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4話 アテルイとモレちゃん(6)

「すごく単純な質問があるんだけど」

どうしても気になって帰りがけにアテルイとモレちゃんに聞いた。


「なんで自国を危険に犯してまで朝廷と戦おうと思ったの?」


阿弖流為は空を見上げた後、伊治の地から眺められる奥羽山脈や北上川を一通り眺めた後におれに言った。


「アラハバキの民は土や水や木、空を守るために戦う」

「朝廷軍はこの地の人や根や草、木全てを奪うつもりなんじゃないか。いづれ戦うならモレの言うとおり今しかないだろう」


もちろん勢力拡大とかの野望のためじゃないのはわかっていたけど、俺には深い意味がよくわからない。


「家族とか住む土地とかのためってことですか?」

何故か相当年上なのに敬語になってしまった。


「そうだな。人と暮らしていく為だけの土や木、作物や水、この土地の自然を守りたいだけだ」


千三百年後の汚れた時代から来たおれはなんとも言えなかった。

自然、大事だよなぁ。


お金とか地位とか名誉とか、そういうものの為じゃない戦いってうまくいくのかなとちょっと疑問に思った。


「心配しなくても朝廷群を追い払えば兵糧も武具もたんまり奪う事はできる」

モレちゃんがおれの心の中を見透かしたように言った。


「モレ殿はアテルイ殿と付き合ってるのでしょうか?」

最後にこれだけは聞いておきたかった。ちなみにこの目の前にいるモレはどう見ても女なのでBLではない。


「アテルイにはカナがいますからね」

モレが初めて笑いながら言った。


「カナとは何もない、余計な事を申すでない」

アテルイが怒ったように言っているが顔は満更でもない様子である。


ていうかカナって誰?

「カナは私の妹よ」

モレが言う。


このモレっちゅう女は人の心が読めるのかオレの思っている事をずばずば当ててくる。

おそろしい女モレ。ついでにカナって随分現代的な名前だなと思った。


そういえば

「モレちゃんも闘うんですかね?」


「私は女だからわからない、これまで女が戦場で戦った前例なんてないもの。力じゃかなわないしね」


「力じゃなく頭なら十分対等以上に戦えますよ。これからの時代、っていうか今より前の時代もそうですけど智略が無ければ絶対に勝てないじゃないですか」


先程の話では、モレは出羽国から流れてきた孫子の兵法書も読んでいると見た。かなりの軍事オタク。この軍事オタクが前面に出てこなければ負ける。

というか出てきたけど史実では最後負けた?


「後方で策を考えるだけでもいいから戦の時には是非力を貸してくださいね」

と、一応念を押しておいた。

「私もモレは一緒に戦うべきだと思う。心配ない、万が一の時は私が守るさ」

アテルイの心強い一言。かっこいい。


自分で兵法者と名乗っておきながら実に自信のない男。それが自分。

ニートだったんだから仕方ないさと自分で自分を慰めるのであった。

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