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高山超新星

 高山たかやま超新星スーパーノヴァ――享年48歳。174cm、180kg。日本人では珍しい「体重>身長」という驚異的な肉体を持つ。


 死因は、深夜の国道沿いに建つ母親から譲り受けた一軒家へ、居眠り運転のタンクローリーが突っ込み爆発炎上したことによるものだった。


 その大事故で全国に名前が広まったことを思い出し、堕天使はしみじみと頷いた。


「思い出すわ~。超新星爆発するする詐欺のベテルギウスを出し抜いて、『日本で超新星爆発を起こした男』としてネットの玩具――もとい、有名人になったスーパーノヴァ君! 懐かしいな~」


 さっきの強盗4件の男とは違い、奇天烈な名前こそ弱点だったが、T大に現役合格し成績優秀で卒業した秀才。幼少期から大学まで文武両道で欠点らしい欠点もない。ただ、就職氷河期の圧迫面接官にとって「奇天烈な名前」が最高のサンドバッグだっただけだ。


 20年以上ニートを続けたことで能力は錆びついているはずだが、運よく誰かに助けられた後、過酷な世界にケツを叩かれて昔を思い出したのなら、なんとか生き残っていてもギリギリ納得できるくらいの力はある。


「ま、とりあえず連絡とってみますか~。繋がるかなっと」


 堕天使は独り言を言いながら念話テレパスを送る。天使同士の交信手段であり、人間が対応できるはずがない。ダメ元で送ったのだが――。


『Hello? Who are you?』


『あ、すいません。間違えました』


 返ってきたのは英語。驚いた堕天使は反射的に念話を切った。


 しかし念話は本人に直接繋ぐもの。電話のように間違いなどありえない。理解できず腕を組んで首を傾げていると――。


「ああ、急な念話でどなたかと思いましたが……確かルーシー様、でしたかな? 私を転生させてくださった天使様の。天使様でもイメチェンなさるのですね。いや、あの時の純白より今の漆黒のお姿の方がお似合いですよ」


「!?」


 背後から突然声が飛び、堕天使が勢いよく振り向くと、そこにはカイゼル髭を蓄えたオールバックの男が立っていた。


 身長は175cmほど。首には金属の首輪。背筋の伸びた執事服の下には、服越しでも分かる筋肉の鎧。


「え? え? え? 誰!? どこから現れたのよ!!?」


「失礼いたしました。私は10年前にあなたによりサヴァイヴァリアへ転生させていただいた者。かつての名前は忘れてしまいました故、あなたに何と名乗ればよいか迷っております。ちなみにここへは念話の線を辿り、私のスキル『宇宙跳躍コズミックワープ』を使って参りました」


 説明されても理解が追いつかず、堕天使の頭上には光輪の他に大量のはてなマークが浮かぶ。身長は高山超新星と同じくらいだが、姿は記憶の男と似ても似つかない。


 それでも念話を辿って来たというなら、高山超新星である可能性は高い。だが堕天使を混乱させる理由はもうひとつあった。


(何このプレッシャー……気持ち悪い……)


 背中にじっとりと冷や汗が浮かび、服が不愉快に張り付く。主神を前にしたかのような圧力に、堕天使は崩れ落ちそうになるのを必死に耐えた。


(とにかく……このスーパーノヴァ君(仮)について……調べないと……)


 サヴァイヴァリアには「人の戦闘能力を数値化する」という、現地の魔導士が作ったシステムがあり、それを向こうの天使から共有されていた。


 血で血を洗う世界ゆえ、町や村レベルでも外敵から身を守るために老若男女問わず戦える者が防衛に参加する義務がある。犠牲者を減らすため、適材適所に人材を配備する目的で作られたのがこのシステムだ。


 戦闘に関する8項目――生命力・魔力量・攻撃力・魔術攻撃力・防御力・魔術防御力・速度・技巧――を、伝説の英雄たちの力を人の限界値9999とし、相対評価する。


 天使同士で測り合ったとき、堕天使の能力は全て7000超え。英雄には届かないが、並の人間では到底及ばない。


 目の前の男が高山超新星であろうと、サヴァイヴァリアの人間なら、そうそう自分が劣るはずがない。圧倒的なプレッシャーを感じながらも、堕天使は不安を振り払うように紳士へ向き合う。


(『測定の天眼』!!)


 サヴァイヴァリア担当の天使が使うスキル。対象の力をサヴァイヴァリア基準で測定する。


 緊張のせいか測定が終わるまでの時間がやたら長く感じられたが、やがて紳士のステータスが表示された。


===================================

名 前:つよつよにくだんご

ジョブ:超超究極宇宙闘士 Lv:3

生命力:1336081 攻撃力:1055162 防御力:1073906 速 度:1036987

魔力量:1000006 魔攻力:1000001 魔防力:1042609 技 巧:1042166

===================================


「何よこの『ぼくのかんがえるさいきょうのじょぶ』は!? 小学生か!!」


 ツッコミで声を張れたことでプレッシャーから解放された堕天使は、現実へ向き合う。


「え、ほんと、え、なにこれ? ちょうちょう究極きゅうきょく宇宙うちゅう闘士とうし? え、ほんと何?」


「はっはっは! 残念ながらこれはちょうスーパー究極アルティメット宇宙コズミック闘士ファイターと読みます。珍しいジョブですから読み方がわからないのも無理はありませんな! しかしさすが天使様、私の情報をご覧になるスキルをお持ちで?」


「いや、盗み見たのは悪かったけど、そうじゃなくて! 普通『あなたが考えた最強のジョブに、そのジョブに就くために必要な最低能力で転生させる』って言われたらさ、勇者とか賢者とか英雄とか思い浮かべるでしょ!? ねえ!?」


「はて、私の認識では『自分で新規ジョブの名前と、それに就くための最低ステータスを設定しろ』というものかと。勇者や賢者はレトロゲームから続くRPGの定番で、既存ジョブと考えておりました。まぁ、そもそも勇者などの称号は他者から自然と呼ばれるべきものであり、ジョブと考えること自体疑問ですがね」


「正論を止めろ! よくもまあ、あの短いやり取りでそこまで考えられたわね!? いや、正しいんだけど!! 正しいんだけど、そうじゃなくて……!!」


 いつもなら死に戻り相手に吐くセリフで論破され、堕天使は地団太を踏んで悔しがる。しかし今はそんなことをしている暇はない。


「そうじゃなくて、能力の最大値は9999のはずでしょ!? それなのに全部100万超えって、どんなチート使ったのよ高山たかやま超新星スーパーノヴァ!!」


高山たかやま超新星スーパーノヴァ?」


 ぴくりと紳士の眉が動いたのを見て、堕天使は慌てて口を塞いだ。だがもう遅い。その名前は高山超新星にとってのトラウマ。それが原因で苦労し、世界を憎んでいたことを知っていたのに――。


 己の迂闊さに、堕天使の汗はさらに勢いを増した。

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