第40話 勇者学園とスライム魔王
「――――――――――――」
『白い少年』―――ダンテさんは、胸部から上のみを残し、綻びつつある白い空間の中を漂っていた。
「ダンテ、さん―――」
「きゅる……」
僕とキュルルはそんなダンテさんの前に立ち、その姿を静かに見つめていた。
そして、僕達へ向けて―――ダンテさんが口を開いた。
「おめでとう―――フィル=フィール―――
ぼくは消失し―――これから先―――魔物達にぼくの『声』が届くことは―――なくなる―――
もう―――魔物達の中から―――『魔王』は、産まれなくなる―――――」
その言葉を、僕達はただ静かに聞いていた。
「ただしこれで―――『人類』同士の争いの――『ストッパー』としての―――『存在理由』も―――――無くなった―――
『破滅の道』を―――人類が歩んでも―――それを止めることは―――出来なくなった―――」
僕も見せられた、あの旧世界の惨劇。
人類と人類が互いに争い、いずれは世界そのものを滅ぼしてしまう『破滅の道』―――
「いや―――それだけじゃ―――ない―――
これから先―――この世界では―――『心』を持った魔物が―――次々に生まれてくる―――
それは―――この世界に―――様々な混乱を―――もたらすことになる―――」
人と同じ『心』を持った魔物。
その存在は決して人類にとって好ましいものであるとは限らない。
それどころか、もしかしたら旧世界以上の惨劇を引き起こす可能性も―――
「それでも―――きみは―――」
「きっと、大丈夫です」
何の憂いも見せずに声をかけた僕を、ダンテさんが驚いたような顔で見つめた。
「何の根拠も確証もない、ただの楽観的な希望でしかないかもですけど―――
『皆』と『この子』がいれば、大丈夫だと―――そう思えるんです」
「『皆』と―――『この子』―――――」
「ええ――――――」
共に同じ道を歩んでくれる仲間達。
そして、一緒なら何でも出来ると思える、大切な存在。
「『勇者学園とスライム魔王』がいれば、きっと」
迷いなく、そう告げる僕を見たダンテさんは―――
「ふふ―――そう、か――――――」
穏やかな笑みを浮かべたのだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「どうやら―――もう―――お別れの―――時間みたいだ―――」
胸から上だけとなったダンテさんの身体が、さらさらと白い砂粒のようになって崩れていく。
この世界を救った英雄の『残滓』が―――消えていく―――
「ダンテさん―――貴方が人類の為に尽くしてきたことを、僕は決して忘れません」
消えゆく英雄を前に、僕は言葉を紡ぐ。
彼が為そうとしていた事を拒んだ僕に、そんな資格があるとは思えないけど―――
それでも、この世界で生きる1人の人間として―――これだけは、伝えておきたかった。
「本当に―――ありがとうございました」
僕の言葉を受けたダンテさんは、最後にニコリと笑い――――
そして―――
「ずっと待たせて―――ゴメンね―――ベアトリーチェ――――
今―――行くよ―――――」
そんな言葉を零した直後―――
完全に、消え去ったのだった―――




