復讐の旗揚げ 1
魔族が生きる地下の世界に青い空は無い。
かといって真っ暗で何も見えないのかと言うとそんなことはなく地表の裏に走るマグマが太陽の灯りの代わりに光を地表に投げかけている。
もちろん、地上よりは遥かに暗いが魔族の眼は暗さに適応しており見るのに困ることはなかった。
「リリア様! リリアさまー!」
魔王城の中庭で剣の訓練をしている私の耳にカイルの声が響いた。
私は細身の剣を手に笑みを浮かべて声を上げた。
「カイル、心配しなくても私はここよ」
城から中庭に続く出入口から私のいる王城の中庭に姿を見せたのは側近……と言うよりはお目付け役の魔貴族のカイルだ。魔族にはヒューマン族と違ってファミリーネームがない。所謂、苗字はなく名前だけなのである。
カイルは黒い髪に黒い瞳をして、何より黒い4枚羽は魔族の貴族の証。彼は純粋な魔貴族なのだ。
私は自らの背中に生える6枚片羽を見た。本来、魔王族は片側6枚の両方で12枚の羽根を持って誕生するのだが、私は片羽6枚で誕生した言わば忌み子である。
『どうせなら12枚羽だったらよかったけど』と思わないこともないけれど、ただの魔族、魔貴族、魔王族には明確な能力の差があり、片翼の忌み子であっても他の魔族に戦いを挑まれて負けることはないらしい。
私はカイルが駆けてくるのににっこりと笑みを浮かべた。
「常に側にいなくてもここは私の魔王の城よ。何者かが襲ってくるわけがないわ。もっとも、襲ってきても返り討ちにすることは出来ると思うの。破壊魔法は全て会得しているんですから」
私はそう言って剣を振り上げて鋭く目の前に立っていた木を切り倒した。
かつての私は同じ名前だった。
リリア・エルドス・エスター。
それが私の前世の名前。
側近の女エリス・ウェールズに夫であるアレックス王を奪われ『王を暗殺しようとした王妃』として処刑された。
転生をしたら記憶は無くなると思っていたけれど、不思議と記憶は残っていて魔界宝玉から誕生した私は第一声で『復讐してやる――――!!』だったらしい。
それについては普段あまり表情を変えない魔王も目を見開いて苦笑を零したという話を目の前のカイルから聞いたことがある。




