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覚醒のオーバーロード  作者: Haru
第二章 時の支配者(クロック・ルーラー)編
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CHAPTERⅡ.見えざる悪意-4

4.


翌日の放課後、部室となった第三理科室に僕たちの他に新たな客人が三人招かれていた。

「あの、ここは。それにえっと、この人達が探偵・・・・・・?」いかにも水泳部らしい日焼けの目立つショートボブの女子がオドオドした表情で訝しむ。

「てか、なんなん?ここ。めっちゃ散らかっててなんか埃っぽい」「わかる〜。それよかその金髪地毛なん?まじ?クソイケメンじゃん。ウケる〜」

つづいてウェーブがかった長い髪をレース地の着いたシュシュでまとめた同じく水泳部の女子と、派手めなメイクを施し、黒をベースに赤いインナーカラーを施したセミロングの髪を指でくるくるといじる、やはり同じく水泳部の小柄な女子が部室の雰囲気やら白彌(しろや)くんの容姿やらに触れつつ各々自由な発言を繰り返していた。

「話は聞いていたけど、まさか三人も被害者がいるなんて。三人とも同じ被害にあっているんですよね。どうしてこれまで話題にならなかったんですか?」

三人が顔を見合せ、派手な二人に促されるように左端に座るオドオドした女子がおそるおそる切り出した。

「あの、私たちそれぞれ事情は今回までお互いに知らなかったんです。えっと、その、やっぱりこんなことを相談して雰囲気を悪くしちゃダメだし······。私たち、夏の大会もあるから、それで······」

「ていうか、ぶっちゃけキモイじゃんよ。下着ドロとかさ〜。」要領を得ない説明に痺れを切らしたのかシュシュの女子がぶっきらぼうに率直な気持ちを語る。それに続くようにセミロングの女子も「それに、なんか怖いっしょ。姿も何も見えない犯人なんてさ。うち、化け物に狙われてんのって思ったし」

それもそうかと僕は溜飲が下がるような思いだった。

他にも知られていないだけで被害にあった人がいるのかもしれない。こんな得体の知れない盗難事件に巻き込まれたのだ。そう易々と相談できるようなものでもないだろう。

少し険悪な雰囲気が漂う。と同時に部室の扉が激しい音を立てて開いた。いっせいに皆の視線が扉へ向かう。

「うおっ、なんだここ使ってるやついたのかよ」そう言って大きなギターケースのようなものを抱える男子生徒が仰け反る。その後ろにも同じようなケースを抱えた生徒が群がる。

「だから言ったろ、ここ新しくできた部が使ってるって」後ろの生徒が先頭に立つ男子をたしなめるように言うと今度は複数の声が責め立てるように続く。

「悪い悪い。・・・・・・て、あれ上郷(かみさと)じゃん。お前ら水泳部だろ。なにやってんの?」上郷とはセミロングの女子のことのようだ。彼女は心底嫌そうな顔をして「はぁ〜?水三沢(みずみさわ)くんでしたっけ?ちょっと今忙しいんで、とりあえず死ね」とあまりにもな言葉を浴びせた。

水三沢(みずみさわ)とはあの先頭に立つ、赤く髪を染めあげた派手めな男子生徒の名前だろうか。水三沢がすかさず反応する。「んだよテメェ。お前が死ね。この狂犬ちゃんと飼い繋いどけよ木守(こもり)

今度はシュシュの女子が適当に手を振って応える。なるほど木守さんと言うらしい。というより、いきなり話に入ったせいでまだろくな自己紹介もできていなかったことに気づく。

その事に向こうも気づいたのか、はたまた言うタイミングを見計らって言いそびれたのかオドオドしていた女子が「あ、私は古畑(ふるはた)古畑矢翔(ふるはたやと)と言います・・・・・・」と消え入りそうな声で会釈しながら名乗る。

水三沢らが部室を出る間際、ふと目線があった、と思えばその目線は僕の更に奥を睨めつけているようだった。何気なく後ろを振り返ると白彌くんもまた彼を見ているようだった。

何かを感じたのかな。そう思ったが、上郷さんが天井を仰ぎながらあ〜ムカつくと大きな声で言うので何となく聞きそびれてしまった。

その日は結局彼女たち、と言うより主に上郷さんの愚痴に終始しそのまま解散となった。


「結局何も分かんなかったなー」

そう立木くんがぼやくと「そうか?」と白彌くんが返す。

「だってほとんど愚痴だったし、肝心の事件のことは何も聞けなかったじゃないか」

「そりゃ何せ下着泥棒なんだしさ。男子のあんたたち相手じゃ言いにくいでしょうよ」とまだ部室に居座っていた笹木先輩がどこから持ってきたかスナック菓子をほおばりながら至極真っ当なことを言ってきた。もちろん宮嶋先輩もそこに加わっていた。暇なのだろうか、この人たち。

「だが少なくともあの三人は何らかの関係性がある事は確かだろう。ただの部活仲間という訳でも無さそうだしな。それにあのチェロの男、水三沢だったか。あいつも何かあるかもしれない」

「チェロ?」よく分からず思わず聞き返してしまった。聞き覚えはある言葉だ。

「あぁ、あの背負ってたやつ、チェロか。てことは彼らも吹部の?」立木くんが得心がいったように手を打つ。背負っていたものと言えばあのギターケースのようなものか。どうやらギターではなくチェロというらしい。楽器には疎かった。

「おおかたここをパート練習に使っていたんだろうな。あの三人・・・・・・特に上郷と親しいようだった」

親しい・・・・・・のだろうか、あれは。どちらかと言えば犬猿の仲と言うやつではないだろうか、と思ったがある意味でそれも親しいと言えるかもしれなかった。白彌くんはあのわずかな時間で色々と思考を巡らせていた。

「あっ、見てよほら。ここからプールよく見えるよ。さっきの三人も参加してるみたい」

ベランダに出た立木くんが僕たちを呼びつけた。窓付近に散乱していた備品はあらかじめ片したおかげでベランダに続く大窓を解放できるようになっていた。僕と白彌くんはベランダに出て立木くんが指さす方へ顔を向けた。

たしかに、ここからプールの様子が一望できる。双眼鏡でもあれば細部まで分かりそうだ。

「おいこら思春期ども。かわいい女子の水着姿に見とれてんじゃねぇわよ」背後から笹木先輩のわずかにドスの効いた声が僕たちをざわつかせた。すかさず弁明のため振り返る、と「!?」

「こっちにはナイスバディなお姉さま、ミヤコ様がいるんだぞォ!」「ひゃあっ!?」笹木先輩が宮嶋先輩の胸を揉みしだく。あまり気にしないようにしてはいたが、宮嶋先輩はまあ、大きかった。いやかなり大きかった。

「見るなぁっ!あと揉むなぁ!?」

宮嶋先輩の渾身のビンタが脳天を揺らした。何故か僕だけが。これは理不尽というものでは?そんなことを思いながら天井を見上げた。

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