魔族の王女 誕生 1
笑い声が響いた。
「リリアさま、ごめんなさいね。でも、アレックス王は私の方を愛していたって事なの」
つい一分ほど前まで私の側付きだったエリス・ウェールズが歪んだ笑みを浮かべた。
私、リリア・エルドス・エスターと夫であるアレックス・エルドス王の寝室に入ってくるなりそう笑いながら告げた。
まさか王が私を裏切って……エリスと?
信じられない。
信じたくない。
少しうす暗いものの仄かな明かりを灯す魔法球が照らす部屋の中で私はエリスの横に立つ夫のアレックスに救いを求めるように視線を向けた。
確かにエルドス国とエスター国との国と国との婚姻だったけれど、私は懸命に彼に尽くした。
いつでも彼を立てて彼の好むものを用意して、彼のためになるように尽くしてきたつもりだった。
他国との挨拶の時も彼が恥じぬように振る舞いに気を付けてエルドスの王妃として頑張ってきた。
なのに。
なのに。
「うそ、でしょ? アレックス王……」
信じたくない。
嘘だと言って。
そう思って呼びかけた私の声に王が応えたのは剣の切っ先だった。
剣の先端が魔法球の灯りを受けてキラリと光る。
それって、全てエリスの言う通りだったってことなの?
私の心の問いに答えるように残酷な笑みと共にアレックスの唇から更に残酷な言葉が流れた。
「残念だなぁ、リリア。君が俺を裏切って殺そうとするなんて」
アレックスは笑みを浮かべると業と見せつけるようにエリス・ウェールズの細い腰を抱き寄せ私に死刑宣告をした。
「俺の命を……エルドス王の命を狙った王妃はこの手で成敗しないといけないだろ? さようなら、リリア王妃」
これが彼の本心。
私を裏切るどころか、汚名を着せて殺そうとしている彼の心。
だけど。
だけど。
裏切ったのは貴方で殺そうとしているのは貴方じゃない!
そんな女に……そんな女に籠絡されて情けない!!
いいえ、違うわ。
それ以上にそんな男に尽くしてきた私が情けない!
国同士の婚姻とは言え、こんな男の為に今まで懸命に尽くしてきた自分が情けない!!
静寂が広がりアレックスとエリスが一歩踏み出した。
一歩。
二歩。
二人が近付くたびに私は下がるしかなかった。
逃げ道は無く王城の3階から落ちればどうなるか分かる。




