ローマアーナの娘 2
「魔王はどうやって体や魔力を保っているのかしら?」
「周囲の空気や地脈からエネルギーを得ているので食べるという行為は本来ヒューマン族や地上にいるものだけの行動です」
「そうねぇ~、私も暗黒城では時々食事を忘れてしまうわね」
今思い返すと何もかもが違っている。
「でも、食事をするわ! 敵を知り己を知れば百戦危うからずっていうでしょ?」
「本当にするつもりですか? 百戦も」
「百戦はしないわよ」
そう言って町の大通りに面して立っている落ち着いた雰囲気の建物に掛かっている食堂の看板を見ると中へと入って動きを止めた。シーンと静寂が広がり落ち着いたというよりは閑古鳥が鳴いているような食堂である。人っ子一人いない。
例え夜と言えど普通は客の一人や二人、いや、パラパラといるモノである。そのパラパラという人の姿すらないということは答えはある程度限られてくる。
「ものすっごく不味いのかしら」
「……何気に失礼ですよ、リリアさま」
カイルに言われて言葉を飲み込んだものの引き返すべきかどうするべきかと悩んだ。
でも、敵情視察だと思えば……少々不味い味でも我慢できるかもしれないのだ。
しかも他に食堂があるかどうかも分からない。
前世の私もローマアーナには来たことがないから他に食堂があるかわからないのだ。
とにかく食事! そう思って前へ進みテーブルに座った。
そこへ奥から中年の女性が姿を見せて、いらっしゃいませ、の言葉もなく近付いてきた。
なんか、表情も重々しいし……ご飯が不味い前に雰囲気が不味い気がする。
普通はにっこり笑って『いらっしゃいませ!!』よね。
そう思ってチラリと視線を向けると女性は少し視線を動かして唇をキュッと結んで頭を下げた。
「いらっしゃいませ。あの……もしかして旅のお方ですか?」
まぁ、旅人になるのかしら。なるわね。
地上征服を目論む魔王の娘ですけどー、とは言えないけれど旅の途中と言うことは間違いないわ。
「ええ、エスターへ行こうと思っているんです」
私は当たり障りのないようにそう答えた。
彼女は私の手をガッと握りしめた。っていうか、ヒューマン族ってこんなにガッと手を掴んだりする人多かったかしら??
戸惑う私に彼女は言葉を紡いだ。
「旅のお方なら私たちの知らない薬草などしっておられるかも……どうかどうか、お力を貸して下さい!!」
ん?? 薬草って?? 誰か病気でそれで落ち込んで元気がないって事かしら。
「あの、どなたかご病気で?」
「はい! いま、ローマアーナ王の一人娘であられるマリナ王女が原因不明の病に臥せっていて、お命も危ないと……もし医術に詳しければ王女の容態を見ていただきたいのです!」
涙にぬれて訴えられた。
なるほど! だから道にも人が少なくレストランで食事をする人の姿もないのね。王族の一大事は国の一大事ですものね。




