チートジョブ付き異世界転生
「もう一度、最終確認させてね。『地獄は嫌だ、天国に行かせろ』じゃなくて、転生を望むのね? 本当にそれでいいのね?」
「そうだよ、何度も言わせんな! オレは日本どころか世界でもトップクラスの才能を持ってたのに、周りがバカすぎて気づかなかっただけだ! だから自分にふさわしい報酬の仕事をした! そのせいで死んだ! 全部、他のヤツらがバカなせいだ!
……そうだ、もともとオレは特別な才能を持ってたんだから、チートなんて言葉は合わねえな。圧倒的な才能を称賛されるべきなんだよ! だからさっさと人生をやり直させろ!!」
筋の通らない言い分だが、天使は困惑するどころか書類をデスクに置き、手を打った。
「なるほど、分かった。それがあなたの望みなら、そうしましょう! ええ、そうしましょう!!」
男は「よっしゃ!」とガッツポーズをしたが、残念ながら物を知らなすぎた。
本来、天使には行き先を決める権限はない。天国・地獄・転生の提言はできても、決定権は上位存在にある。それなのに転生を即決した時点で、本来なら疑問を持つべきだった。
「チート能力の付与はできないの。でも私の権限でもできることがある。それは――
『あなたが考えた最強のジョブに、そのジョブに就くために必要な最低能力を持った状態で転生させる』こと!」
「ちッ……! なんだよ。ステータスMAXで転生させろや、使えねえ」
男は舌打ちしたが、天使は気にも留めない。態度が悪ければ悪いほど、天使はカタルシスを感じるからだ。
「職業って言ってるけど、簡単に言えば神が認定する資格のようなものよ。例えば戦士になるには攻撃力300以上が必要。あなたの世界でも戦争はあったでしょう? 手足を失った軍人の映像を見たことくらいあるはず。それがあら不思議、戦士のジョブに就いていれば、片足で踏ん張れない状況でも、戦士の神が“攻撃力300”を保証してくれるの」
「なるほど。じゃあ最初から強いジョブに就けば、バカ高いステータスで異世界に行けるってことか。
それなら……剣聖……いや魔法も使いたい。大魔導士……いや攻撃も回復もできる大賢者……いや、いっそメイン剣聖、サブ大賢者。これだな」
「あ、一応言っとくけどジョブは一人ひとつだからね。神が認定するんだもん。信仰の薄い相手や裏切った相手には容赦ないし、複数信仰なんてしたら両方の神の怒りを買って破滅するわよ」
「んだよ、本当に使えねえ天使だな!!」
(まあ、これから行くのは神が憐れんで肩入れしたくなるほど過酷な世界。地獄は罪を削ぐために手心が加わるけど、転生先はそうはいかない。せいぜい絶望の中で死に戻って、私の渇きを癒してちょうだいね)
「何か言ったか?」
「いえいえ~」
暴言を受けてもなお、天使はニコニコと笑みを崩さない。腹に据えかねた呟きは男には届かなかった。
数多の並行世界の中で唯一、天使が自分の判断で魂を転生させられる世界――サヴァイヴァリア。Survivalを語源とするその世界は、人間・獣人・竜人などの亜人、そして知性なきモンスターが血で血を洗う生存競争を繰り返す世界だ。言語体系は地球と同じで、言葉が通じるからこそ、人間種の存続のために転生者を融通してほしいと、管理天使から依頼されている。
サヴァイヴァリアでの人間の地位は恐ろしく低い。だからこそ、地球からの転生者は他種族との間で地位を高めることを期待されており、天使個人の判断で転生が許されている。
「それじゃチャチャッと転生させるよー。あ、向こうの人間の意識を乗っ取るのはご法度だから、赤ん坊からじゃなくて『転生の祭壇』に今の姿のまま生まれ変わらせるから。就きたいジョブを頭に浮かべてねー」
天使がそう告げると、男は期待に満ちた表情のまま光に包まれ、世界から消えていった。




