第37話 届く『力』と届けられる『力』
『フィル―――』
闇へと沈んでいくフィルの頭の中に―――聞き慣れた少女の声が響いた。
『フィル―――!
しっかりなさい――――!』
アリーチェ、さん―――?
その声の主を姿を思い浮かべたその次の瞬間―――!
「――――――っ……!?」
消えかけていた僕の意識が、急速に戻り始めた。
これ、は――――!
『フィルさん、大丈夫ですか!!
わたくしの唱えた《ハイ・ラピッド・リカバリー》は届いておりますか!?
お願いです! 返事をしてください!!』
『この、声は……スリーチェ……?』
急速な身体の回復にまだ頭が追いついていないのか、まだうまく口を開くことが出来ない僕は頭の中でその声に応えた。
『フィルさん!
ちゃんと回復することが出来たのですね!
ああ―――アリエス先生の魔法を習得しておいて、本当良かったです!!』
『【レジデュアル・コンタクト】による『残存接触』を介してわたくしからフィルへ回復効果を移す――― 一か八かの賭けでしたが、どうにか成功したようですわね』
スリーチェにアリーチェさん、2人の声が頭の中に響く。
これはスリーチェの『伝達魔法』……?
あ、そういえば……僕、アリーチェさんと『伝達魔法』で繋がってたんだっけ……
そのことに気を回す余裕なんてなかったから、すっかり忘れてたけど……
『フィル、そちらで起きたこと、聞いたこと―――全て『伝達魔法』を介してこちらも把握しております。
そして今、貴方がやろうとしていることも』
『―――!』
僕がやろうとしていること―――
キュルルを助け出す為に、この世界を『再生』した英雄―――ダンテさんに立ち向かおうとしていること―――!
『そのうえで―――わたくしはここに居る『皆』に問いました。
貴方達は―――』
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「貴方達は―――どう致しますか?」
アリーチェはこの場に集った者達を見回して告げる。
「かの『英雄』がこれから成そうとしていることは、決して『悪行』という訳ではありません。
この世界、そして我々人類の未来を思うのならば、むしろその行いは『是』とされるべき物であるのでしょう」
魔物は人類が争わない為の『絶対悪』にして『必要悪』。
魔物に『心』など必要ない。
それが、世界の為の正しい『在り方』―――
「それでもあの2人の『力』になりたいと―――
貴方達も、そう望んでくれるのなら―――」
その者達からは、何の言葉も帰ってはこなかった。
今更、そんな言葉など必要なかったからだ。
『彼ら』は、ただ頷いた。
それを見たアリーチェも、スリーチェと顔を見合わせながら頷く。
2人は寄り添い合い、祈るように胸の前で両手を重ね合わせる。
その2人の背後にはお付き達―――ファーティラ、ウォッタ、カキョウ、プランティが立ち、主の肩に手を触れていた。
更にそのお付き達の背後にミルキィ、ヴィガー、キャリー、バニラ、コリーナ、イーラが立ち―――その背後にアニー、アルス、ティアー―――この場に集った生徒達が立ち並ぶ。
彼らは皆、前に立つ者の肩に手を触れていた。
全員が全員を介して―――アリーチェに触れていた。
そして―――――
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「フィル――――貴方に、皆の『力』を届けます」




