223.脱獄と遭遇
いつもより短めです。
目の前には鉄格子。
錆びた赤茶色の鉄棒を両手でつかみながら、私はただただ困惑していた。
「……どうしてこうなった?」
いや、ほんとに。
言葉遣いだって気をつけたし、不法に侵入したわけでもない。しかも閉じこめられた途端、爆音が轟いて衛兵さんたちも慌ててどっか行っちゃうし。結局、捕らえられた理由も訊けず。
だけど、手紙に目を通したところで領主様の態度が豹変したことから原因の目星はほぼほぼついてたりもする。
女王様の悪口でさえ平気で言うアラクネ会長のことだ。どうせ失礼な物言いで内容をしたためたに違いない。
「んもっー! あの人は礼儀ってものを知らないんだから!!」
ま、そもそも粗暴の権化ともいえるアラクネ会長の力を頼ったのが発端。こういうリスクもあるってことは最初から想定しておくべきだった。
とはいえ、このまま身に覚えのない罪で罰を受けるほど、私は運命に従順じゃない。
さっきからずっと牢の外が騒がしいのも気になるし、こんな薄暗くて狭い場所からはさっさと自力でエスケープだ。
「はぁ、これでまた漁業開拓の道がぁ……」
新しいビジネスが遠のいていく悲しみと徒労感の中、錆びの浮いた鉄格子を数本モグラクローで取りこみ、できた隙間から牢屋を脱出。
牢獄の入口にいた見張りの衛兵さんたちもさっきの爆音で出て行ったみたいで、そのまま私は難なく牢屋のあった小さな塔から出ることができた。
「ん?」
でも、アーチ状の出口を抜けて屋外通路に出た矢先のこと。
不意に足元が暗くなった。
さっきまで雲一つない晴天だったのに雨でも降るのかな? そう思って上空を見上げる。と、そこには一匹の巨大な鳥が……や、違うっ!
「――竜だ!! 竜が飛んでる!? なんで!?」
優雅に城の上空を旋回する飛竜の存在に気づいて驚愕してると、破壊された城の有り様も視界に飛びこんできて私はさらに混乱した。
「ええっ!? い、一体、何が……?」
そうこうしてるうちに困惑するこちらを意に介さず、青い竜は城の裏側へ翼を広げて飛び去って行く。その姿はなんとなく見覚えがある気がしたけど、突然のこと過ぎてもう頭がまともに働かなかった。
頬を伝う一筋の汗と、頭の上に浮かぶ大量のクエスチョン。
てか、さっきの轟音は城が破壊された音っぽいけど、状況を考えればあの竜の仕業ってことになる。
ただ、さっきからずっとワーワー争うような喧騒が遠くからしてた。どうもそれは被害の大きい城の西側から響いてきてるっぽい。私が今いる東側の離れた場所にポツンと建つ尖塔とは、ちょうど正反対の方角だ。
とにかくここにいても状況は一向につかめない。凸凹の高い城壁が囲う屋外通路を抜けて周囲をよく見渡せる場所――城の外縁のほうに向かう。そして湖の向こう側に広がる一変した旧都の様子を目の当たりにした私は、そこで言葉を失った。
「………………」
かなり距離はあるけど被害が広範囲に及んでるのはここからでも一目瞭然だった。
街ではあっちこっちから粉塵が立ち昇り多くの建物が倒壊し、瓦礫と化してた。その一部では黒い煙とともに火の手も上がってる。
こんな短時間で何があったのか。ついさっきまでのどかで美しかった水の都が見る影もなくなってた。
「わ、わけがわかんない……。ほんとになんなの、これ……」
その光景は、まるで人類が異種族同士で繰り広げていたという大昔の大戦。絵画で描かれたり、物語として記されている悲劇の世界、そのものだった。
ヤバい。
とにかく、ここは危険だ。
――トコトコ。
――ペタ、ペタ。
ダタッ――!
「――えっ!?」
本能が警鐘を鳴らす中だった。
ふと妙な気配を感じて振り返った直後のこと。いつの間にか私を半包囲してた奇怪なそれらは同時にこちらへと襲いかかってきた。











