魔族の王女 誕生 2
日頃は部屋の外で控えている近衛兵や身の回りの世話をしている従者たちの気配も今は全く感じられない。つまり、周囲には誰もいないということだ。
恐らく城の兵士は王の命令でこの場から去っているのだろう。
そして何が起きているのか分かっていながら『王を寝室で襲った王妃が王の手に掛かった』と言う見え透いた嘘を鵜呑みにするに違いない。
悔しい。
けれど。
背中にバルコニーの手すりが当たり、もう先のないことが分かった。
視線を上に向けると星が瞬く夜空。
下には滔々と王城の横を流れる河。
このまま、死ぬの?
二人に裏切られたまま……全てに見捨てられたまま私、終わるの?
悔しい。
悔しい。
「用心なさい、アレックス王! 私は必ず……貴方たちを滅ぼすわ!!」
そうよ、絶対に。
絶対に滅ぼしてやる。
「覚えておきなさい!!」
悪の化身にでもなんにでもなって……必ず復讐する。
きらめきが振り下ろされ私は痛みと共に身体が空を舞うのを感じた。
この瞬間にリリア・エルドス・エスター王妃はアレックス王暗殺容疑で王の手によって処刑されたってことになるのね。
こんな終わり方……絶対にいや!!
ふざけるんじゃないわよ!!
「絶対にいやぁ!!」
そう叫んで目を覚まして、私はハッと周囲を見回した。
広々とした部屋の中にはベッドがあり、窓にはカーテンが掛かっている。上を見ると魔法球が仄かな明かりを周囲に投げかけている。けれど、あのエルドスの寝室ではない。
どちらかと言うとエスター王国にいた頃の私の部屋に似ている。
豪華ではないけれど形の良いテーブルに椅子。カーテンは茶色で織り込みの花柄が刺繍されていた。
私はベッドから降り立ち、一歩二歩と足を進めて花柄のカーテンをそっと手で避けて窓の向こうを見つめた。
緑のない岩肌の山々に空は青くなく茶色の土と蛇行した幾筋ものマグマが時折り赤い光で地上を照らしながら広がっている。時折サラサラと降る小さな粒は砂でそれが地表を作っていた。
ここは……地下の世界。




