第38話 僕と君が一緒なら
「《モンスター・マテリアライゼーション》……!」
『白い少年』が焦燥を滲ませたその言葉を再び口にすると―――
―――ズォオオオオオオオォォ..........!
「「「グオオオォォオオオォオオオ………!!」」」
「「「キシィイイイイイイイイイイ………!!」」」
「「「グゥルルルルルルルルルルル………!!」」」
『白いドラゴン』が、『白いハーピィ』が、『白いワーウルフ』が―――
この場を埋め尽くさんとする程の『白い魔物』が虚空より創り出された。
そして―――――
「往け………………往けぇええええええええええええええええええええええええええええええええッッッ!!!」
明確な『感情』を乗せた号令を、放つ。
「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」」」」」
『白い魔物』の群れが、雪崩と化してフィルへと押し寄せる。
だが、フィルは一切怯むことなく―――
「 《ダークネス・トルネイド》!!」
―――ビュオォオオオオオオオオオオッッッッ!!!
「「「グギォアアアアアアアアアッッ!!!」」」
『黒い竜巻』を『魔物』の群れへと放つ!
「っ………!!」
『白い魔物』が数体まとめて吹き飛ばされる様を見つめた『白い少年』は、息を飲むような反応を見せる。
ミルキィの『フレイム・ドレス』。
ヴィガーの『アイス・ブレード』。
そしてイーラの『ダークネス・トルネイド』。
フィルの仲間達が使っていた魔法―――
今、それをフィルが使用出来ている、その理由は―――
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「【マジック・デストリビュート】……他者へと魔法を分け与える、私の『エクシードスキル』……
アリーチェ……貴女はそれを今、この場で自身に目覚めさせたのね………
ふふ……本当に貴女は………敵として恐ろしく………姉として……誇らしい子……」
全身をヒビに覆われたサンドリーチェが、遠い場所へと祈りを捧げるように両手を組むアリーチェを見つめながら呟いた。
「そして……………」
サンドリーチェの視線が、アリーチェの背後に立ち並ぶ学園生徒達へと向かう。
彼らもまた―――祈りを捧げるかのように目を瞑っていた。
「グリーチェがスリーチェに使った……『魔力』を他者と共有する魔法……《ウィズ・アライブ》で……
彼らの魔力を『あの子』と共有させている………
『あの子』が……魔法を十全に使えるように………」
サンドリーチェは―――穏やかな表情で告げた。
「これが――――『勇者学園』―――」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「 《アクア・ジェイル》!」
―――ゴポォアッッ!!!
「「「キシィッッ!?」」」
『水の牢獄』により、空中より襲い来る『白いハーピィ』の群れを捕え―――
「《サンダーボルト・ストライク》!」
―――ピシャァァアアアアアッッッッ!!!
「「「ギシュァアアアアアアアアッッ!!」」」
撃ち出された『雷撃』により、『水牢』の中の『ハーピィ』達が塵と化す。
「「「グルゥォオオオオオオッッッ!!!」」」
その隙に『白いワーウルフ』がフィルの眼前にまで迫るが―――
「《ガスト・ブースト》!」
―――ボッッッッッッ!!!
「「「グルァッッ!!??」」」
足裏から吹き出す『突風』によりフィルは瞬時に後方へと下がり、『ワーウルフ』の爪が虚空を舞い―――
「《クレイ・デリージュ》!!」
―――ズォアアアアアッッ!!!
「「「グルォアッッ!?」」」
即座に放った『土の奔流』により、『白いワーウルフ』達が圧し潰されていく。
そして――――
「「「オオオオオオオオオオオオッッッ!!!!」」」
迫り来る『白いドラゴン』の群れに対して―――
「《ヘルフレイム・パーム》―――
《ジャッジメント・ルミナス》―――!!」
―――コォオオオアアアアアアア………!!!
『炎光の拳』を創り出し―――!
「《パニッシュメント・イグニス》!!!」
振り下ろす―――!!!
―――ゴォォォオオオオオオオオッッッ!!!
「「「―――――!!!」」」
『白いドラゴン』達は―――叫び声を上げる間もなく『消失』した。
「っ―――!!
まだだ―――!!
《モンスター・マテリアライゼーション》!!」
―――ズォオオオオオオオオオオッッッ!!!
「「「オオオオオオオオオォォォ………!!!」」」
『白い少年』は―――尚も『白い魔物』を呼び出し続けた。
「『修正』作業の為に―――
出来るだけ余力を残しておきたかったけど―――
君は―――確実に『排除』する―――!!」
『白い少年』は揺り起こされた『自我』をもって思案する。
あの少年の『力』は『無限』というわけじゃない―――!
いずれは魔力が枯渇する―――!
このまま―――消耗させ続ければ―――!!
「往けぇええええええええ!!!!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」」」
再び迫り来る『白い魔物』の集団。
それに対し、フィルは―――
「《ダークネス・ウィング》!」
―――バサァッッッ………!!!
自らの背に『黒い翼』を創り出し―――魔物達の頭上へと飛び上がる。
そして―――『黒い包丁』を『白い少年』に向けて真っ直ぐに構えると―――
「はぁああああああああああああッッッ!!!」
一直線に、突っ込む!!
「焦って勝負を決めに来たか―――!
