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【完結】勇者学園とスライム魔王 ~ 勇者になりたい僕と魔王になった君と ~【4万PV感謝!】  作者: 冒人間
最終章

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第18話 終わりと終わり


 先程までとは何かが違う―――

 身を深く沈ませたアルミナを見て、スクトはそれを瞬時に理解する。


 恐らくアレは―――身の危険を度外視した、渾身の突撃の構え。


 先程まで浮かべていた笑みを消したスクトは、全神経を集中してアルミナの動きを見据える。



 そして、ほんの数秒の静寂の後。



 来る―――――



 スクトがそう思考した、その瞬間―――



 ―――ボッッッッッッッッッッッッ!!!



 アルミナの姿が―――消えた。


 0.1秒の時間感覚が―――両者の間で、数百倍に引き伸ばされる。


「《ローバスト・ウォール-フル・ジェネレート》」


 アルミナがスクトに接近するよりも前に、『防御壁』と化した刃が展開された。


 その数―――60枚。


「《デッドエッジ・スペース》!!」


 ―――ビュオァッッッッッッッッッッッ!!!


 スクトの前方のみならず、その周囲数十メートルが『刃』に包まれる。

 避ける隙間など一切存在しない『死の空間』。


 それはまるで―――



「私の―――《スラッシュ・スペース》リスペクトかな?」



「―――――!!!」


『死の空間』から―――声が聞こえた。


 ―――トッ………!


 その『勇者』は―――身体中に決して浅くはない無数の傷を負いながら、スクトの前へと立った。


 それと同時に―――


 ―――パキィィィィン………!!


 刃と化した『防御壁』の嵐を防ぎ切った二振りの剣が、砕け散る。


 ―――折角の業物を、ゴメンな王様。


 刹那の時間、頭の中でアルミナは謝罪を告げた。


「くッ――――!!」


 スクトは即座に右手をアルミナに向け、新たな『防御壁』を生み出そうとする。


 だが―――


 ―――ガッッッ!!


 その右腕を―――アルミナの左手が掴んだ。


「これで―――もう避けられないな」

「―――ッ!!!」


 スクトが息を飲んだその間に―――アルミナは「《ルビー》」と呟く。


 そして髪を『赤色』へ染めたアルミナは、握り込んだ右拳を―――



 ―――ゴッッッッッッッッッッッッ!!!!



 スクトの腹部へと、叩き込む!!


「ごぁ――――――――――ッ!!!!」


 アルミナの渾身の一撃は、強化された《プロテクション・ダーミス》を突き抜けた。

 その衝撃に、スクトの息が止まる。


 だが―――それで終わりではなかった。


「おおおおおおおおおおおおッッッッ!!!!」


 アルミナは―――裂帛の叫びと共に、叩き込んだ拳を真上へと突き上げた。


 その結果―――


 ―――ボッッッッッッッ!!!


「がッ―――――――!!!」


 スクトの身体は空中へ―――数十、数百メートルというレベルを超え、数キロメートル先の高度へと、打ち上げられる。


 常人の肉眼では視認不可能であろう、遥か上空に飛ばされたスクトを見上げ―――アルミナは呟く。


「アレだけの距離があれば、キュルル君を巻き込むこともないな―――《サファイア》」


 そして、髪の色を『青色』へと変えたアルミナは―――


 ―――パキッ……! ピキィッ……!


 更にはっきりと聞こえるようになった『破滅の音』を響かせる身体を屈ませ―――その脚に力を込める。


「最後の――――『奥の手』だ」


 ―――ドンッッッッッッッッッッッ!!!


 アルミナは、跳ぶ。


 上空数キロ先のスクトの元へと。



「――――ッ!!

《アンファザマブル・ウォ―――》」


「遅い」



『超』高等防御魔法を展開しようとしたスクトの眼前には、既に―――拳を構えた『赤色』の髪の『勇者』の姿があった。



「終わりだ、スクト」



 そして―――――規格外の『速さ』を乗せた、規格外の『力』が―――


 スクトへと―――





「ええ―――終わりです、アルミナさん」




「―――――――」





 アルミナの拳は―――止まっていた。


 スクトの身体、そのほんの数ミリ手前で。

 

「貴方が『奥の手』を使うとしたら、上空しかない。

 そう思っていましたよ。

 だから――――」


 アルミナは目を見開いたまま、何一つ声を発さなかった。


 否―――彼女は声を出そうとはしていた。


 しかし―――その動作が、()()()()()()()()()()()のだ。


「『仕込んで』おきました。

 この場の上空一帯に、全ての物体の動作を停滞させる『時間魔法』―――『ステイシス・フィールド』を」


 この『停滞の場』で―――スクトだけは通常通りに動き、口を開く。

 肉体動作時間を『加速』させる《アクセル・タイム》により『相殺』されることで―――


「ところで―――貴女の『エクシードスキル』【インフィニティ・タフネス】は、『ひと呼吸』で取り込む酸素で全魔力を回復出来てしまう、という代物ですが―――」


 そのスクトの言葉と共に――――


「ここ―――かなり空気薄いですよね」


 目を見開いたままのアルミナの髪が―――雪のような『白色』へと戻っていく。



「アルミナさん―――――」



 そして―――――







「さようなら」







 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「あとちょっとだよフィル!!

