5話 アラハバキの戦い 外交編
アザマロの伊治城の居心地がよくなってきたのでニートのおれはしばらくここにいようと思っていた。
往来家を滅多に出ないので一度住み着くとそこを離れたくない性分なのである。
しかし、アテルイとモレは胆沢にオレも連れて行くと申すではないか。
おっとおれまで歴史的口調がうつってしまっておる。
胆沢って距離感がわからないけど古川市から奥州市まで歩いていくってけっこう時間がかかるよ。
嫌だな。という率直な感想である。
しかし東洋一の兵法者として抱えられている身。いつこの怪しい身分がばれるとも限らない。
仕方ないから着いていくことにしたけど、どうも北上川沿いに船を馬で引いて帰れるらしい。
本当は馬で一直線に北上した方が早いのだけれどおれに気を使ってくれたみたい。
馬は馬でも馬行しか乗れないからね。ガソリンも半分切ってるし…
「まずはひたかみ川まで行くとするか、ひたかみ川の東側は桃生の柵じゃ。わしの知り合いが大勢いるので一泊していくといい。船も用意する」
ウクハウが言う「ひたかみ川」とは現在の「北上川」の事だろう。
漢字がよくわからないけど日高見川かな。まぁどうでもいいや。
桃生城は朝廷が蝦夷、ひたかみ側東側は中国の狄にちなんで東狄と呼ばれているらしい。
なるほど、狄→敵になるのかと思った。
この時代は本当に中国の文化を色濃く受けている。
その一つとして法律ができてその力をつかって蝦夷も統括しようとしているらしい。
大宝律令かな、歴史で習ったけど忘れてしまった…
桃生の地でウクハウの知人を頼ってそのまま船で北上する事にした。
とはいえ歩きは車社会に慣れた自分には応える…
これから胆沢を中心とした岩手の蝦夷達を終結させるわけだが、その前にアザマロに一つ策を預けた。
桃生は既に反乱の火種がくすぶっているので大丈夫だろう。
伊治はアザマロが完全に掌握しているので情報が漏れるのだけを気を付けてほしい。
そしておれの出生地牡鹿
牡鹿は朝廷の官僚である道嶋氏の管轄なだけにこちらに寝返るのはなかなか難しいかもしれない。
しかし牡鹿は「ひたかみ川」河口という軍事上重要な拠点である。
なんとか牡鹿の蝦夷にも決起して伊治と牡鹿の二面から多賀城を攻撃したいと思っていた。
牡鹿の蝦夷に一人だけつてがある猪手へ探りを入れて朝廷への決起が可能かどうか、たとえゲリラ戦でもいいから一緒に戦ってもらえるよう工作を頼んだ。
できれば朝廷が混乱している今、一月か二月以内に反乱を起こせればと思ったが準備期間が少ない気もしたが、それは相手も同じ。
今蝦夷などにかまっている暇は無いはずなのである。光仁天皇の跡取問題で政治的にも対立が激化している今がチャンスなのだ。
「それじゃあまずは桃生へ私が案内しよう」
ウクハウは顔が割れてるからちょっと嫌だったが毛皮を巧みに使って猟師に変装していた。
もともと族長というよりは山賊の様な風体なのでますます山賊のようだ。
「ちょっと山賊みたいですよ」
思わず声に出てしまった。
「あら、その毛皮私もつけようかな。女だからっていつも相手にされないけどこれなら…」
モレがちょっと本気かふざけてなのかわからないが変装しだした。
毛皮のチョッキに顎鬚のようなものをつけて男装をするとどこからどう見ても男だ。美形の。
もしかしてこれが後世モレが男ってことで残る原因なんじゃないかとふと思った。




