【1−6】 「第一王子はとても危うい」
ここの生活も、この第一王子も危険因子に他ならない。
「サ、サクラ……?」
美男の花園。目の前に広がる楽園。
筋骨隆々の男達が並ぶそこは、まさに女の桃源郷。
水も滴る良い男というのを初めて目にしたこの瞬間。
イケメン王子と貴族の濡れ髪は、最&高を通り越してもはや死。
────ここは天国か?
しかし、そんな夢も瞬く間に終焉。
視線を下にやれば、当の私は布一枚であるのだから。
「し、失礼しましたー!!」
勢いよく閉めたドアから、ビキッと明らかにどこか壊れたような音がしたが、そんなの今はどうだっていい。
昨日は、偶々一人だったから迂闊だった。
ていうか、家来から風呂場がここって聞いたからきただけで、混浴なんて聞いてないんですけど!?
……と、とりあえず服を着て、頭を冷やそう。そして、忘れよう。さっき見たエデンの園は自身の幻覚であると。
いや、待てよ。あんな美味しい展開があるからこその異世界。
こんな機会もう二度と無いかもしれない。
どうせなら、もっと目に焼き付けておけば良かった。
惜しいことし……。
「サクラちゃん」
「どわあああー!!」
更衣室の外の入口に置いてある椅子に座っていたら、背後から声をかけられる。
さっきのこともあって、心臓がとまりかけた。
「ちょ……急に話しかけられるとびっくり……」
そうびっくりした。
振り返り、最初に目に入ったのは美しく六つに割れた腹筋。
常時服で覆われたそこはもちろん日焼けなどなく、腰に巻いているタオルと同化するほどの白さ。
目線を段々上にやれば胸筋と、程よい筋肉がついた二の腕、浮き出た鎖骨、そして毛先からポタポタと水を垂らしている、なんともイイ男。
「な……なんて格好で出てきてるんですか!!」
タオル一枚だけ巻いたセドリックが立っており、私は咄嗟に両手で顔を覆う。
そ、そりゃあさっきちゃんと見れば良かった……とか思ってたよ!?
けどこれは違うでしょ!!
「ん? ああ、でもほら、ちゃんと腰には巻いてるよ?」
「服着てください!! 破廉恥です!!」
お……男の人の体なんて私には刺激が強すぎる。
二次元ではね、あるよ。晩ごはんの時とか、それを流しながら白飯食べてたぐらい、私にとっていいオカズ。
けど、現実は目に毒過ぎる!!
「珍しいことじゃないだろ。ああ、そうか。君、処女だっけ?」
「それは忘れてください!!」
ニマニマと確信犯の笑み。
なんで覚えてるのよ、もぉ……あの時の自分をぶん殴ってやりたい。
「ね、でもさ。半年後過ぎたら毎日飽きるぐらい見ると思うよ?」
椅子に座っている私が逃げられないよう、前に来て壁に手をつく。
上には顔、真ん中には腹筋、下には太ももとふくらはぎ。
「今のうちに慣れておかないとね」
後ろに下がろうとも、壁と一心同体だし、もはや逃げ道はない。
め、目のやり場が……だ、誰か……。
「セドー。服着ないと風引くぞー。病み上がりは大人しくしてろ」
「うん、そうだね」
誰かの声が中からしたと同時に壁から手を離し、更衣室のドアを開ける。
「じゃ、おやすみ。また明日」
ヒラヒラと手を振り、その言葉を最後に中に入っていった。
そこからはあまり記憶がない。
気づけば、風呂に入っていて寝間着姿で、用意された自室にいたのだから。
風呂から上がって大分経っていると思うのに、まだのぼせてる気がする。
『ね、でもさ。半年後過ぎたら毎日飽きるぐらい見ると思うよ?』
つ、つまり、それって、そういう……。
顔が一気に熱くなり、枕を顔に押し当て「あああああ!!」と渾身の叫びを一つ。
夢小説とは違う。
これは現実よ、現実。そう現実なの。
何が、第一王子よ。何が私を堕とすよ。
今まで、寝たきりだった人が、目覚めたら万年盛り王子とか、誰が想像する?
眠れる美女もびっくりだっての。
「恥ずかし……」
この調子じゃあ、負けてしまう。
────明日こそよ。
見せてやろうじゃない。さくら流の本気ってやつを。
私だって毎度毎度、振り回されるような軽い女じゃないんだからー!!
やっぱり、イケメンの風呂シーンっていいですよね(^q^)




