復讐の旗揚げ 4
カイルの突っ込みを耳に私はスッと上を見上げて6枚片羽を広げた。
どこからでも地下から地上へ行けるわけではない。
地下から地上へ行くには黒流湖という黒い湖へ行く必要がある。
そこだけが地上と地下を結んでいるのだ。
もちろん地上から地下へ来ることも出来るのだけれど、ヒューマン族で望んで地下の魔族の領域に来る者はいない。
私がリリア・エルドス・エスターの頃にも地下へ行くなどと言う話は一度も聞いたことがないのでそう言う考えになるヒューマン族がいなかったということになる。
更に私が転生したあともヒューマン族が現れたという話は聞いたことが一度もないのだ。
反対に魔族が地上へ行くことも殆どない。
それについてはカイルも『まあ、大問題が起きた時に天界の神王と合流するために地上へというのは聞いたことがありますが』と告げて『でもその大問題が起きたというのはリリア様誕生くらいですよ』とため息交じりに言われた。
なので長く生きているカイルも地上へ行ったことがないのだ。
その為に地上の黒流湖が何処にあるのかは分からないのだ。
何処かの王城の地下か。それとも湖か。神殿か。いやいや、森の何処か深い緑の場所か。
でもどちらにしてもあの二人の報復のためにはいくしかない!
私はすっと城の東の方へと目を向けた。
地下の黒流湖は城の東にあり真っ黒な湖で上に向かって流れている地上と地下を結ぶ海流湖であった。
外から見ると黒い支柱が立っているように見える。
ただ力のない魔族がその流れに乗ると地上へ行ったきり地下へ戻ることができないという曰く付きの湖でもある。
もっとも、無限増殖炉のような魔力を持っている魔王の娘となった私には問題ない状態なんだけど、私はカイルと共に湖に向かいその天上へと延びる黒い水柱を見上げた。
「行きますわよ!」
「は!」
私はそう言って水柱の中へと足を踏み入れた。そこはゴウゴウと音を立てている割に身体を濡らすこともなくまるで黒い光の粒子が上へ地上へと流れていくような空間だった。そして、地上に近付くと黒い粒子は白い粒子へと変化し気付くと砂漠の真ん中のアリ塚の渦の脇へと放り出されていた。
「私、城の地下とか神殿とか……湖って言うくらいだから湖の真ん中かもと思ってましたわ」
そんな私の呟きにカイルは横に立ちながら小さく笑った。
「だったら、リリア様も私も先ずは水泳でしたね」
水泳って。
まあ、水にはあまり良い思い出が無し、服が濡れると着替えの問題もあるから砂漠で良かったけれど、右も左も風紋を描く砂の大地っていいうのは方向感覚が無くなって良くない気もする。
それこそ町の姿も見えない。
「中央砂漠だと思うんだけど……どの辺りかしら」
「多分ど真ん中だと」
なるほど。
詳しいな、カイル。と私は思ったけれど、当てずっぽうかもしれない。
私はチラリと疑惑の視線をカイルに向けたものの、今はそれよりもマランへ行く方が大事だと気付いた。




