表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/31

邪悪な男と邪悪な笑顔

 細身の男は状況がつかめないのか、キョロキョロと辺りを見渡していた。天使は翼を軽くはためかせて椅子から跳び上がり、男の前へ降り立つ。


「どうもー、初めましてー。驚くのは無理ないけど、まずは落ち着いてもらって」


「な、な、どこだよここ……え、え、え?」


 おどおどした様子の男に言葉を無視されたと感じた天使は、一瞬だけ顔をしかめたが、すぐに不敵な笑みを浮かべて声をかけ直した。


「Welcome to Underground」


「え、な、なに、天使? え、マジでわけ分かんねえ。つーか、Welcome to Undergroundってなんだよ。それを言うならWelcome to “the” Undergroundだろ。天使のコスプレしてるくせに英語もろくに使えねえのかよ」


「よし、情状酌量の余地なし。即地獄に落とすべし、と」


 闇バイトに手を出している人間にどう接すべきか分からず、天使は闇の住人っぽい言葉をかけてみたのだが、それを冷笑されたことで、手に持っていた書類に「極悪人」とさらさら書き加えた。男はそれを見て慌てて天使を止める。


「おい……おいおいおい、待てよ。待ってくれよ! 今地獄とか言ってたけど、どういうことだよ!? もしかして本物の天使? 俺、死んだのか!?」


 頬をつねる古典ムーブをかます男に、天使は憐れむような視線を向けて答えた。


「え、うん。私は日本人担当だから、49日経ってからここに来てるはずだけど、それだけ経ってるのに死んだって分からなかったの? てか強盗を4件もやってりゃ地獄でしょ。私をバカにした罪との併合罪で、罪の重さは3000倍になってるし、どこに地獄以外の道があると思ってたのかしら?」


「ふ、ふざけんなよ! バカにしたも何も、実際英語の使い方おかしかっただろうが! 強盗ってのもただの闇バイトだろ! ちょっとタイパ良く稼げる仕事してただけなのに、何が悪いんだ!!」


「タイパ……ちょっと待って。こちとら10年間謹慎してたから、私の常識と世間の常識にズレがあるかもしれないのよねー。え、今の闇バイトってタイパいいの?」


 天使が中空に手をかざすと、スマホ画面のようなものが浮かび上がり、言葉を検索する。しかし疑念は晴れず、さらに続ける。


「10年前は奪った物を上納させた後に警察へ通報すれば、実行役は逮捕されるって流れだったじゃん? 指示役は個人情報全部握ってるし、自分の情報渡してないなら反撃もされないしで、報酬払う必要なかったでしょうよ。そんな使い潰してポイの相手に、タイパが良いって言うくらいの報酬を支払うとか、今の指示役って聖人なの?」


 半ば独り言のようにまくしたてる天使に、男は唇を噛みしめて俯くしかできない。その様子を見て天使は悟った。


「ほら見なさい、やっぱり払われてないじゃん。何がタイパ良く稼げるだよ」


 さらさらと書類に「虚言癖あり」と書き足す。すると男は涙を浮かべて叫び出した。


「なんだよ! ワリイかよ! どいつもこいつも見下しやがって全員死ね!! つーか何が地獄だバーカ! こういう場合はチート能力寄こして転生させてくれるのが、お約束じゃねえのかよ!! チート能力寄こせよ、チート能力!!」


「え?」


 鼻息荒く突っかかる男をちらりと見て、天使は両手で顔を覆った。


「……それがあなたの望み? 本当に、それを望んでいるの?」


「当たり前だろうが!! できるなら早くやれよクソ野郎が!!」


 傍から見ると、20歳の男に罵られ少女が泣かされているような状況。しかし、両手の隙間から覗く天使の口は、ますます邪悪に歪んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