 もう少しで、ボクの身体の所に着くよ!!


 右肩に乗るキュルルの声を聞きながら、僕は馬を走らせる。


 あれから魔物の群れを切り抜けた僕達だったが―――流石に完全に足を止めずに進むことは出来ず、進行速度は落とさざるを得なかった。

 ヴィアさんからかけて貰った『高等強化魔法』も、多分後もう少しで解けてしまうことだろう。


 早く、早く―――!


 そんな焦燥感と共に、前方へと目を向けた僕は―――


「なん、だ―――アレ―――!?」


 見えて来た光景に、絶句してしまう。


 それはまるで超大型の竜巻が通り過ぎたかのような破壊跡。


 木々は一本残らず根こそぎ薙ぎ倒され、地面にはまるで巨大な剣で切り裂いたかのような深い溝がいくつも出来上がり、凄まじい規模の土埃が巻き上がっている。


 その光景の原因に、僕は思い当たる。


「まさか、勇者様とスクトさん―――!?

 2人が戦って、あんなことに!?」


 一体、何があったのか。

 どのような戦いが起きたというのか。

 僕には到底想像など出来なかった。


 でも、だとすると―――


 その戦いの行方は―――?

 2人は今、どうなって―――?


「………キュルル、君の本体の位置は―――!」

「真っ直ぐ!!

 このまま真っ直ぐだよ、フィル!!」


 僕達が乗る馬は、その破壊跡に向かって進み行く。

 恐らく1分もしない内に辿り着くことになるだろう。


 何があったのかを考える時間など、ない―――


「―――行こう!!

 キュルル!!」

「きゅるっ!!」



 そして―――――


 破壊跡の中へと足を踏み入れた僕達は―――『それ』を見つける。



「あれ、は―――!!」


 何もかもが吹き飛ばされたその場所の中に―――まるで世界から切り取られたかのように、不自然に元の形を保った空間があった。


 人工的な金属製の床―――そしてその上に直立する、円筒形の巨大なガラス管。


 その中に―――『あのコ』が浮かんでいた。


「キュルル―――!!」


 僕の意思を感じ取ったのか、馬はゆっくりと速度を落とし―――そのガラス管から少し離れた位置で足を止めた。


 そして地面に降りた僕は、肩に乗るミニキュルルと視線を合わせる。

 キュルルは何も言わずにコクリと頷き―――僕もそれに頷き返す。


 僕は、そのガラス管に向かって―――

 その中で浮かぶ『あのコ』に向かって―――走り出した。


 もうすぐ―――もうすぐ終わる。


 君を取り返して―――この事態を終わらせられる!



 そうして―――僕が『あのコ』の元に辿り着く―――





 その、直前。




 ―――ドサッッッ…………!!!!



「――――――――――っ!?」




 何かが―――僕の背後の場所へと落ちた。


「なっ、なん―――――――」


 振り返った僕は――――それを見た。


 それは―――



「勇者―――様―――?」



 僕の―――いや、この大陸に住む人々の英雄―――アルミナ=ヴァース。


 遥か上空から落ちて来た彼女は―――眠っているかのように瞳を閉じ、何の反応も見せなかった。



 気を、失っているのか――――?


 いや、そうに決まっている。


 ここからでは少し距離があり、あの人の顔色を詳しく窺えないから分からないだけだ。


 そう、きっと気のせいだ。


 そんなはずがない。


 今のあの人から―――生気が感じないように見えるなんて――――



 ―――トッ……………



 頭の中で必死に何かを否定している僕と、ガラス管に浮かぶキュルルの間に―――誰かが降り立つ気配を感じた。


 それと同時に―――僕達を乗せて来た馬が何かに怯えるように、この場から離れて行ってしまった。


 遠ざかっていく馬の蹄の音を聞きながら―――僕はゆっくりと前へ向き直る。


 そこにいたのは―――


「スクト、さん―――」


 呆然とその名を口にした僕に対し――――




「これで―――全て終わりだよ、フィル=フィール」




 彼は静かにそう告げた。


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