ローマアーナの娘 5
それに王妃が頷いた。
「あのペンダントはエルドスからの友好の贈り物ですわ。エリス王妃が互いの国の安寧の為に側室に入る娘のマリナに贈ってくださいました。歓迎するので安心してくださいと、その証だと……とても美しいペンダントでその日から娘は魅入られるように肌身離さず。安心してエルドスへ向かう準備をしていたいのですが突然倒れてそれからはあのように日に日に弱って」
王妃は涙ながら告げた。
そのペンダントに呪が施されていたのだ。生命力を徐々に奪いやがては死に至らしめる呪いの魔法陣。
エリス……あの女! なんてことを! 思わず拳を握りしめた。
あの日の恨みとあの日の憎しみが甦ってくる。
今の私は正に悪役そのものの顔をしているわね。
でも、不倫をされて挙句に汚名を着せられて殺されたのだからこれくらいの恨みつらみは可愛いモノだと自分は思うわ。
けれど、そもそもあの女が私の側近になったのはアレックスの差し金。つまりアレックスは元々そのつもりだったのかもしれないってことかも知れない。
煮えたぎるマグマのように私の心は沸き立った。けれど、今はあの二人の罠に嵌って死にかけているマリナ姫を救出することが先決ね!
私は不思議そうに見ている王妃と王を前にチラリとカイルを見た。
「カイル、私にできるかしら?」
「もちろん、リリア様なら問題なく」
カイルはにっこり笑みを浮かべて返事をした。
ってことは、それほど強力な壊れにくい魔法陣ではないって事ね。
もっとも強力な魔法陣でも壊せるけれど! よし! ここは一発ってことよね。
足元に浮かぶ魔法陣を破壊する。
私は足を踏み出すと淡く光って見えるそれにダンッと足を踏み下ろした。あまりの勢いに振り向いた王と王妃に私は笑みを浮かべた。
「その贈られたペンダントには呪が施されています」
王は目を見開くと立ち上がって頭を振った。
「そんなバカな! 我が国とエルドスは友好を結んだばかりだ。しかもエリス王妃は我が娘が側室に入り両国間が良き関係になるのを歓迎すると言っていたのに、呪いを施した贈り物をするわけがない」
私もエスターとの友好だということでアレックスの王妃になったけれど、あっさりと殺された。
「しかし真実ですわ。いえ、信じていただかないと王女を助けることはできません」
王は小さく息を吐き出た。
「いや、信じられぬ。そんなことが分かったらこちらが報復に出ることぐらいわかるだろう。なのにそんな真似をするだろうか?」
確かにそうね。でも。
「今のように私が言うまでその呪は見破られなかった。そう考えれば王女は病死し、側室に入るという契約も不履行となればローマアーナは逆らえなくなる」
「もし、王女の命を救いたければ私を信じて魔法を使うことを認めてください」
王は暫く考えたものの、王妃がすがるように「貴方、マリナの命が掛かっているんです! マリナの命が!!」と言うと頷いた。
私は王女の側に行き指先を伸ばしてペンダントを掴むと破壊魔法を使った。回復魔法は覚えなかったけれど破壊魔法は網羅したからね。
「バリスデスロード」
魔法陣に亀裂が入りペンダントが砕けると同時に呪の魔法も消え去った。淀んでいた空気は浄化され、私は王と王妃を見てそれぞれの指輪に祝福の魔法陣が描かれているのに気づいた。それで呪の魔法陣の影響を受けなかったようである。つまり、指輪が無かったら二人も弱り、ローマアーナの王族自体が途絶えていた可能性がある。




