4話 アテルイとモレちゃん
そうこうしている間に数日が過ぎた。
ホームシックかなと思ったがよくよく考えるとやはり現代に特に未練が無かった事に気づいたのだ。
所詮ニートで就活すらしていない現世に戻ったとしても生きづらさに変わりは無い。
かわいい女の子や芸能人がいたとしても自分には到底関係のない世界だったのに気づいたのだ。
未練があるとすればパソコンでエッチな動画が見れないことくらいか。
スマホのバッテリーも残り30%を切っているので電源を切っている。
この時代の自然しかない空間に身を置くと自分の性欲なんてちっぽけな物だと開き直ってしまう。
というより性欲より食欲が勝る。
幸いこの時代にも米はあるのだがおいしい物が食べたい。
まぁそれもアザマロに言わせれば
肉、魚、米が手に入る伊治以北は食に恵まれている地域とのことである。
そんな自然と戯れる生活を送っていると胆沢からの使者が到着したとの事である。
アテルイついに来たか!
アザマロとウクハウに呼ばれて伊治城の屋敷へとまた出向いた。
この間おれは一応アザマロとウクハウに兵法を多少教えていた。
戦と言えば剣と弓を持って突撃するのがどうもこの時代の戦い方であるようで
おれの三流策士の生兵法でも新鮮に感じられたようだ。
中でもハンニバルの得意とした少数による包囲戦術に興味があったようで、実際に戦で試してみたいとの事であったがおれは戦が怖いので前線へは出たくなかった。
命のやり取りはなるべくしたくない。
横山三国志の諸葛孔明のように押し車に乗って高所から見物していたいのが本音である。
さて、アザマロの屋敷に入ると中にはアテルイと思われる人物が待っていた。
想像していた通りというか、千三百年後の後世にも東北のカリスマとして伝えられる通り背の高い、といってもおれと同じくらいだが、顔もウクハウなんかと作りが違うイケメン的な感じである。
髪の毛がちょっと茶色がかっているのが現代人っぽいなと思った。異国の血も入っているのだろうか。
そういえばおれの名前をまだ紹介していない。
おれは牡鹿出身という事で苗字の水木から「牡鹿水木」を名乗る事にした。かっこいい。
この時代の名前は自然や動物から取るのがけっこう一般的らしい。今まで出会ってきたのは変な名前ばっかりだったけど…
「あなたが私を使わせたミズキ殿ですか?」
アテルイがさも不思議な口調で言う。そりゃそうである、まだ歴史に登場する前にちょっと早くスカウトしてしまったのだから。
「阿弖流為殿はこれからの蝦夷、アラハバキの民を背負っていく人です。是非我々に協力してください」
そう言って何気なくアテルイ一行を見たら隣に座っているカワイイ女の子が目に入った。
なんと、この時代にきて初めてかわいげな子を発見。ちょっと化粧が無いせいか太眉だが最近はふと眉系女子も流行りはじめたのでOKである。
「こちらの方は?」
「これは黒石のモレにござりまする」
「!?」
なんと、黒石のモレ女なり!!




