4話 アテルイとモレちゃん(5)
「今しかないのかもしれませんね」
モレが言った。
「今朝廷ではそろそろ光仁天皇の次の天皇について争いが起きています」
光仁天皇の次はおそらく他戸親王になると誰もが予想していたようだったが藤原百川の策謀によって母親諸とも失脚させられたそうである。
そこで次に台頭してきたのが山部親王という百済系の母をもつ子供らしい。
山部親王はなかなかの切れ者であるらしく、今の光仁天皇のような穏健政策は取らず蝦夷の金を狙ってさらに侵略してくる可能性もあるそうだ。
蝦夷の金は元々陸奥を管轄としていた百済王家の百済王俊哲のじいさんがみつけたらしい。
百済系の血筋を持つ山部親王や当の本人百済王俊哲は金の力で権力を盛り返したいと狙っているはずである。
いつの世の中も金なんだなと思いながら、そういえばおれは無職で親の脛をかじって実家暮らしをしているから金にそんなに執着心が無い事を思い出した。
きっと蝦夷の元々の民族も金なんかどうでもいいんだろうなと思った。
もちろん装飾や武具の製造もしているらしいから鉄なんかも作っているらしい。
でもそれは決して今の朝廷のように内部の権力争いや勢力拡大を狙ったものではなく、朝廷の管理や外敵から守るための最低限のやり方しかしていない。
モレの話に皆納得したようで、早速岩手県内の族長達に説明してくることまで決まった。
おそらく史実通りだとすればこの後蝦夷は団結して長い戦いの時代に入るはずだ。
「みんな覚悟は大丈夫なのかな」
おれはちょっと心配だし弱気になって聞いた。
ウクハウは大丈夫も何ももう反乱を起こしているから心配ないとの事。
アテルイとモレはそろそろ胆沢まで朝廷の管理が及ぶのではと話していたらしい。
属国化されて金の採取に奴隷のように扱われるのはまっぴら御免との事である。
アザマロは最初から反乱を考えていたようで気を伺っていたようである。
長年朝廷に仕えてきたが、やはり蝦夷は蝦夷として自立していくべきとの考えだそうだ。
少なくともここに集まった皆の意思は統一できたので安心した。
しかし実際に戦となると一番覚悟ができてないのは当然おれだった…
あーこわいなぁ。




