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【完結】勇者学園とスライム魔王 ~ 勇者になりたい僕と魔王になった君と ~【4万PV感謝!】  作者: 冒人間
最終章

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第21話 終わらせる者と抗う者



「これで―――全て終わりだよ、フィル=フィール」



 スクトは呆然とするフィルにそう告げると―――


「 《ローバスト・ウォール》」


 静かに20枚の『防御壁』を展開した。


 そして――――


「君とも―――さようならだ」


 ―――ヒュバァァァッッッッッッ!!!!!


 刃と化した『防御壁』が―――フィルに向かって(はし)る。


 上下左右、前方後方、あらゆる方向から襲い来る『刃』は―――――



「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」



 ―――ガッ……ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギィィッッ!!



 その全てが、フィルの振るう『2倍』の《キッチンナイフ》により防がれた。


 そして、フィルは―――


「何も―――終わってなんかいない!!!」


 スクトを見つめながら、叫ぶ。


「僕達がいる限り、絶対に終わらせたりはしない!!」


 そんなフィルの姿を見据えながら―――


「そうかい―――なら、やってみなよ」


 スクトは―――冷静に応えた。


『マーナ山』での戦闘の時とは違い、全ての刃を防がれたことによる動揺は一切見られない。

 先ほどのフィルの動きの理由にスクトは既に見当がついていたのだ。


 ―――コーディスさんの『強化魔法』、それにヴィアさんの『人体強化魔法』の恩恵だな。


 そんなスクトの思考を他所に―――


「あああああああああああああああッッ!!!」


 ―――ダッッッッッッ!!!


 フィルは2倍の《キッチンナイフ》を片手に、スクトへ向かって駆ける。

 その速さはカキョウ=ガーデニングやプランタ=ガーデニングをも超えるほどであった。

 スクトの推測通り、2人の『勇者一行』のメンバーにより強化され、学園の実力者以上の身体能力となっているフィルは―――


「はぁッッ!!!」


 その手に握る『黒い包丁』を―――スクトへ向かって振り下ろす。


 だが―――


「 《アクセル・タイム》」


 ―――ヒュッ…………!


「なっ―――――!?」


 スクトの姿が、その場から消える。


 そして―――


「当たり前の話だけど―――アルミナさんの速さとは、比べるべくもない」

「―――!!!」


 背後から、声が響く。

 フィルがすぐさま振り返ろうとした瞬間―――


 ―――ドゴォッッッッッッ!!!


「がッ―――――!!!」


 フィルの腹部に―――スクトの拳が叩き込まれた。


 ―――ボッッッッ!!!


 そのままフィルの身体は撃ち出された砲弾のように吹っ飛び、地面を転がった。

 本来であれば、そんな一撃を受けてしまえばフィルは即座に致命傷となるであろうが―――


「ぐぅぅぅ―――――ッ!!!」


 魔法によって強化された身体はそれを耐え―――殴られた腹部を抑えながら、フィルは立ち上がった。


「アルミナさんと戦っていた時から薄々思っていたけど、 《ローバスト・ウォール》を動かすスピードよりも僕自身の動きの方が速いな。

《アクセル・タイム》で加速できるのはあくまで自身の肉体の時間だけ、ということか。

 今更な話だけど、色々試す間も無かったからなぁ」


 フィルを殴った自身の拳を見つめながら、そんなことを呑気そうに呟いたスクトは―――


「まあ、それはともかく―――」


 改めてフィルへと声を投げかけた。


「 《バニシング・ウェイト》だったっけ?

 あの魔法は使わないのかい?」


「――――っ!」


 その質問に―――フィルは思わず息を詰まらせる。


「ここに来て、わざわざあの魔法を出し惜しみする理由はないよね。

 もしかして―――『マーナ山』の時に見せた、あの『力』の代償かい?

 道中の魔物を蹴散らす為にアレを使ってしまった、ということかな?」


「……………」


 何とか図星をつかれたことを悟られないように努めるフィルであったが―――スクトにとっては十分な反応であったようだ。


「まあ、その判断を責めることは酷かな。

 単純にその『力』を使わなければ厳しい状況だったのだろうし―――それに、僕の元には既にアルミナさんが向かっていたんだ。

 まさか、あの『勇者』が僕に敗れるなんて―――想像出来るはずもないよね」


「っ…………!」


 薄い笑みを浮かべながら話し続けるスクトの様子からは―――フィルをまるで脅威とは思っていないことが見て取れた。

 あの超高速移動が使えないフィルは、自身の敵になり得ない。


 言外にそう告げているスクトを、フィルは強い意志を込めた瞳で睨みつけ―――


「 《ミートハンマー》――『規格(スタンダード)3倍(トリプル)』!」


 その手に、巨大な『黒い肉たたき』を握りしめた。


 そして、それを高く振り上げ―――


「はぁああああああッッッッ!!!!」


 地面を抉りながら―――スイングする。


 ―――ズッッ……ボァッッッッッッッッ!!!


 巨大な『黒い肉たたき』が触れた地面が、凄まじい衝撃と共に爆砕し―――数多の石礫がスクトへと飛来する。


 ―――ズバァァァァッッッッッッッッッッ!!!


