地上の怖い現状 3
地方官は腰を抜かして私を見ると蒼褪めた。
「ま、ま……魔族!!」
叫んだ言葉は確かに正解ね。
「そうよ、私は魔王の娘。リリア」
「魔、王の娘……」
「アレックスとエリスに先の言葉を必ず伝えてちょうだい。ぎったんぎったんにして切り裂いて河に捨てるからvv 序でにエルドスを破壊するってねvv」
「リリアさま……だんだん物騒になっていますけど」
カイルの言葉に被さるように歓声が響いた。え? ここ歓声があがるところ??
私がそう考えた瞬間にアルフレッド王子に手を握りしめられた。
「黒き聖女……リリア殿。我々もエルドス崩落の為に戦います! そして妹を救い出さなければ!」
……良いか! 我が国のモノよ!! 黒き聖女の元で我々もたつ!! ……
エルドスの地方官は逃げ去り、鬨の声だけが王城都市に響いていた。
けれど! 私は復讐者なんですけどー! マランを壊そうと思ってましたけどーーーー!
「リリア様、誰も聞いておりません」
カイルの声が私の耳を打った。確かに誰も聞いていないみたい。
とりあえず何か違うみたいだけど、マラン国は協力者にするわ。だって彼らに罪はないんですものね。
八つ当たりは良くないわね。
それに、怖がらせるだけならローマアーナだけでも衝撃はあるわ。
マランの王城に入り客室へと案内された。
「まあ戦力はある方がいいわ、そう言うことにするわ」
「なるほど、わかりました。無駄な殺生は無駄なことですからね」
「考えればローマアーナだけでも恐怖心は十分だとおもうの」
「……まだそれ考えているんですか」
「そして恐怖に慄く悪逆非道なエルドスの王と王妃をマランの兵士たちと倒して、エルドス国をぶっ潰すの。今から想像してすっごくスカッとすると思うわ」
「スカッとって……反対にリリア様が悪逆非道になりますよ」
「ん? 何か言った?? いいのよ、どうせ私はエルドスでは『王殺しをしようとして反対に殺された間抜けな王妃』ってなっているに決まっているんですもの」
「リリア様……でも今は魔王の娘として転生されているのです。それにかつての自分をそんな風に貶めた言い方をしてはいけません」
「でも、悔しいけどそうなのよ」
「……本当にヒューマン族は……無為な殺生を好んでするんですね」
カイルはどちらかと言うと戦や争いは好まないみたいで、考えると魔王も魔族自体が戦争をしているというのを見たことがない。リリア・エルドス・エスターだったころは魔族はとにかく人を籠絡して国を崩壊させ地上を乗っ取ろうとしているという話が多い。自分もまた同じように感じていたのだが、実際はそうでもないようである。
「ねえ、魔族って考えれば地上には興味ないみたいだけど地上支配するとか考えたことないの?」
「ありませんね」
「ええ!? 私の前世の記憶では魔王は地上を支配して人々を苦しめる代名詞だったんだけど」
「それは勝手な妄想ですよ。リリア様も魔王様を見ていたらわかると思いますが、自らより弱いモノに興味がないんです。そう言う意味ではリリア様は前世の記憶があるのでヒューマン族寄りなのだと思います。物騒な言葉は多いですし」
つまりヒューマン族の方が戦争好きって事なのかしら? カイルは小さな溜息を零すと私を見つめた。
「我々、魔族の寿命は長いんです。しかも次も魔族と決まっています。なのに、争って殺し合ってもまた顔を突き合わせるんですよ? だったら互いに嫌なら近寄らない方がいいでしょ。面倒くさいので。それに魔王様が戦争を禁止されておりますので致しません」
「そうなんだ」
「長く生きているとヒューマン族が持つような欲も消えてしまいます。がっつく必要がないですからね」




