勇者になった僕と魔王になった君との再会
玉座に座る『魔王』は『彼』を見つめていた。
「キュルル」
凛とした、決意と自信に満ちた声が『彼』から発せられる。
『彼』は黒い長髪を靡かせ、『魔王』の前へと立つ。
力強い眼差し。
その体躯が纏う風格。
誰もが一目で『彼』が歴戦の強者であることを感じ取れた。
「僕ね―――」
『彼』が、『魔王』へと告げる。
とても嬉しそうに、万感の思いを込めているかのように、とても力強い声で―――
「勇者になったよ」
玉座に座る『魔王』―――人の形をした漆黒の『スライム』は呟いた。
「うん―――ずっと待ってたよ、フィル」
『魔王』は玉座から立ち上がり、首に下げていた『木剣の剣身』をその手に掴み取る。
それと同時に―――『勇者』もまた首に下げていた『木剣の柄』を掴む。
『魔王』の手が剣身と一体化し―――『勇者』が握る『木剣の柄』から、『黒い剣身』が現れる。
そして――――――
「「あの日の誓いを、今!!」」
その言葉と同時に、2人は――――――!
「ってな感じでどーかなーー!!」
「いや、あのさ、急に呼び出されてからここまで特に何にも疑問を挟まず、ただ君に言われた通りに喋ったり動いたりしておいてホント今更なんだけど――――これなに?」
「んー?
ボクとフィルがあの日の戦いの決着を付ける『約束』を果たす時の『よこーれんしゅー』だよー!」
「はあ……アナタがフィルを無理やり『第十天』に連れていくのを見かけたので、慌てて追いかけてみれば、なんともくだらないことをしておりましたのね」
「ああん!? なんだテメェ巻貝!!
いきなり現れてボクのフィルとの感動の再会シーンにケチつけようってのかぁ!?」
「おやおや……この程度の演出で『感動の再会』とは片腹痛いことこの上ありませんわね。
いいでしょう、アナタに真の『感動』というものを見せて差し上げますわ。
ではフィル、貴方とわたくしがとある敵を―――仮に『へっぽこ魔王』とでもしましょうか。
その『へっぽこ魔王』を討伐し、共に凱旋を果たすというシチュエーションを想定してみましょうか。
それでは――――」
「おぉい!!
何勝手に話進めてんだキュらぁあああッッ!!
つーか『へっぽこ魔王』って誰のことだぁあああッッ!!??」
「あのー……ここ一般生徒は立ち入り禁止なんですけど……」
アリエス先生のそんな声がむなしく響くのであった……
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
とまぁ、そんな感じで―――
僕が自他ともに認める『勇者』となるには、まだまだ時間がかかりそうだけど―――――
「皆、調査隊からの報告で先程『イエローエリア』に『心』を持った魔物が確認されたそうだよ」
「―――!
ホントですか、コーディス先生!!」
「きゅっきゅるー!!
よぉーし、『魔王』のボクがしっかり導いてやるぞぉー!!」
「やれやれ……アナタだけに任せてしまえば碌なことにならないことは明白ですので、どうか勝手な行動は慎んでくださいね」
それでも――――――
「行こう、キュルル! アリーチェさん! 皆!!
『勇気』を与えに!!」
「きゅるっ!!」
「ええ!」
「「「「おうっ!!」」」」
僕は、いつか――――!
「勇者に―――なる!!」
『勇者学園とスライム魔王 ~ 勇者になりたい僕と魔王になった君と ~』
― 完 ―




