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5.訓練開始

 巨大な城の中には大きな中庭が複数あり、その内の幾つかは兵士達の訓練場として使用されている。

 ユウ達は今、とある訓練場に集合していた。


 その日初めて城外から城を見上げたが、いやはや驚かされた。

 あまりの巨大さに、訓練場から見上げただけではその全貌を拝むことも出来ない。これこそフェルマニア王国が誇る巨城、フェルマニア城。

 造りの殆どが石で構成された芸術的なそれは、どこぞの夢の国の城なんて目じゃないほど、とてつもない重量感と存在感を見るものの目に焼き付ける。

 この世界の建築技術がどれほどのものかユウは知らないが、この規模の城を人力だけで作るには途方もない労力と時間を要するだろう。


「よし、全員集まったな」


 訓練場のど真ん中で、ベルザムが腰に手を当てて言った。

 訓練にはユウや一神達だけじゃなく、アリス王女も参加していた。そしてあの問題児、桐山もちゃんと来ている。さっきの食事もあんな態度で断ってたし、てっきりバックれるかと思っていたので意外だった。


「ではこれより勇者聖真隊の特別訓練を開始する。よろしく頼む」


 勇者聖真隊とは魔王、並びに魔王軍に対抗するため編成されたフェルマニア騎士団新生主力部隊のこと。構成員は一神、星野、成村、桐山、ユウ、そして聖女アリスを加えた六名。

 このメンツだとユウの存在意義が殆ど無い気がするのだが、現状では部隊の一員にカウントされているようだ。まあこの調子ならそのうち除外されそうだが、それならそれで戦わなくていいしラッキーと考えている。


「今日は初歩の初歩、マナの運用と魔術について説明、鍛錬を行っていく」


 きた。

 ユウは興味津々で耳を傾けた。


「まずはマナについてだ。マナとは全ての生物がもつ生命力の根源、つまりは力の源だ。マナは通常、体内に留まり身体中を巡っている。それをコントロールし体外に放出することで我々は肉体を強化したり、あるいは魔術を呼び起こしたり出来るわけだ」


 ベルザムは右掌の上に小さな火球を出現させて見せた。

 地球人組から「おお〜」と歓声が上がる。


「しかし先程も言ったが、マナは自身の生命力そのものだ。当然使い続ければそれだけ肉体の疲労は増し、過剰に使用すれば死に至る」


 それを聞いて全員が息を飲む。


「なに、そう怯えるな。マナの消費は自身で敏感に感じ取れる。マナの使いすぎでうっかり死ぬような間抜けはそういない。だが肝心な場面でマナを切らして動けなくなる様では話にならんからな。マナの使い所はちゃんと考えなければならない」


 それを聞いて、みんなの表情が少し軽くなる。

 アリス王女はニコニコしながら話を聞いている。


「ではまず訓練を始める前にひとつ、お前達に質問しよう。人が強靭な肉体を得る為にはどうすればいい?」


 一神達は不思議そうに顔を見合せた。

 そんなの決まってる。


「肉体の鍛錬を行う……筋肉を鍛える……とか」


 一神が自信なさげに答える。


「まあマナの存在しない世界で生きて来たものならばそう思うだろうな。だが俺は肉体的な鍛錬は然程していない」


 それを聞いて全員少し驚いた。

 あんなに筋肉隆々なのに。


「でも、それじゃあどうやって」

「答えはマナの鍛錬だ」

「マナの鍛錬……?」

「我々騎士は日々、自身のマナを極限にまで鍛え上げている。言っただろう、マナとは生命力の源……それを鍛え上げ増幅すれば、自然と肉体も追いついてくるもの」


 ベルザムが右脚で軽く地面を蹴りつけると、地面が破壊され、ひび割れがユウの目の前まで来て止まった。

 全員が度肝を抜かれ硬直する。


「この様に、強大なマナを秘める肉体には強大な力が宿る。マナを鍛え上げれば自然と器も磨かれると言うわけだ」


 得意気に語るベルザムだが、勇者組は今だに少し動揺している。

 それを見せたかったのはわかるが、いきなり地面を叩き割るなよ。ビックリするだろ。

 ユウは額の汗を拭った。


「では早速、マナのコントロールから始めよう。目を閉じてマナの流れを感じてみろ。それが出来たら、全身をマナで覆うようイメージしてみるんだ」


 ――はあ?マナの流れ?全身を覆う?


