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【1−3】 「第一王子のお目覚め……のはずだったのにー!」

はい、早速私は大失態を犯しました。

後悔の時間、そして賢者タイム。

今の私の顔を傍から見れば、「死んだ魚の目」言われること間違いなし。

それも、安らかに眠っている第一王子の目の前で。


まず順を追って話そうじゃないか。


国王によろしくと頼まれた私は、まず王子を寝かしつけてから図書館に行こうと思ったのだ。

その趣旨を使いの人に伝えたら、何を思ったかはわからないが、そそくさと部屋を出ていった。


ここでの問題が、私には何を話すべきか全然わからなかったことだ。


相手は初対面の人で第一王子。そして私の主(仮と言いたいところだが、確実にそうなるんだろうな)。


何を話そう……。

私は子どもの(大人の)あやし方なんて心得ていない。一人っ子JKなもんでね。

内容は何でも良いって、それが一番難しいんだよ。

何かないかと、頭をフル回転させた。


そして何を血迷ったのか、私は今までの自分の黒歴史を暴露してしまったのだ。


ランダムグッズでルイ様(推し)を引き当てた時、奇声を上げて隣人から事件だと思われ警察沙汰になったこととか、手書きでルイ様(推し)と私の、あんなことやこんなことをしている夢小説を授業中に書いて、教室でぶちまけたこととか(今思えば、これが不登校の原因かもしれない)、そしてその旅路の末「コミュ障」「無一文」「引きこもり」という人格を完成させたこととか。


シンッと静まり返った部屋で、思いっきり椅子の背もたれに身体を預ける。


ああ、クッソ。アニ◯イト行きてぇ。


って、絶対今言う台詞じゃない。

でも現実逃避したい時こそ行きたくならない? え? もしかして私だけ?


……とまあ、こんな感じで墓穴を掘り、虚無感に襲われているわけだが。

この王子もいつのまにか、ぐっすり寝てるし……大丈夫そう?

国王にはここにいてくれと言われたが、仕事はさっさと終わらせたい主義。図書館に行きますか。



ああ、古傷が痛い……。



❀     ❀     ❀



入口に立っていた使いの人に案内を頼み、数分歩いた所に図書館はあった。

扉を開けたはいいものの、掃除しているのか? というより誰も利用していないのかってぐらいホコリが積もっており、あまり長居したくない場所であった。

彼らに感謝を伝えた後、彼らはまた出ていった。


「何、この埃。めっちゃ積もってる。げ! クモの巣に引っかかった! うわっ、カビ臭っ!!」


本当に大丈夫? ここの空気吸ったら死ぬとかない?


なんで誰も使ってないんだろう。アニメでは大体王子や王女が、教養を身につけるために図書館を使ってるみたいな展開があるけど、あの人は病気だからそんなことをする暇も余裕もなかったのかな?



「あった。これかな?」



ペラペラと捲り、書いてある字は日本語ではなかったが、読むことはできるみたいで安心した。

まあ、じゃないとね? 字を学ぶことから始まらないとだし。


正直望みは低かった。

なんでって、そもそもこの世に魔法使いがいないのなら、魔法の本など存在するか不確定だったからだ。

しかし、貴族たちも言っていた。


魔法使いは絶滅したはずだ、と。


私の考えが正しければ、「絶滅した」というなら、以前は「存在していた」ということだ。

それにここはお城。

なんとなくだが、国はもちろん世界中のあらゆる本が置かれているはず。



「ふーん。治癒魔法……ね。病を治すのはこれかな? いや、違うかも。もっと探してみないと……」



❀     ❀     ❀



「こ、これだ!! きっとそうだ!!」


探し続けて、一時間弱。服も手も埃で真っ黒だが、やっと病気を治す魔法を見つけた。

そう、そこには「どんな病も治す魔法」と書かれていた。

アハハ!


……ふざけてんの?


