【1−7】 「一つの決意」
はい、どうも。自他共に認める二次元オタク、桃原さくらです。
今日は、セドリックが通っている学校に私も行くことになりました。
いや、なぜ??
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って、回想シーンに入ろうとしたけど、先日セドリックが「サクラも俺が行っている学校に行こうよ!!」と急に言い出したと思ったら、ちゃっかり制服は用意してあるし、編入手続きは終わってるしで、断るタイミングを完全に失ったんだよねぇ……。私の本気を見せる機会は何処へ。
今日から早速登校します。
待てよ? ずっと引きこもりだった私に今から順風満帆な学校生活を送れなんて、普通に考えて無理じゃないか??
「じゃあ、行……」
「あ、あの!!」
流れで玄関まで来てしまったけど、今なら間に合う。
でも、言って良いのか、本当に? 口が上手く動かない。
私は何に怖がっている?
「どうしたの?」
まだ会って数日だけど、セドリックの奇行には毎回驚かされるけど。
私は、彼に嫌われていないことはわかっている。
学校に行くのが怖いんじゃない。行ってうまくできるかが不安なんじゃない。
そんな私を見たセドリックに幻滅されるんじゃないかって……そうやって、嫌われるのが嫌なんだ。
「その……私は今までずっと表に出ることが苦手で……波風立てずにひっそりと、誰に見つかることもなく生きてきました。学校とかも、私には眩しすぎて……だから」
引きこもりになったのも、親からも見放されたのも、自分の勝手。
それが私。そう、仕方がなかったんだ。でも……嫌われるなら今ここで言えばいい。
「私は、学校には行けません」
本当に私は意気地なしで、こんな場面でも自分のことしか考えられない。
それを「自分の性格だから仕方ない」で片付ける私はもっと最低で。
私ってなんでこんなんなんだろう。
こんな人間、誰からも好かれなくて当然だ。
「ごめん」
予想だにしていない返事が返ってきて思わず目を見開く。
待って、そんな俯いてしゅんとした顔されたら全人類の女が堕ちますよ?
セドリックにはもう少し自分の市場価値を理解してほしいものだ。
って言いたいのに。
なんでセドリックがそんな顔をするの?
「俺、サクラのこと何にも知らないからさ。今までどうだったとか、そういうのも含めて。自分勝手だったよね」
「い、いえ! それはこちらもというか……」
そんな申し訳なさそうに言われると、こっちも申し訳なくなる。まあ実際こんなことを言ってしまった自分はもう申し訳なさでいっぱいでありますが。
「俺、母上を亡くしてからずっと落ち込んでて、今も引きずっているけど、学校に通って人と関わったらね、ずっと空いていた心の穴が塞がっていったんだ」
あ……国王陛下が言ってた……セドリックは早くにお母さんを亡くして、ずっと寂しい思いをしてきたって。
それを埋めてくれたのが、セドリックの学友様たちなんだ。
「俺はそうやって変わった。サクラ、最初に言ってたよね? 自分は今まで社会のはみ出しもので、人間としては下の下だったって。もしさ、それを変える可能性がたとえ1%であったとしても、君は自分を変えたくないの?」
スッと手を伸ばされる。
これを取るか取らないかは、私次第。選択肢はたったの二つ。
もし、神様が私を異世界に転生させてくれたのだとしたら、オタクに対するご褒美ではなく、他に何か意味があるはずなんだ。
社会不適合者のまま死んだ私。折角転生したこの世界でもそうやって生きていくの? 何も得ないまま、また人生を終えるの?
そんなの、絶対に嫌だ!!
グチャグチャだった心がまとまり、一つの決意へと形を変えていく。
私はセドリックの手を強く握った。
「……い」
「ん?」
「私は!!」
もう、後戻りなんてできない。
そんなの、彼との勝負……いや、この世界に来た時から、覚悟の上なんだ。
「私は、私を変えたい!!」
だだっ広いこの王宮という場でやまびこのように、私の声が響き渡る。
セドリックの口元が上がり、待ってましたと言わんばかりに満面の笑みを浮かべ、ガチャリとドアを開けた。
差し込んだ眩い光が、今世の始まりを告げる。
「よく言えました」
手を引かれ、私は外の世界へと足を踏み入れた。
不安と恐怖と……ちょっとしたワクワク感。
二次元じゃない現実という世界で、私は失いかけていた感情を取り戻した。
前世の二の舞なんてごめんだ。
自分を変える。そう、これは異世界に転生した自分のため。
夢小説みたく、幸せ展開に持っていくための材料。
そのためなら、手段なんか選んでいられない。
自分勝手なのが私の性格だと言うのなら、今世も自分勝手に生き抜いてやろうじゃないか。