《オリジン・ブレード》!!」
『白い少年』は受けて立つとでも言うように『白い剣』を再び手に取り―――自らの元へと突撃してくるフィルを見据えた。
「ああああああッッッ!!!」
フィルは裂帛の叫びと共に、『白い少年』の眼前へと迫る―――!!
だが―――――
「――――――ふッ!!!」
―――ヒュバッッ………!!!
「あ………………」
フィルの『黒い刃』が『白い少年』へ届くより前に―――
『白い少年』の『白い刃』が―――フィルの身体を両断した。
終わりだ―――
『回復魔法』も間に合わない―――
これで、君は―――
『白い少年』がそう思考した―――次の瞬間。
―――フッ………
「なっ――――――!?」
フィルの姿が―――掻き消える。
「っ―――――!!!
今のは――――『隠匿魔法』――――!?」
『白い少年』が斬り裂いたのは『隠匿魔法』―――《プレゼンス・ジェミニ》によって創り上げられたフィルの幻影―――
ならば―――本物のフィルは―――
「っ―――!!!」
ある予感に突き動かされ、『白い少年』は上空へと視線を向ける。
そこには――――『黒い翼』を用いてひたすらに高度を上げていくフィルの姿があった。
「『アレ』の居場所に気付いていた―――!?
まさか―――『探知魔法』を既に―――!?」
フィルは―――最初に『白い少年』の剣を受け止め、弾き飛ばした瞬間に唱えていた『探知魔法』―――《ディスカバー・アリー》によって、『とある存在』の位置を捉えていた。
それはフィルにとってかけがえのない、大切な存在―――!
「キュルルーーーーーーーーッッッ!!!」
その『スライム』の少女が居る場所へと――――フィルは飛んでいた。
そして―――白い空間の上空、とある一点の空間に向けて―――
「うおおおおおおおおおあああああッッッ!!!」
フィルは―――『黒い刃』を振るった。
その瞬間―――
―――パリィィイイイイイッッッッ!!!
ガラスが砕け散るかのような、甲高い音が響き―――
何も存在しなかったはずの空間に―――少女の形をした、黒い『スライム』の姿が現れる。
「『遮断防壁』が―――――!!」
瞠目する『白い少年』の叫びが響き―――
フィルは―――『かけがえのない存在』を、抱きしめた。
「キュルル―――もう、離さない―――!」
目の端に涙を浮かべながら、フィルは腕の中の確かなぬくもりを確かめていた。
だがフィルは瞳を拭い、すぐに思考を切り替える。
まだ―――終わっていないのだから―――!!
「『それ』は―――渡さない―――!」
フィルの眼下から、声が響く。
「この世界の『人類』の為に―――『それ』は絶対に―――渡さないィイイイイイイ!!!」
「「「オオオオオオオオオオオオオッッッッ!!」」」
『白い少年』の叫びと共に、翼を持つ『白い魔物』達が一斉に上空のフィルとキュルルの元へと押し寄せる。
自らに迫り来るそれらを見下ろしながら―――フィルはキュルルを抱きしめたままに、あるモノを右手に握る。
それは―――フィルの両親から渡された、小さなナイフだった。
フィルは再び想起する。
あの時のリブラとの会話を―――
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「僕の両親が遺したナイフが『鍵』になるって―――どういうことなんですか、リブラ先生!」
「フィーたん、以前私はそのナイフで活性化される『力』については、コーちゃんからの話を聞いた方が早いと言ったのを覚えているかな」
「え、ああ、確かに言ってましたね。
でもコーディス先生から聞いたのは、世界の『仕組み』についてとか、『勇者』と『魔王』についてとかの話で、このナイフに関連するようなことは―――」
「『それ』だよ」
「え―――?」
「そのナイフで活性化されるのは―――『勇者』の力なのさ」
「えっ、えっ!?
それって、どういう―――」
「この世界の全ての魔物が『魔王』になる可能性を秘めているのと同じように―――
この世界の全ての人間も『勇者』になる可能性を秘めているんだ。
そのナイフは世界の『仕組み』に微干渉し、一時的に『勇者』の『力』を目覚めさせることが出来る代物なのさ。
『エルマーナ鉱』を用いて生成されるマジックアイテム『マーナ・ブースト』は『エクシードスキル』の増強効果があるわけだが―――君のナイフはその超上位互換というわけだね」
「な、あ―――!」
「そして肝心のキュルルルンを救う方法だが―――実にシンプルな話だ。
ようは『魔王』と相反する『勇者』の力でもって、例の『衝動』を封じ込める、という寸法さ」
「つ、つまり、このナイフをキュルルに使えばいいってことですか!
これをあのコに突き立てるのは少し抵抗ありますけど、それでキュルルは救われ―――」
「いや―――」
「え?」
「キュルルルンにただナイフを突き立てるだけでは、おそらく効果はない。
そのナイフは君の為に創られたものだ。
だから―――」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「キュルル―――君はいつか言ってたよね。
『僕と君が一緒なら、何だって出来る』って」
フィルは右手に握ったナイフを―――
「僕も今―――心からそう思っているよ」
キュルルの背に回した自身の左手ごと、突き立てる―――!
「僕達2人なら―――何だって出来るんだ!!」