 ユウにはさっぱりだった。

 いきなりそんな感覚的なことを言われたって、異世界人のユウに理解出来るわけがない。こんな雑な説明でぱっと理解出来るやつなんているわけ無い。


「出来ました!」

「私も!」

「これがマナ……」

「けっ、くだらねえ」


 ――いや出来んのかいっ!


 一神、星野、成村、桐山は全員がマナのコントロールを習得した様子だった。


「それが自身の身体を強化する術……マナ強化、或いはマナガードと呼ばれる技術だ。こうもあっさりと習得するとはな。流石は勇者だ」


 ――いや出来てねえよ俺だけ置いてけぼりだよ。


 彼らとのセンスの差にユウが愕然としていると、


「アマミヤさん、どうですか?」


 傍らからアリス王女がひょっこりと、覗き込むように尋ねてきた。


「ああえと、なんかマナの流れを感じるってところから分からなくて......」

「初めはそんなものですよ。私もそうでした。イチガミさんたちは天恵のおかげでマナの操作が人より上手いのだと思います」


 そう言えば、一神達には〈マナ親和〉の天恵があるのだった。だったら出来て当然なのかもしれない。


「少し、お手を失礼します」


 そう言うと、アリスはユウの手をそっと握った。するとすぐ、手に温かい何かが流れ込んでくる感覚を覚えた。もしかして、これがマナの流れなのだろうか。


「どうですか?」


 王女はまた、覗き込むようににこやかな笑顔を向ける。


「えと、綺麗な手ですね。小さくて柔らかい、女の子の手だ......」

「..................。えぇっ!?ち、ちち違いますよッ!!マナですっ!マナの流れを感じられたか聞いたんですっ!!」


 王女は今日日稀に見るくらい真っ赤な顔で、自分の手を大事そうに引っ込める。


「ああ、あの温かい感じが?てっきり王女さんの温もりかと思いましたよ」

「なっ、ななな何言ってるんですか......!」


 王女はまるでゆでダコみたいだ。印象が悪くならないように、ほんの冗談のつもりだったのだが、流石に調子に乗りすぎた。

 しかしそんなことより、さっきの感覚がマナの流れらしい。何となく理解出来た気がする。

 そして数十分後。


「――できた!!」


 全身を巡るマナの流れを掴み取り、それを用いて薄い膜を全身に付与することが出来た。

 これがマナ強化。確かに全身に力が溢れるようだ。

 そしてマナ強化を習得した途端に、一神達の全身に纏われたマナの揺らめきが目に見えるようになった。マナを意識出来るようになったのがきっかけだろうか。

 しかしやはり自分のマナ強化と一神達のマナ強化では膜のサイズも安定感もまるで違う。力の差をここでも感じさせられる。それにまだ維持し続けるのも難しい。何とか習得できたといえど、まだまだ先は長そうだ。

 しかし周囲の評価は想像より良かった。


「凄いです!こんなに早く習得なさるなんて!」


 平常心を取り戻たアリス王女がぱちはちと小さく拍手する。

 続いて一神も、


「やったな雨宮!」


 眩しい笑顔で称えてくれた。

 丁度いい、とそう思った。ここらで更に懐に潜り込む。


「ありがとう光汰……!」


 瞬時に笑顔を作る。それだけじゃない。今度はファーストネームのおまけ付きだ。


「ああ……!一緒に頑張ろうぜ!」


 少し驚いた様子だ。ユウが一神の名前を知らないとでも思っていたのだろう。クラスどころか学校内で彼を知らない奴ほど珍しいものだ。


「なーんか仲良さげじゃん?」


 会話に交じってきたのは星野だった。

 こいつも最大限利用させてもらおう。


「仲がいい……のかな?俺は光汰と仲良くなりたいって思ってるんだけど……」

「と、当然だろ!僕達は仲間なんだからな!」


 一神の表情を見て少し驚いた。意外にも嬉しそうに見える。

 ユウと仲良くなったってメリットなんか殆どない。だと言うのにこの反応。なんだ案外ちょろい奴なのかと思ったが、その考えは早計だとも思う。こういう善人ぶった奴は絶対的に裏がある。早い内に本質を見極めなければならない。


