも魔力のないシオンに弄ばれた勇者パーティーに対する批判が主。内情はどうあれ自分たちの代わりに戦ってくれた勇者への恩義は微塵も感じない。
「自分とシオンくんのとこしか読んでないですけどお弟子さんのことはどうだったんです?」
「『シオンを追い払い人々を救った次期英雄』だと。これ見たアルピナ新聞社に抗議行ってそうだな……」
舞台上でのやり取りは大声を出さない限りほとんど観衆には届いていなかったはずだ。出来事だけを追うとアルピナが手錠を壊し参戦した途端シオンは逃走。奪われかけた勇者の力も回収できた。傍から見ればアルピナの圧にシオンが屈したように見えたはずだ。
「まぁ色々ありましたけどよかったですね。お弟子さんとは会えましたし助け勇者に仕立て上げることまでできた。シオンくんとしては100点満点じゃないですか?」
「色々実験できたしな。ひさしぶりにバフもできたし楽しかった。楽しかったなー……」
「あんな高笑いするシオンくん初めて見ましたもん。そんなにバフうれしいですか?」
「そりゃあな。身体能力が上がると安心感が違う。まぁ陰魔法の応用性も嫌いじゃないが」
シオンがナイフを新聞紙に押し当てるとみるみるうちに紙がボロボロに崩れていく。吸収の魔法をナイフに込めていたことで発生した現象だ。
「結局は自分自身なんだと思う。人間として生きようがモンスターとして生きようが自分は自分。大事なのは生きてる場所じゃない。自分が何をしたいかだ」
バフをかけていたとしても新聞紙が崩れる未来は変わらない。シオンの目的は依然として魔王の討伐だ。
「さてとシオンくん。魔王として姿を見せた以上これでもう後戻りはできませんよ」
「する気もない。俺は魔王を倒して次の魔王になる。だからちゃんとついてこいよ、クロ」
人間たちが生きる世界の遥か下。日の光も届かないダンジョンの最下層で、シオンは改めて魔王となる覚悟を固めるのだった。
これにて第1章終了となります。想像していたより長くなってしまいました。次章からは魔王になるための活動が本格化し、シオンくんの村を滅ぼした仇が登場する予定です。よろしければ引き続きお付き合いをいただけますと幸いです。
それではここまでお読みいただきまことにありがとうございました。おもしろい、続きが気になるとおもっていただけましたらぜひぜひブックマークと☆☆☆☆☆を押して評価で応援していただけるとうれしいです。やる気が出ます! 引き続きよろしくお願いいたします。




