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【完結】勇者学園とスライム魔王 ~ 勇者になりたい僕と魔王になった君と ~【4万PV感謝!】  作者: 冒人間
最終章

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第12話 『絶望』と『希望』


《 エクスエデン校舎・第十天 至高天(エンピレオ)


 ―――シュオオオオオオォォォォ………!


「ふむ、やはりサニーちゃん達の拘束力には及ばないか」


 勇者学園最上層。

 至高天(エンピレオ)と呼ばれる部屋の奥に置かれた玉座の上で、白く輝く球体―――『オリジン・コア・レプリカ』の前に立つリブラがぽつりと呟く。


 彼女は『オリジン・コア・レプリカ』に片手を向け、『拘束魔法』を展開していた。

 そしてそれはリブラだけでなく、『拘束魔法』を使える学園の講師全てがこの部屋へと集まり、彼女と同じくその輝く球体に向けて魔法を唱えており―――その中にはリブラの娘、アリエスの姿もあった。


「あの蛇達の名前は普通に呼ぶんだね、お母さん―――」と、思わず口にしかけたアリエスであったが、今はそんなことに言及している場合ではないと、グッと堪えるのだった。


「大地の奥深くに存在する『オリジン・コア』と相互作用する『オリジン・コア・レプリカ』。

 コーちゃんはサニーちゃん達と共にコレを物理的に拘束し続けることで『オリジン・コア』からの『声』を抑制―――つまりは魔物の活性化、そして『魔王』の目覚めを防いでいた」

「その拘束作業の所為で、コーディスさんはこの学園校舎から離れることが出来なかったんだよね……」


 リブラの言葉にアリエスが続く。

 以前、スクトが起こした大陸西側における襲撃事件でコーディスは生徒救出に赴いていたが―――実はあの時は校舎から離れられるギリギリの範囲だったのだ。


 そして、そのコーディスは今、全ての蛇を引き連れて戦いへと赴いている。

 スクトを止めるために、戦力の出し惜しみは出来ないからであった。


 リブラ達は、その蛇達の代わりを果たす為にここに集まっていた。


「でも、お母さん……既にキュルルさんが『魔王』として目覚めてしまった今、こうして『オリジン・コア・レプリカ』を抑えている意味なんてあるの?」

「今現在、『オリジン・コア』からキュルルルンへと『魔王』の魔力が供給されているわけだけど、この拘束によって阻害効果が出ているはずだよ。

 間接的に『魔王』を利用しているスっくん達の妨害を行えるわけだね。

 まあ、効果はほんの僅かである可能性が高いけど―――」


 リブラは、この場に集まったアリエスと講師陣達へ目配せしながら告げた。


「それでも―――何もせずにただ彼らの帰りを待っているだけ、というのもつまらないだろう?」

「―――!

 うん、そうだね!

