第十六話「決意」
こんにちは、オロボ46です。
前回は女盗賊と別れたところですね。
それでは、どうぞ。
カズヒロくんは自分の過去をヤヨイちゃんに語った。
私は、ただ洞穴の中でそれを聞いていただけだった。
僕は盗賊団のリーダーの息子として生まれた。
僕の父さんは狩りが上手く、外の世界や街の中の事情まで熟知していて、
その上仲間思いだった。
父さんの部下たちからの信頼も厚く、
その息子である僕も誇り高かった。
だけど、僕の中には父さんへの尊敬とは違う感情があった。
僕と父さんの差で生まれた、嫉妬心だった。
僕は弓の腕がさっぱりで、一人の狩りはいつも失敗に終わっていた。
それだけならいい......僕は大事な大物を狩るときにみんなの足を引っ張った。
おかげで獲物に逃げられるどころか、たくさんの負傷者を出してしまった。
父さんは僕を庇ってくれたけど、それから僕を見るみんなの目が冷たくなった。
やがて......僕は仲間から距離を置くようになった。
誰もが僕を見て父さんと比べるようになったからだ。
僕は......父さんと違って役立たずと言われるのが怖かったんだ。
ある日、僕は父さんと二人だけで食事をした。
父さんは僕の作った料理をすごく褒めてくれた。
そして......食べ終わった後にこう言ったんだ。
「お前は狩りが出来ないが......狩りがすべてじゃない。
お前は料理が得意だし、俺の教えた知識を余すことなく覚えている。
狩りに拘らず......自分らしさを生かすんだ」
父さんは僕を励ましてくれた。
だけど......僕はそれを受け入れようとしなかった。
その時の僕は尊敬の気持ちよりも嫉妬心が強かった。
「......結局は僕は狩りが出来ないって言いたいんだろう?」
僕は父さんを睨んで言った。
「い......いや、そんなことはないが......」
父さんは慌てて否定した。
「どうせ僕はみんなをまとめることが出来ないんだ......」
「そんなことはない! お前が頑張ればいつかはみんなも認めてくれる......」
「綺麗事を並べるのもいい加減にしろ!!」
僕は父さんと口喧嘩になった。
今思えば......明らかに父さんの言っていることが正しくて、
僕はただ言い訳を並べただけだった。
あの時の僕はそんなことも思っていなかった。
口喧嘩が続くに連れ、僕の父さんに対する尊敬の気持ちも消えて行き......
嫉妬心は恐ろしいものに変わっていった......
それは殺意だった......
僕は遂にナイフを手に、衝動的な感情に身を任せて刺した。
そのナイフは父さんの喉元に刺さった。
父さんは白目を向き、何も言わずに倒れた。
僕は、ようやく自分のしていることが間違っていることに気がついた。
僕は父さんの体を揺さぶった。でも、いくら揺さぶっても目を覚ます筈がなかった。
怖くなった僕は走り出した。
仲間からどんな目で見られるかよりも、
自分の手で父さんを殺してしまった事への罪悪感からだった。
「それで......あの時一人だったんだね......」
ヤヨイちゃんはカズヒロくんの話を聞いていた。
「あの時の僕は一人で生き抜こうと誓ったころだった。
だけど、狩りの下手な僕がいきなり上手くなるはずがなかった......」
カズヒロくんが肩を下ろして言った。
僕が初めて二人に会った時、僕は二人に同行することを決めていた。
都合がよかった......それが言い訳だった。
本当は誰かと一緒にいたかった。その寂しさを紛れさすためだった......
研究者と共にクサリクイクマを捕まえた時、
僕は二人を追い返したことがあっただろ......?
その前日からあいつの様子がおかしかったんだ......
僕は研究者から何か聞いたのかと思って、その研究者に聞いてみた。
そして......お前の過去を知った......
僕とは違う......苦労をしていたんだって思った......
「カズヒロくんも......聞いちゃったんだ......」
「すまなかった......」
カズヒロくんはヤヨイちゃんに謝った。
「ううん......大丈夫だよ......」
ヤヨイちゃんは首を横に降った。
今日、あの女盗賊とあった時......僕は父さんのことを思い出した。
僕は彼女に会いたかった。弟子にしてもらおうなんて考えていない。
彼女のそばであの時の僕を見つめたかった。
そして......自分らしさを見つけたいんだ。
「だけど、彼女は南に向かって行った。
今追いかけないともう二度と会えなくなるような気がする......
でも、洞穴の外に出ても......どうしても振り替えってしまうんだ......」
カズヒロくんがそう言った時だった。
「サクサクー!!」
洞穴の中でユキちゃんが叫びながら外へ飛び出した。
私は慌てて後を追いかけた。
ユキちゃんはカズヒロくんの肩に飛び乗った。
「サナエちゃん......!?」
ヤヨイちゃんは私を見て驚いていた。
「聞いていたのか......?」
私はこっくりと頷いた。
ユキちゃんはカズヒロくんの肩から離れようとしなかった。
「てっきり二人のうちどちらかと仲がいいと思っていたが......」
カズヒロくんはユキちゃんを見て言った。
「きっと、カズヒロくんの料理が忘れられないんだよ!」
「そうか......なら......二人に頼みがある。
僕がこいつを連れて南へ行くのを許してくれ......」
カズヒロくんは私とヤヨイちゃんを見て言った。
ヤヨイちゃんは私の顔を見た。
私は賛成だということを笑顔で伝えようとした。
「うん......わかった......」
「ありがとう......それと、もう一つ......手を触らせていいか......?」
ヤヨイちゃんは頷いて、手袋を脱いだ。
「本当に......ウォームスの温もりは暖かいな......」
カズヒロくんはヤヨイちゃんの手を握って言った。
「カズヒロくん、あの時は下手くそって言ってごめんね」
私はカズヒロくんに謝った。
「大丈夫さ......それじゃあ、行ってくる」
カズヒロくんはユキちゃんを連れて南に向かって歩き始めた。
途中で私たちを見て言った。
「じゃあな......ヤヨイ......サナエ......」
いかがでしたか?
少し早いですが、次回で最終回です。
次回もお楽しみに!




