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【1−9】 「これじゃあ、私の胃が持ちません!!」

「ねえねえ、魔法使いってどんな魔法使えるの??」


使ったのは一回だけだよ。それも「どんな病も治す魔法」とかいう、聞くからに胡散臭そうな名前の魔法をね。実際にそれで治った人が今、私の横を歩いているわけだけど。


「魔法使いだからさ、何か道具を使うの?」


生憎、私の手元には通学用カバンしかない。君の目は節穴か? 


「僕の家に置いてある絵本にさ、魔法使いの主食は毒って書いてあったんだ。だから今、花壇から毒草を取ってきたんだけど」


ちょっと、その絵本をここに持ってこい。私がビリッビリに引き裂いてあげるから。

それに、だからって何? 脈絡が支離滅裂だし、なんで学校の花壇に毒草が生えてるんだよ。


「俺、魔法使いは *自主規制(ピー) するのが得意って聞いた!」


誰がそんなホラ話をイケメン殿方に吹き込んだかは知らないけど、今度その人にお歳暮送ります。でも、お歳暮って概念ある? 異世界って。




とまあ、こんな感じで? 質問攻めで、当の私は心の中でツッコむだけで、口からは「あ…あア……グ……ゴフッ……」と、今にも何かを吐き出しそうな擬音語を発しているだけ。




「どうだ? 愉快な奴らばっかりで面白いだろう?」




うん、そうだね。見てわかるよ。

この人には、全く悪意がないってことを。

でもさぁぁ……!!



「それで? さっきのセドリックが言ってた『花嫁』ってどういうことだ?」



ほらほら、ほらね!! 絶対聞かれると思ってたよ!!

そして、本人はニコニコと私を見ている。


彼が第一王子じゃなかったら、ここらで一発正拳突きを食らわしてるところだよ。

まあ、私にはそんな度胸も力もないけど。(←初日に頭突きをした女)


というか今の会話の流れから察するに、セドリックが「花嫁さ!!」宣言したことよりも、私が魔法使いだったことの方が重要なのか。

この人たちが思う内容の価値観って……。



「どうも何も、サクラは俺の花嫁になるんだ」



グイッと肩を掴まれ、私の頭にスリッと頬ずりをする。


いやいやいやいやいや!!

近い近いって!! 

そんな高貴なお顔を私に近づけたら貴方様のお顔が穢れる上、私にはオプション料金が発生するので、マジでご勘弁を!!

でも離れてとも言えない!

だっていい匂いするんだもん!!


そんなツッコミしてる場合じゃないっての!! この空気を堪能するのはまた後!

もう、なんでこうなるの!?

セドリックが話すと余計誤解される。

なら、ここは私が弁解の機会を設けるしかないでしょ!!



「み、『未来の』です!!」



大きな声を出すのは失敗したが、この場にいる人たちには聞こえたみたい。

ほっ、良かった。吐瀉物じゃなくちゃんとした言葉が出て。



「そ、そもそも、わ、私とセ……セドリック様は、許嫁ですらありません」



こ……これで正解だったのか?


「許嫁じゃないってことは……え、つまりどゆこと?」

「大方、雇われてる使用人とか?」

「いや、でも……」


とザワザワと聞こえるものがまた変な方向に行きそう……。

ど、どうしよう……。



「ごめんね、みんな。誤解するようなこと言って。そうだよ。正確には俺とサクラは許嫁ではない。でも、俺はサクラに惚れてるんだ」



そしてまた「えええー!!??」という声が建物内に響く。学校の中なんだから静かにしてほしい。

それにこの人たちは、ちゃんとしたリアクションしないと死ぬ病気でも患ってるのか?



ああ……なんか先が思いやられる。やっぱり、静かにひっそりと過ごすことはできないよねぇ。

わかってたけど、私はどっちかというと、遊園地とかテーマパークみたいなところよりも、深夜誰もいない時間帯に近所の公園で夜風に当たりたい人間だからさ。



他人の言葉一つ、決心の一つしたところで、長年積み上げたものなど簡単に変わりはしない。

コミュ障とかは特にね。



私は知っている。人と関わっても、何の良いことも無いのだと。




『そんなの、気持ち悪いよ!』




なんで……こんな時になって思い出すんだろう。

頭を横に振って、あ(・)の(・)時(・)の(・)光(・)景(・)を振り払う。


やめやめ! 今は異世界! 夢が叶ったんだよ? 前世のことなんてもう良いの!

いや、良くはないけど、セドリックが言ったように、私は私自身を変えるために今この場にいるんだ。


会話をするのも、言葉すら出すのも一苦労。だけど、それが大事。だからセドリックも、自分が言ったことを正さずに、私に持ちかけているのだ。


なんて……一瞬思ったけど、思っただけ。


こんな純粋無垢な顔から、そんな気遣いができる人じゃないなと、改めて認識した。




「サクラ……ね。覚えたわ」




……な、なんか後ろから視線を感じる。

気のせいかな……でも私の危険察知能力はピカイチよ?

この背中に感じるゾワッと悪寒に似た感覚は、これからなにか起こる前触れだ。絶対に。

一年以上引きこもっている間に培った力を舐めてもらっちゃあ困るね。



ハア……こんな人たちに囲まれながら学校生活するのか。

前世の学校よりもヤバい感じがする。そんなの、もはや死刑宣告も同然。



私は今日、生きてここから出られるのだろうか……。


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