「うん確かに!私達は仲間……ていうかもう友達だよね!えへへ」


 星野は少し照れくさそうに冗談めかす。そちらから来てくれるのなら有難い。可能ならこいつも引き入れてやる。


「と、友達か……」


 ユウは少し頬を染め、いかにも「友達」という言葉に感激した様な顔を作って呟いた。


「そ、そんなに嬉しそうにされると、何だか私が照れちゃうな……」

「俺こういうの初めてでその、すごく嬉しいよ......ありがとう星野さん!」


 照れ混じりの笑みで星野に礼を言う。

 星野も満更でもなさそうに笑っている。

 現状、星野と一神の仲がはっきりしない以上、いきなり名前呼びはリスクが高い。余計ないざこざを起こさないよう、今は人畜無害な良い奴を演じるしかない。親密度をより上げるのはこれからの作業だ。


「ああ〜、そろそろ次に進んでいいか?」


 咳払いをしてベルザムが話の腰を折る。


「では続いて、魔術について説明する」


 魔術、ユウが最も興味のある分野だ。

 ユウはこれまで以上に興味を持って耳を傾け話を聞いた。その中で少しずつ、ユウは魔術についてを理解し始めた。


 魔術とは、自身のマナを代償にイメージを具現化させるマナ運用の極地的技術である。例えば手にマナを集めて炎が燃えるイメージを持てば、マナが炎に変換される。それをさらに前方に飛ばすイメージを持てば炎は前方に飛んでいくと言った感じだ。

 こういった魔術にはそれぞれ属性と呼ばれる枠組みがあり、火・水・風・地・雷・光・闇の七属性が存在する。二属性以上の魔術を組み合わせたものを複合魔術と呼び、火魔術と水魔術を組み合わせた氷魔術なんかがこれにあたるようだ。

 ちなみに魔術の威力や規模は練りこんだマナの量やイメージに依存するが、例外的に特殊な天恵や魔術適性のある者がその属性魔術を扱う場合、少ないマナで強い現象を引き起こせるらしい。逆に言えば、ユウのように魔術適正の天恵を持たないからと言って魔術自体が使えないわけではないようだ。


「とまあ、大まかな説明はこんなところだ。実際に試してみた方が早い。とりあえずマナを練ってみろ。先程のマナ強化の応用だ。掌にマナを集約、そしてそれにイメージを与えるんだ」


 簡単に言ってくれる。ユウ達は魔術なんてものとは無縁の世界で生きてきたのだ。そんな雑な説明でぱっとできる訳が無い。


「出来ました!」

「わたしも!」

「これが魔術......」

「けっ、くだらねぇ」


 ――いやだから何で出来んだよ!


