第36話 ―――終わりと足音
「『排除』―――終了」
『白い少年』は、静かに告げた。
全て分かりきっていたこと。
いくら『残滓』といえど、『彼』は世界を創り変える程の存在。
ただの人間の少年が、たった1人で立ち向かうなど―――余りにも無謀な挑戦だったのだ。
「では―――『修正』を―――開始する―――」
そうして『白い少年』は当初の予定へと移る。
まるで何事もなかったかのように。
先程まで自らと対峙していた者のことなど、既に忘れてしまったかのように――――
―――トッ…………
足音が、聞こえた。
もう、この場には『白い少年』しか居ないはずなのに。
聞こえるはずのない足音が、聞こえた―――
「――――――」
『白い少年』は―――もう誰も『居なくなった』はずの空間へ、振り返る。
少年が立っていた。
たった今『排除』した少年が。
確実に急所を斬り裂かれ、倒れ伏した少年が―――
「……………『防衛行動』―――再開―――」
何故、あの少年―――フィルが生きているのか。
そんな疑問を浮かべるほどの『自我』も希薄な『白い少年』は、ただ機械的に呟き―――
「《オリジン・ブレード》」
再び『白い剣』を手に取る。
そう、彼はただ『排除』するだけ。
自身の障害となるものを―――
そして――――
―――ヒュッ………
先程と同じ様に剣を振るい、その障害を『排除』――――
―――ギィンッッッ!!!
フィルは―――その斬撃を止めた。
その手に握る『黒い包丁』をもって―――!
『自我』が希薄なはずの『白い少年』の目が、僅かに見開かれる。
―――ギィィィィィン!!!
「――――――っ」
『白い剣』を受け止めた『黒い包丁』をフィルが振り抜き、『白い少年』は後方へと弾き飛ばされた。
―――トッ……!
白色の大地へと着地した『白い少年』は、その漆黒の瞳でフィルを見つめた。
「………………………」
何が―――起きた――――――?
『白い少年』の中には確かな疑問の『意思』が芽生えていた。
その『意思』を振り払うように―――『白い少年』は口を開く。
「《モンスター・マテリアライゼーション》」
―――ズォ……………!!
「グルオオオオアアアアァ………!!!」
直後―――虚空から巨大な『白いドラゴン』が姿を現した。
そして―――――
「往け―――」
「オォオオォォオオォォオオオッッッ!!」
『白いドラゴン』が雄叫びを上げ―――フィルへと向かう。
フィルはその巨躯を前にして、一切の動揺を見せなかった。
そして片手に握った『黒い包丁』を静かに掲げ―――
「《フレイム・ドレス》」
―――ボウッッッ!!!!
その黒い刃に―――炎が纏う。
「――――――!!!」
フィルが持ち得ているはずのないその魔法を見て、『白い少年』が瞠目する。
更に―――
「《アイス・ブレード》」
―――ピキキキキィィッッ!!!
フィルの左手に『氷剣』が生み出される。
そして、両腕を交差させたフィルは―――
「オオオォォオオオオ――――ッッ!!」
迫り来る『白いドラゴン』へ向けて―――!
「うおおおおおおおおおおおッッッ!!!」
二振りの剣を―――振り抜く!!
―――ゴァアアアアアアアアアアアッッッ!!!
―――ピキィイィイイイイイイイイッッッ!!!
「ギッ―――アアアアアアアアッッ!!!!」
瞬間、二振りの剣から『炎』と『氷』の『刃』が放たれ―――『白いドラゴン』をX字に斬り裂いた。
「――――――」
呆然としながらそれを見届けた『白い少年』に―――
「ダンテさん―――」
フィルの声が投げかけられる。
「僕は―――1人じゃない」




