ローマアーナの娘 1
マランからは中央の砂漠地帯を超えて東へ向かいローマアーナを超えて更に東に行くと小国だが緑豊かな国がある。
そこがエスター王国である。
リリア・エルドス・エスターの故郷である。
かつての私の故郷。
私は砂漠を超えて緑に交じってある小さな町々を見下ろして、やがて、見えてきた王城の街に続く道に降り立った。
エスターの手前にある強国であるローマアーナである。
その王城である。
私は街道に降りた私を不思議そうに見ているカイルに笑みを見せた。
「ローマアーナの王城都市で食事をしてからエスターに再出発しましょう」
「食事ですか?」
「そうそう、だって食事しないで出発したでしょ? だからローマアーナ一発砲撃破壊活動の内部偵察よ」
「まだそんなことを……本当はもうやる気がない癖に」
私は軽く肩をすくめて足を踏み出して歩き出したカイルを横目に城下町へと向かった。
夜というのもあって城下町の通りに人の気配はなくどこか薄暗い雰囲気が漂っていた。
通りの両側の家々の灯りは付いているものの酷く静かで活気がないというか。
「夜だからと言っても人っ子一人通りにいないのは気になるわね」
「そうですね」
私とカイルは看板が掛かっている建物を見て食堂を探した。
夕方にマランを出発して砂漠の上空で気付いたのは食事も何もしていないということだった。
地上に来てからマランの王と王子を助けたもののその後にあの騒ぎでそれどころではなかったのだ。
もっとも魔族は本来食事等ものに重きを置いてはいない。食べるという行為をしなくても生きていけるのだ。どちらかと言うと草や木などからエネルギーを供給するというのが言わばヒューマン族で言うところの食事にあたる。
しかも枯れるほどエネルギーを吸い尽くすわけではない。軽くキスをする程度で十二分だからである。ある意味、非常に燃費の良い身体と言える。いよいよとなったら空気でも代替えが利くという食べなくてもノープロブレムなのだ。
「でも食事はしたいわ」
「はぁ……そう言えば暗黒城でも食事はされていましたね」
カイルは反対に食事をしているのを見たことがない。時々、草や木にキスをしているのを見るのでそれでエネルギー補給しているのだろう。リリアの今の父である魔王などは全くその気配すらないのだ。