 スクトは微動だにせず、高速で飛来する石礫を正面から受けた。


 当然の如く―――スクトには傷一つ付きはしない。

 鋼鉄をも切り裂くアルミナの剣を軽く受け止めることが出来る今のスクトに、こんな攻撃が通じるはずもないのだ。


 自らにしてみれば児戯にも等しいその攻撃に、スクトは懐かしさを感じていた。


 ―――ああ、そういえば大陸西側ではコーディスさんも似たようなことしてきたっけな……


 と、そこでスクトはふと思い出す。


 確かに、かつて同じような攻撃をコーディスはしてきたが―――その攻撃は、スクトにダメージを与えることが目的では無かったのではないか。


 そう、その時の石礫は確か―――ただの目くらましで―――


 ―――ヒュッッッッッッッ!!!!!


「―――ッ!!」


 気が付けば、眼前にはフィルの姿があり―――

 その手に握る『5倍』の《キッチンナイフ》を振り抜こうとしていた―――!


 さっきよりも速―――

 いやそうか、制服の―――!


 刹那の間にスクトの脳内を駆けた思考―――


 今の石礫でスクトの視界を塞いだフィルは、即座に制服をモード《ブルー》へと変え―――それと同時に出力調整用の袖口を、高出力側へ限界まで回した。

 それにより、先程の数倍の速度でスクトへと肉薄したのだった―――!


 スクトがその結論に辿り着き、再び『時間魔法』による加速を行おうとするも―――


「おおおおッッ―――――!!!」


「―――――!!!」


 それよりも先に―――――


 ―――ゴッッッッッッッ!!!!!


 巨大な『黒い包丁』が―――スクトへと叩き込まれた!!

 スクトは咄嗟に左腕でガードをするも―――


 ―――ドォッッッッッッッ!!!!


「ぐッ―――――!!!」


 先程スクトに殴られた時のフィルと同じ様に―――いや、それ以上の勢いをもって、スクトは地面を転がりながら吹き飛ばされる―――!


「くッ―――はぁッ………!」


 それと同時に、制服の機能を高出力で使ったことによる負担で、フィルは荒い息を吐きながら膝をつく。

 本来なら即座に倒れてしまうであろうその負担も、身体強化の恩恵によって耐えることが出来たのであった。


 何とか息を整えたフィルは―――吹き飛ばされたスクトの方へと目を向ける。

 彼が凄まじい勢いで地面を転がったことで巻き上がった砂煙により、今はその姿が見えない。


 今の攻撃は―――彼に通用したのか―――?



「全く―――僕もほとほと油断する癖が抜けない奴だな」


「―――――っ」



 砂煙の中から、そんな声が聞こえた。


 勿論、今ので倒せたなんて甘い考えを持った訳ではないが―――少しのダメージも与えられなかったのか。


 そんな焦燥を抱きながら、晴れていく砂煙を注視していたフィルは―――


「なっ―――――!?」


 その中から現れたスクトの姿を見て―――絶句する。


 先程のフィルの一撃により、スクトが来ていた服の左袖がはじけ飛んだようで、彼の左腕が顕わになっていた。


 そして、その左腕には―――蜘蛛の巣のようなヒビ割れが広がっていたのだ。


 それはおおよそ人体に出来るモノとは思えない傷。

 血も流れ出ず、傍目にはまるでガラスか陶器のような質感にも見えるその腕に―――フィルはただただ不気味なものを感じていた。


 そんなフィルの様子に気付いたスクトは、自身の左腕を見つめた。


「ああ、驚かせちゃったかな?

 まあ実はさっきのアルミナさんとの戦いでも付いてたんだけどね。

 腹に強烈なの喰らっちゃって」


 そう言いながら、スクトはボロボロになった上半身の服を破り去った。

 そして左腕と同じ様に―――いや、それ以上のヒビの広がりを見せる腹部を見て、フィルは思わず息を飲む。


「魔王の『魔力』に順応する為にちょっと身体を弄ったんだ。

『マーナ山』でのポエナさんと同じ様にね」


 その言葉でフィルは思い出す。

『マーナ山』での最後の戦いの際―――イーラの姉、ポエナ=イレースは『アイス・ゴーレム』と一体化し、その肉体を変容させた。

 その時の、腕が折れ落ちても血も流れなかった彼女の身体と、今のスクトの身体は―――確かにそっくりであった。


「今の僕は、身体の構造的な観点で言えば―――もう人間じゃないんだよ」


「―――――!!!」


 なんてことの無いようにそう告げるスクトを見て―――フィルは完全に理解する。


 彼が―――あらゆる意味で、自分たちとは『違う道』を歩んでいることを。


 そしてもう―――彼を完全に『終わらせる』ことでしか、止める道がないということを―――



『それ』を分かったうえで―――フィルは告げる。



「スクトさん―――貴方を止めてみせます!

 僕と―――『僕達』の力で!

 絶対に!!」



 その言葉の意図を理解したうえで―――スクトは告げる。



「やってみろ……フィル=フィール!!

 そして―――『勇者学園』!!」



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