第41話 お帰りなさいとただいま
―――パキッ、パキッ……パキィッッ!!!
ダンテさんが消え去ったのと同時に、白い空間の綻びも急速に広がっていった。
もうすぐこの空間は崩壊する―――それを肌身に感じた僕は、この場所がかなりの高度にあったことを思い出す。
僕は慌ててキュルルへと話しかけた。
「キュルル、気を付けて!
僕達が今いるここは―――」
―――コテン。
…………あれ?
僕は―――白い床へと倒れ込んでいた。
「きゅるっ!?
どうしたの、フィ―――」
―――コテン。
焦った声で倒れた僕に話しかけようとしていたキュルルもまた、同じように言葉の途中で倒れ込んでしまった。
身体が、動かない。
それどころか、声すらあげられない。
え、あれ、なんで?
意識だけはハッキリしている僕は、倒れこんだ視界の中に偶然移映り込んでいたキュルルの様子を伺う。
どうやら彼女も似たような状態らしく、目を開いたままに困惑の表情を浮かべている。
まさか―――あの『剣』を使った代償―――?
最初に《オース・ブレード》を使った時と同じ―――
―――ピキッ、パキィッッ……!!
そんなことを考えている間にも、白い空間の崩壊は進んでいく。
そして、ついに――――――
―――パキィィィィィッッッッ!!!!!
この空間が砕け散り―――
僕達の身体は―――上空へと投げ出された。
あれ―――これ、まずいんじゃ――――?
このまま地面に落下したら、僕は間違いなく即死だ。
『スライム』のキュルルならもしかしたら助かるかもしれないけど、それでもこの高度からの自由落下はかなり危ういはずだ。
え―――死ぬ――――?
折角キュルルを助け出したのに―――――?
そんな無情な結末が僕の脳裏によぎった、その時―――
―――ヒュンッッッ!!!
「「―――っ!?」」
上空から落下する僕達の身体を―――『何か』が包み込んだ。
その『何か』とは、白い紙のようなものだった。
僕は『それ』に見覚えがあった。
『それ』は―――ついさっきまで、ずっと僕を切り刻もうとしていたもの―――
「スクトさんの―――
《ローバスト・ウォール》―――?」
僕達を包み込んだその白い『防御壁』は、ゆっくりと落下スピードを緩めていき―――
―――トッ………
静かに―――大地の上へと、運ばれたのだった。
「キュ―――ルル―――!」
仰向けに倒れ込んでいる僕は、まだ自由の利かない身体を無理やりに動かし、口を開いた。
僕と同じように倒れ込んでいるキュルルへと―――
「きゅ、る―――フィル―――」
すぐ隣から、彼女の声が聞こえる。
やはり彼女も身体の自由が利かないようであったけど―――
僕達は―――この大陸の大地の上へと、帰ってこれた―――
そして―――――
「「「おーーーい!!!」」」」
「「―――!」」
僕達の耳に―――沢山の声が聞こえて来た。
その声の方へ、ゆっくりと頭を動かして、目を向ける。
そこには―――こちらへと駆けてくる、『皆』の姿があった。
『勇者学園』の、皆が―――
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
僕達が満足に身体を動かせない状態である事を知った皆は、僕達の身体を複数人で支えられ―――そして様々な言葉をかけられた。
僕達の身体の調子を心配する声。
あの『英雄』に立ち向かうなんて全くとんでもない奴だ、という賞賛とも呆れとも取れる声。
俺達の協力のおかげで勝てたんだから感謝しろ、という調子のいい声―――
―――ザッ、ザッ、ザッ……
そんな声を掻き分けるように、足音が響き―――
生徒達の中から―――『彼女』が現れる。
「フィル、キュルルさん―――」
3人のお付きを背後に携えた『彼女』は―――僕達へ、ただ一言告げた。
「―――お帰りなさい」
その言葉に、僕達は―――応えた。
「アリーチェさん―――ただいま!」
「きゅるっ!」