 ユウを除く全員が、掌の上に火や水、光の玉を浮かべてはしゃいでいる。これが天恵のある者と無いものの差なのだろう。

 彼らとのセンスの差にユウが愕然としていると、またアリス王女が慰めるように笑いかけてきた。


「出来そうですか?」

「いや、マナを集めながらイメージを込めるってのがどうも難しくて……」

「おそらく、イメージされている魔術と実際に供給されているマナに差異があるのです。イメージを具現化するにはそれを実現させられるだけの十分なマナが必要です」


 そうか、と思う。

 ユウは一神達と比べてマナが極端に少なく、一般の子供程度のマナしかない。

 イメージしていたのは先程ベルザムが出した火炎だ。このマナの保有量ではそもそもあのサイズの炎を呼び起こすことは出来ないということだ。

 イメージを変更。今度はマッチ棒くらいの小さな種火が掌の上に灯るイメージを持ち、手元にマナを集約させた。


「……!できた!」


 魔術は正常に発動され、掌の上に小さな火が灯る。


「やりましたねアマミヤさん!」


 またアリスが拍手で褒め称える。ユウが起こしたのはこんな小さな種火だ。それをこうも大袈裟に。

 ユウはアリスのテンションに合わせるように喜んで見せ、抱きつかんばかりの勢いで彼女の手を掴み取り、満面の笑みを見せつけた。


「君のおかげだ、ありがとうアリス……!」


 突然のことで驚いた様子のアリスが「い、いえ……」と少し頬を赤くした。

 ユウは続けて、


「あ、ごめんつい……それにアリスだなんて呼び捨てで。王女様にこんな態度は失礼だよね」

「い、いえ!とても嬉しいです!是非アリスと呼んでください!」


 アリスは食い気味にそう言った。

 よし。

 ユウはしてやったりと思う。これなら自然な流れで名前で呼べるし敬語も使わなくていいだろう。あとはもう少し深く踏み込んで、信頼を得られれば。

 ユウがアリスに対して追撃でも仕掛けようかと思ったその時、


「良かったなユウ!」


 一神がいきなり肩にポンと手を当ててきた。

 ちっ、馴れ馴れしい奴めとユウは思う。さっきの今でもう名前呼びに変更だ。流石は校内一の陽キャと言うべきか。

 もっとも名前呼びに関してはユウも人のことなどいえない。相手をファーストネームで呼び合うことは、心理学的に相手の好感度を高めると聞いたことがあるので、ユウも今実践してるところだ。

 彼らの信頼を得たいユウからすれば、向こうから近づいてくれる分には寧ろありがたい。ありがたいのだが、この嫌悪感。ユウはこういう一神みたいな偽善者が一番嫌いだ。そいつに名前で呼ばれるだけでこうも不愉快とは。


「ありがとう光汰……!」


 不快感を噛み潰して笑顔で答えた。

 そんな中、ベルザムが腰に手を当てて言った。


「よし、では全員が魔術の発現に成功したところで、次の訓練に移る。と言いたいところだが、まずはこれを受け取ってくれ。我々からの囁かなプレゼントだ」


 ベルザムがそう言うと、部下の兵士たちがせっせと箱型の大きな台車を複数台運んできた。

 中を覗き込むと、そこには鈍く光る武器の数々が入っている。


「これは......剣ですか?」


 日本人の目には到底見慣れない武器に、一神が少し呆気に取られた様子で尋ねる。


「ああ、剣以外にも色々ある。斧や槍、弓矢、鈍器系ならハンマーやメイスもある。自分に合った武器を選んでくれ」


 ユウは思う。自分に合った武器と言われてもそんなの分からない。王道を行くなら剣だろう。他の武器に比べて、素人知識ではあるが扱い方も何となく理解は出来ている。

 一つ、剣を選んでみることにした。

 剣とひとくちに言っても、幾つも種類がある。短剣、片手剣、両手剣、刃が湾曲している曲刀、突き刺すことを主な目的とした細剣なんかもあるようだ。

 まず候補から外したいのが両手剣だ。両手剣の中で小さいものでさえ、150センチくらいある。こんな物扱える奴はゴリラだ。しかし曲刀や細剣なんかは癖が強そうというか、扱いが難しそうに感じる。ならば残ったのは短剣か片手剣の二択になるが、短剣はリーチが短く、玄人向けって感じがする。


「これにするか」


 手に取ったのは片手用の直剣。刃渡りは80センチちょっと。ずっしりとした重みが手に伝わる。三、四キロくらいだろうか。しかしこれをブンブン振り回して戦っている自分の姿がいまいち想像できない。

 そんなことを考えていると隣で、


「悪いが、イチガミには今後 片手剣を使用して訓練を受けてもらいたい。先代勇者様の使ったとされる伝説の聖剣は片手直剣だったそうだ。もちろん、この剣とは比べ物にならない代物だが、早いうちから片手剣の扱いに馴染んでおいたほうが良いだろう」

「はい、わかりました」


 唯一無二の聖剣召喚が扱える一神は、片手剣になったようだ。

 正直今でもユウは一神の聖剣に嫉妬している。


「......」


 桐山大河はイカつい篭手を手に取りじっと見つめている。ガントレットと言うやつだ。本来は腕を守るための防具だが、あの篭手は明らかに人を撲殺するためのものだ。分厚い金属の塊、その先端から棘が突き出ている。あんなので殴られたら人間の頭なんて簡単にかち割れてしまう。

