決着の時 3
だけど。
だけど。
「エリス、望み通りにエルドスは崩壊したわ。王族も終わりよ」
私はエリスの振り下ろした剣を弾いて横へと薙ぎった。剣では神族も魔族も死ぬことはない。
私は手をエリスに向けた。
「魔族は魔族に転生するらしいわ。貴方はきっと神族だと思うわ。恨みはこの地上に捨ててエルドス崩壊と共に私たちの恨みも壊しましょう」
そう言って私は彼女に魔法の矢を放った。
「ローデスデスロード!」
エリスはその黒い光を受け止めて微笑むと私の頬に両手を添えた。
「そうね、だったら、私の恨みの結晶であるこの羽を貴方にあげるわ……貴方だったら恨みもきっとバネにして違う力に出来るわ」
「え!?」
エリスが霧散すると同時に彼女の白い羽が私の無い方の羽へと変わった。
黒い6枚片羽と白い6枚の羽根。
もし私が本当の魔王族であったなら私の羽はどちらも黒い12枚羽になるはずだった。
けれど、私は恐らくヒューマン族の魂の欠片と魔族の黒い6枚羽と神族の白い6枚羽を持ったということになるわね。
「まあ、リリア様の恨みの方が根性があったってことですかね」
「カイル!」
「いや、リリア様の方が心が強かったということですよ。恐らくリリア様が彼女と同じ立場になったとしてもギリギリのところで他国には手を出さなかったと俺は思います。エルドスの王とエルドスの民は相応の報いを受けたとは思いますけどね」
……投げられた石は自らの上に落ち、自らの行為を裁く……
「それは我々も心しないといけないことですね」
私はカイルを見つめて微笑んだ。
「そうね、人のために動けばそれはきっと私の為に戻ってくる。自らの欲の為に人を陥れればその欲によって自らの足元に死の穴を掘るってことね」
見下ろせば地上ではアレックスが囚われエルドスは本当に崩壊していた。
私はエルドスの王城の謁見の間に集まる王たちの元へと戻った。
この王も民もいなくなったエルドスをどうするのかをきっと話し合うことになる。
それは地上のヒューマン族が決めることだわ。
「後は皆さんにお任せいたします。但し……もし、再び地上に動乱が起きた時は私が動乱元を叩きにまいりますから……ご覚悟ください」
そう言って笑った。これくらいの脅しや牽制があった方がいいわよね。
それで平和が保たれて私やエリスのような不幸な花嫁が生まれないのであるならば……その方がずっといい。
王たちも私の言葉に静かに頷いた。
エルドスの惨状を見れば自国の民を守るためにも無益な侵略はしないと誓えただろう。
私の地上征服大作戦は失敗だったけれど、それ以上のモノを手に入れた気がする。
「行くわよ、カイル」
「はい、リリアさま」
その言葉にかつての父だったエスター王は私を見たけれど、私は今は魔王の娘。
且つてのお父さま、ありがとう、それから、さようなら。
私はカイルと共に飛び立ち、黒流湖へと向かった。
今は懐かしい故郷の魔王城へ戻るために。
「さて、地下へ戻ったら」
「回復魔法と防御魔法を学んでいただきます」
「……もー、今言おうと思ったのに!!」
私はカイルと共に地下へと流れる砂の湖へと飛び込んだ。
さようなら、リリア・エルドス・エスター。
そして、私は魔王の娘のリリア。
輝きが黒い輝きへと切り替わり頭上が大地の表面となっている魔族の土地へと私とカイルは戻った。




