決着の時 2
エリスは表情を消すと強い気を放った。
「そうね、でも私も60年前に同じことをされたの。その時のエルドスの王にね。しかも公開処刑よ……民は私のことを詰ったわ。王を裏切るなんてひどい王妃だと、だから、王妃は他国の女よりエルドスはエルドスの貴族の娘であるべきだと罵られて処刑されようとした私にモノを投げつけたわ。冤罪だった。私は王に尽くしていた。国同士の結婚だったけれど王に尽くしたのよ。その果てが公開処刑でエルドスの国民たちの暴言だった」
それを耳に私は死んだわ。
悔しい。
悔しい。
憎い。
エルドスの王も民も全てが憎い。
「しかも私が神族に転生して地上へ来た時……私の生まれた国はエルドスに滅ぼされていた。父も母も……民たちもエルドスの王と民に殺されていたのよ。彼らが投げた石を私は彼らの元へ返しただけ」
私は彼女から放たれる怨念に目を見開いた。
それは私が殺される時に心で思ったことを同じだったからだ。
エリスは足を踏み出した。
「リリア王妃、貴方には何の罪もないけれどエルドス王の子孫やこの国に無残な終わりを迎えさせるための小さな犠牲。大事の前に小事よ」
そう言って滑るように迫ってくるエリスを私は避けて振るってきた剣を剣で弾いた。
そうね、そうね。
その恨みは分かるわ。
「確かに、貴方の気持ちはわかるわ! 私だってその為に地上征服を企んだんですもの!」
「リリア様、言葉言葉」
「でもね、私の命も、マラン王や王子、そして、ローマアーナの王族……いえ、一人一人の命を小事って言うのは間違ってるわ!! 私だってマランやローマアーナを滅ぼして最後はエルドス―って思ったけど、今ならわかるわ」
……私は貴方と同じ報復をしなくて良かった……
「恨みはこうやって回っていく。私たち、エルドスだけに報復するべきだったのよ」
「リリアさま……感動しかけましたが、それも何か」
「だって泣き寝入りは嫌! 私を冤罪で処刑しておいて罪の意識すら持たずに笑って人生を終えるなんて許せない! これは彼がしたことへのお返しよ」
エリスは初めて綺麗な笑みを見せて剣を振り上げた。
「そうね、悔しかったわ。許せなかった……でも、そうね。報復第一弾で貴方のような存在にぶち当たるなんてそれ以上はやるなと運命が言ったのかもしれないわ」
私はその煌めく切っ先を見つめた。動きが僅かに鈍っている。
エリスの心にきっと亀裂が入ったに違いない。
残虐なエリス。
けれど、彼女も60年前はそんなことを考えたりしなったはずだわ。
国同士の結婚であっても尽くした。エルドスの王のためによき王妃になろうとしたに違いない。
けれど、彼女もまた冤罪で処刑された。
そして国まで奪われた。




