第45話 皆と共に
―――ゴトゴトゴトゴトッ………
複数頭の馬に引かれている馬車の車輪の音が響く。
馬車は僕達『勇者学園』の生徒達、それに『勇者一行』の皆さん、トリスティスさんにグリーチェさんといった外部の人達を乗せ、大陸東側―――『勇者学園』への帰路に着く。
馬車の上で皆は―――深く『何か』を考え込むように、口を閉じていた。
その『何か』とはおそらく―――これから先の未来のこと、なのだろう。
そしてそれは、僕も同じだった。
『皆がいれば、きっと大丈夫』
あの時ダンテさんに告げた言葉は、決して嘘なんかじゃない。
それでも―――時間を置けば置くほどに、この胸の中には暗雲のような不安が立ち込めてきてしまう。
この先の世界―――本当に、僕達は―――
「よぉーーーーし!!!
決めた!!!」
―――懊悩としていたこの空気を引き裂くような声が、突然響き渡った。
立ち上がりながら『ビシッ!』と拳を突き上げたキュルルへと、皆の視線が集まる。
「キュルル……?
『決めた』って何を?」
戸惑いがちに僕がキュルルへと尋ねると―――
「ボクね―――『魔王』になる!」
キュルルは高らかにそう宣言するのだった。
「え―――ど、どういうこと?
キュルルはもう『魔王』なんじゃ―――?」
余りにも脈絡のないキュルルの宣言に、僕は間の抜けた声でそう聞き返すと―――
「フィル、ボク前に言ったよね。
自分は何がしたいのか、自分に何が出来るのか分からなかったって。
でも、今はっきりと分かったの!
ボクがしたいこと―――ボクに出来ること!!」
「キュルルが、したいこと―――」
「うん!!」
キュルルは馬車の上で両腕を広げながら、決意を込めた瞳と共に告げた。
「これから生まれる『心』を持った魔物達に―――ボクが『王様』になって教えてあげるの!
皆が生まれたこの世界は―――フィルやアリーチェや皆がいるこの世界は、とっても素敵なんだよって!」
「――――――!」
そのキュルルの言葉に―――僕だけでなく、馬車の上に乗っている皆の目が見開かれていった。
「今までボク、自分でもよく分かっていないまま『魔王』って名乗ってたけど―――それがボクにとっての『魔王』なの!
魔物達を導く―――『魔物の王様』!」
「キュルルにとっての―――『魔王』―――」
全く持って、単純極まりない奴だと思われるかもだけど―――
そのキュルルの宣言を聞いて―――僕の胸の中に立ち込めていた暗雲が晴れていくような感覚がしたのだった。
「はははっ!
『魔王』の再定義とはな!」
キュルルの宣言に続き、勇者様の笑い声が響き渡る。
「なるほどね。
確かに『オリジン・コア』が消えた以上、もう世界の『仕組み』としての『魔王』は生まれないのだから―――」
『『魔王』の定義も自由に決めてしまって構わない訳だ』
更にウィデーレさん、ロクスさんが続き―――
「でもそれなら~、『勇者』の方も再定義しちゃっていいんじゃないですか~?
ね~コーディス~」
ヴィアさんがほろ酔い状態でそんなことをコーディス先生へ聞くと―――
「いや、こちらは再定義するまでもなく―――ここに居る皆が示してくれたよ」
コーディス先生は―――僕達へと告げる。
「誰かに―――『勇気を与えてくれる者』であることを」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
これから先の世界は、果たしてどうなるのか。
「きゅるっ!
ほらフィルっ!
見えたよーーー!!」
それは誰にも分らない。
「まったく―――落ち着きなさいな。
こういう時こそ、整然としなければなりませんのよ」
それでも僕は、歩き続ける。
「ただいま―――『勇者学園』!」
皆と共に――――
次回、エピローグ。




