第31話 今、起きている事と今、やらなくちゃいけない事
「『修正』を―――――始める―――――」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
《 エクスエデン校舎・第十天 至高天 》
―――コォアアアアアア…………!!!
「なっ―――なに!?
『オリジン・コア・レプリカ』が!!」
勇者学園校舎最上層。
学園の講師陣と共に『オリジン・コア・レプリカ』の拘束作業を続けていたアリエスが、困惑と焦燥の叫び声をあげた。
突如として、『オリジン・コア・レプリカ』が強烈な光を放ち始めたのだった。
見たことも聞いたこともないその極彩色の光に、アリエスはただただ混乱と共に狼狽えるばかりであった。
「お、お母さんっ!!
これって一体―――!」
アリエスは思わず隣にいる母親のリブラへと声をかけ、振り向く。
そこには―――
「馬鹿、な―――!
これは、まさか、何故だ―――!?」
「お母、さん……?」
いつ、いかなる状況でも呑気で緊張感のない様子を見せているリブラが―――目を見開いて、愕然とした表情を浮かべていた。
何が起きているのかは分からない。
しかし、アリエスはただ一つだけ確信する。
今、何か途轍もなく、尋常でない事態が起きているということを―――
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「なん、ですの……!
『あれ』は―――!!」
『それ』を―――アリーチェ達は呆然としながら見つめていた。
ここから遠方―――フィルが向かった先の空中に、突如として現れた巨大な物体―――
その『白い球体』を。
誰もが言葉を失い、『それ』をただ見つめる中で―――
地面に横たわるサンドリーチェが、愕然とした表情で声を上げた。
「『オリジン・コア』―――!?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「馬鹿、な―――何故『オリジン・コア』が今ここに―――!?
まさか、自ら浮上してきたというのか!?」
自らの計画の『最終目標』―――それが今この時になって、何故―――
スクトは巨大な『白い球体』を見上げながら、驚愕と混乱の声を上げていた。
「『オリジン・コア』って―――!
あ、アレが―――!?」
そしてそれはフィルも同じであり、突然の事態にただただ立ち尽くすことしか出来なかった。
だが―――――
「あ………あ、あ、あ―――――!」
耳元から途切れ途切れの声が聞こえ―――フィルの意識はそちらへと向かう。
「キュルル―――?」
それはフィルの肩に乗るミニキュルルから声であり―――
そのキュルルが、突然フィルの肩から落ちる。
「―――っ!!
キュルルっ!!」
フィルは慌てて両手でキュルルを受け止めた。
「あ、フィ、ル………あ、あ、ボク……あ……!」
「キュルル!?
どうしたの、キュルル!!」
キュルルは、その小さな身体から全ての力が抜けきったかのようにピクピクと小さく震えるばかりであり――― 一体彼女に何が起きているのか、フィルにはまるで分らなかった。
そして―――――
「ボク………消えちゃ―――」
キュルルがその言葉を言い終えるより前に―――
彼女は形を失い、フィルの両手から溶けるように消えた。
「え―――キュ、キュルル!?」
フィルは慌てて木剣の柄を掴み、『黒い包丁』を作り出すも―――それがキュルルの姿に変わることはなかった。
なんだ―――さっきから何が―――
今、キュルルは―――何を言おうと―――!?
混乱に次ぐ混乱に見舞われるフィルは―――
「――――――ッ!!」
弾かれるように―――何かに引き寄せられるかのように顔を上げた。
そこには、先程現れた謎の巨大な『白い球体』と―――『ガラス管』が浮かび上がっていた。
そして―――
―――ピキ……パキィィイイッッ……!!!
『ガラス管』がひとりでに割れ、その中に浮かんでいたモノが―――キュルルが空中へ投げ出される。
「―――キュルル!!」
それを見たフィルが慌ててその名を呼ぶも―――
―――ズ……ズズズ……………!
「なっ―――!?」
キュルルは―――その『白い球体』の中へと沈み込んでいった。
まるで、その球体に取り込まれるように。
「キュ、ルル―――」
それを見ていたフィルは、目を見開いて呆然とする―――が。
「…………………っ!!」
すぐにその目に、『決意』の光を宿し―――
「今、起きている事についてはさっぱり分からないけど―――僕が今、やらなくちゃいけない事だけは分かる!!」
既に限界に近い身体を奮い立たせ―――
「《バニシング・ウェイト-オリジン・ゼロ》!」
その『質量操作魔法』を唱える。
そして、フィルは―――――
―――トッ…………!
「キュルルーーーーーーーっ!!!」
何一つ迷うことなく―――『白い球体』へ向かって、飛び出していった。