 結局、桐山は篭手にしたようだ。男は拳で語るつもりだろう。不良少年(ヤンキー)にはうってつけかもしれない。

 そんな時、星野が手を上げた。


「あの〜私、剣とかで戦うのはちょっと……あんまり得意じゃないと思うし……」

「わ、私も……」


 星野に便乗して成村も小さな声で手を上げる。

 するとアリスが指さした。


「でしたらこちらの杖などはどうですか?お二人は魔術の適正が高いので、きっと相性がいいはずです。私もメインの武器はスティックなんですよ」


 アリスが星野と成村に薦めたのは杖だった。杖と言っても、長いものから指揮棒のような短いタイプのものもあり、先端には大きな宝石のようなものが埋め込まれている。


「綺麗……」


 星野が目を輝かせている。


「これはマナ鉱石と呼ばれるものです」


 マナ鉱石とは、マナ耐久度が高く、マナを蓄積させることが出来る鉱石である。主に武器や魔道具なんかに使用されるようだ。

 ちなみにマナ耐久度とは、物質がどれだけマナに耐えられるか、という指標である。例えば、先程ユウ達は自身の手にマナを集めて魔術を行使したが、もし手のマナ耐久度を超えるマナを一点に集約した場合、マナに耐えきれずに自身の腕が崩壊を始める。

 通常時、マナは全身を循環している。これにより全ての細胞にほぼ均等に負荷が分散することでダメージや損傷を受けることはない。だが、いざ大量のマナを動かす場合には注意が必要となる。膨大なマナを一点に集中し過ぎれば自滅を招く恐れがあるのだ。

 しかしそうなると、人は強力な魔術を簡単には扱えないことになる。が、それを解決するのがマナ耐久度の高い、マナ鉱石というわけだ。マナ鉱石になら遠慮なく大量のマナをぶち込んで、強力な魔術を発動させられる。もちろんマナ鉱石にもマナ耐久度はあり、それを超過すればマナに耐えきれず石は砕け散るが。

 ただもっともな話、マナ総量の少ないユウには現状無縁の話でもある。


「私これにする!」

「じゃあ、わたしはこれで......」


 星野が短いスティック、成村が大きなロッドを選んだ。どちらも金属製で、先端に大きなマナ鉱石が埋め込まれている。まるでRPGに出てくる魔法使いの様だとユウは思う。


「これで全員武器は選び終えたな。それでは本日最後の技、魔術付与について教えよう」


 魔術付与。マナ強化の要領で武器などにマナを送り込み、それに属性魔術の要領でイメージを加えて形を与えることで属性魔術による強化を施すスキルである。


「いいか、これは基本的に武器に魔術を付与する技だ。間違っても生身に付与するんじゃないぞ」


 マンガやアニメでよくある、身体や腕なんかに炎を纏ったりするシーン。あんなのを真似たら黒焦げになるってことなんだろう。


 早速一神の剣にゆらゆらと大きな炎が灯った。

 相変わらず飲み込みの速さが異常だが、気にしちゃいられない。

 ユウも早速実践してみる。

 すると、


「で、できた……」


 ユウは先程までとは違い、実にあっさりと魔術付与を習得した。

 魔術付与は意外と簡単で、マナ強化と属性魔術を習得したユウは簡単にその感覚を掴むことが出来た。

 まずはマナ強化の要領で、剣にマナを送り込み、刀身部分に集中させる。ここで属性魔術と同様にマナを炎に変換させるのだ。


 ユウの右手に握る剣の切っ先に、本当に本当に小さな種火が灯っている。

 それを見ながら、ユウは思う。


 ――これ、魔術付与する意味あんのか……?


 するとそれを見たベルザムが腕組みで、少し困ったような顔で言った。


「アマミヤ……お前の今後の課題はマナの強化だな。そのマナ量では魔術の訓練にならん。まずはマナ量を増やす特訓から始めるぞ」


「で、ですよね……」


 剣の先端の種火を消化し、ユウは肩を落としため息をついた。

 先行きは不安しかない。






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