 私達にも出来ることがあるなら……やらない理由なんて無い!」


 そう言いながら力強く頷いたアリエスは『拘束魔法』の展開に意識を集中させた。


 そして―――『オリジン・コア・レプリカ』へと目線を戻したリブラは独り言ちる。



「それにしても『魔王』の魔力、か。

 一体スっくんは―――」



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


《 大陸西側・『レッドエリア』奥地 》


「スクト―――君は一体、何をするつもりなんだ?」


「…………………」


 胸にナイフを突き立てられた人型のスライム―――キュルルが浮かぶガラス管の前に立つスクトに向かって、アルミナは改めて問いかけた。


「『魔王』の魔力を掌握して―――いや、それよりもずっと前。

 大陸西側における、魔物の群れによる生徒達への襲撃―――そして、ガーデン家令嬢の殺害。

 これらの目的は一体何だったというんだ?」


 もはやどうしようもなく決定的に道を違えてしまった『元』勇者一行のメンバーの目を、『勇者』は真っ直ぐに見つめる。


 今更そんなことを聞いてどうするというのか。

 自分が何をするにしても、貴女はただ止めるしかないであろうに―――


 例え、そんな答えが返ってくるとしても―――

 道を違えてしまったからこそ、アルミナは全てを知っておきたかったのだ。


 そんな彼女の思いを汲み取ったのか、それともただの気紛れか―――


「かつての大陸西側での魔物による襲撃。

 その目的は―――生徒達に『エクシードスキル』の覚醒を促すこと、ですよ」


「―――!」


 スクトは、静かに語りだした。


「といっても、コーディスさんなら既にそれぐらいの推測はしていたとは思いますけどね」


 そう―――スクトの言う通り、コーディスは懸念を抱いていた。

 あの襲撃事件により生徒達の中に『エクシードスキル』に目覚めた者が大勢現れたが―――それがスクトの目論見であったのではないか、と―――


「『エクシードスキル』に目覚め、その成長を促す条件は―――『命の危機』に陥ること。

 アルミナさん、貴女はそれをご存じのはずだ。

 なにせ、貴女が『スーパー・エクシードスキル』に目覚めた切っ掛けでもあったのだから」


「―――――」


 そのスクトの言葉により―――アルミナの頭の中に、かつての記憶が蘇った。


「かつて、ベリル=ビーイングが貴女達と決別をした日。

 彼女の手によって、貴女は死の淵を彷徨い―――そして『力』を手に入れた。

 無限の体力―――【インフィニティ・タフネス】を」


「…………………」


 その時の『胸の痛み』を思い出したアルミナは、ほんの一瞬だけ瞳を閉じ―――その後、すぐにスクトを見つめ直し、口を開いた。


「だが―――『命の危機』だけが『エクシードスキル』に目覚める為の条件ではないはずだ」


 そう、これもコーディスが述べていたことであるが、この大陸において『命の危機』に陥った者など大勢おり、それだけならこの大陸には『エクシードスキル』に目覚めた者で溢れかえっているはずなのである。

 つまり、『命の危機』以外の条件も存在するのだ。


 その疑問の答えを―――スクトは口にした。


「もう一つの条件は―――『感情』ですよ」


「『感情』―――?」


 アルミナの怪訝な声に、「そう―――」とスクトは続けた。


「まず、必要となる感情が―――『絶望』」


 ピクリと、アルミナの眉が動いた。


「そして―――その『絶望』を乗り越えること。

 それが『エクシードスキル』に目覚める為の条件なんですよ」


 大陸西側における襲撃時―――生徒達は皆、迫りくる魔物の群れに対し、焦燥に駆られ、怯え、恐怖し―――『絶望』に陥っていた。


 だが、彼らは―――


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


『『戦えぇえええええええええ!!!!!

 『勇者』共ぉおおおおおおおおお!!!!』』


『さあ、如何いたしますか!!

『勇者』様方!!!』


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 その『絶望』を乗り越え、奮起した。


「『絶望』の淵に叩き落された状態から『希望』へと移り変わる際の『感情の揺り戻し』―――それこそが人間の内に秘められた『力』の扉を開くための『鍵』となるんです」


 ゆえに彼らは―――『エクシードスキル』に目覚めたのだった。


「それは貴女も同じであったはずだ。

 貴女はベリル=ビーイングに決別を突きつけられ、『絶望』した。

 そして―――それを乗り越え、彼女を止める決意を抱いた。

 だから貴女はその『力』に目覚めた」


「…………………」


 アルミナは―――ほんの一瞬だけ瞳を閉じ、その時のことを思い出した。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 当時、アルミナの『エクシードスキル』は【ギガンティック・タフネス】と呼ばれており、常人より遥かに膨大なスタミナを所持してはいたが、『無限』と呼べるほどのものではなかった。

 また『身体強化魔法』も使えはしたが、現在のような規格外の効果は持っていなかった。


 だが、ベリルが『仲間達』と決別した、あの運命の日―――

 自らの目的を打ち明けたベリルは―――アルミナ達へと襲い掛かり、彼女達を死の淵へと追い詰めた。


『皆……………ごめんね。

 私はもう、この『声』を無視できない』


 それは自分1人だけで『全て』を背負うという、ベリルの『決意』と『覚悟』の表れであった。


『謝るのは、これが最後。

 もう誰にも謝らないし、絶対に後悔もしない。

『コレ』は間違いなく、私が正しいと信じて選んだ最良の選択。

 だから―――さようなら、皆』


 そして―――


「ベリ……ル………!

 頼む………待って、くれ……!

 お願い、だから………待って………!」


 地に倒れ伏せていたアルミナは―――


「ぅ……ぁああああああッッ!!!

 待てぇええええええーーーーーー!!!

 ベリルウウウウーーーーーーーーー!!!」


「―――――っ!」


 その髪を青色に染めながら、立ち上がり―――


 驚愕の表情を浮かべて振り返ったベリルに向かって―――


「うあああああああああッッッッッ!!!!」


 ―――ドッッッッッッッ!!!


 全力で駆け――――


「―――――――」


 その拳がベリルに触れる直前―――


 髪が赤色へと変わり―――



 ―――ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!



 轟音が、響いた―――


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 その後どうなったかについては、アルミナは覚えていなかった。

 ただ、ベリルが超大陸『ヴァール』で『魔王』として活動を始めたということは、結局その時にベリルを止めることは出来なかったということなのだろう。


 そして、その日以来アルミナは『無限の体力』を持つこととなり―――

 その時アルミナがベリルに対して行った最後の行動が、後に『奥の手』と呼ばれるようになるのだった。


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