と言ってやりたいところだが、ここは異世界そしてファンタジー。

そんな魔法があっても何もおかしくない。


ここは、私が憧れた世界だ。


現実ではできないことが、この世界ではできる。

アニメの世界。


私はそれに夢見て、今まで生きてきたんだ。

それを信じないならオタク失格。

絶対に大丈夫!!



❀     ❀     ❀



「し、失礼しまーす……」


一時間ほど前まで居た場所なのに。緊張する。

これから、彼の病を治す。

失敗したら……考えるだけでおぞましい。

いや、不吉なことは考えるな!

大丈夫、絶対に大丈夫なんだ。頑張るんだ、私!


ベッドの側に置いてある椅子に座り、まだ寝ている彼の姿を見据える。


てか、本当に綺麗な顔してるよねぇ。なんか、もしこの人が日本の学校に通ってたとして、毎日毎分毎秒女子に告白されているビジョンが見えるんだが? それどころか、ストーカーされているところまで。


というか、何考えてんだ。

さっさと始めよう。


「ええっと? こうやって相手に手を伸ばして……」


ベッドの端に本を置き、説明通りにやってみる。そして……。



「命を蝕む穢れよ、ここにて眠れ。弱りし魂を癒やし、失われし明日に温もりが芽吹く────《どんな病も治す魔法(エターナル・リバース)》」



その瞬間だった。



両手から深緑色の光が輝きを放った。それがどんどん強まり、目を瞑ってしまう。


え、え? 本当にこれであってる!? 大丈夫よね!? これで部屋が破壊されるとか無いよね!? 

それもつかの間、緑色の光は王子の身体に吸い寄せられるように消えていった。



す……すごい!! 本当に魔法が使えた!! 嬉しい! 楽しい! 詠唱もそれっぽかったし、異世界マジでサイコーじゃない!?



そう愉悦感に浸っていると、「うーん……」と喉から絞り出すような声を出して目の前の人物が起き上がる。


「あ、あの……大丈夫ですか?」


その人が目を開いた時、私の心は奪われた。



「え!? ルイ様!?」



今まで目を閉じているからわからなかったけど、この人めちゃくちゃルイ様に似てる!! 

え、本当に!?

マジで顔良すぎ! すごい、すごい!! アニメの顔を三次元で拝めるなんて……!

あ、失敬、よだれが。



「俺、その……セドリックなんですけど……君は? あ、もしかして……」



喋ってるけど、声もよく似てる。やば過ぎるー!!

これで、冷徹かつ一匹狼キャラなら本当にルイ様って呼ぶか??

というか、この顔見ていると「好きな人と推しは別。推しとは適切な距離を保ちたい」って言ってる人の気持ちがわかる気がしたきたよ。

確かに、こんだけ顔が良かったら自分と付き合うとか、妄想するのだけでも恐れ多いと言うか……ね。


「あ、えと、わ、わわ、わ」

うう、ここで「コミュ障」発揮。マジで恨むぁ……!。


「わ、私! さ、さくらと言います! えっと……その……ハーベル国王陛下から、貴方様の病を治すのに側近になれと言われた者でして……」


ふう! なんとか話せた。これでHPどれだけ下がったよ? 「コミュ障」&「引きこもり」には、難儀なものだね。


「もしかして、あの *自主規制 (ピー)していたって言っていたのも……!!」


「ちょ、ストップ、ストップ、ストーップ!!」


それ、さっき私が話した黒歴史!!

てか、起きてたの、聞こえてたの!? そしたらめちゃくちゃ恥ずかしい。

ハア、今猛烈に死にたくなってきた。


「身体も軽い……?」


じっくり確かめるかのように腕をぐるぐると回している。


「あ、その……私、魔法使いらしくて、病を治す魔法をかけたのですが……」


私の言葉と同時ぐらいに彼は私の両肩を掴んだ。


「本当!? ありがとう!!」


「は、はい! どう、いたし、まして……」


異性に肩掴まれるなんて初めてで、頭がオーバーヒートしそうだったが、今ギリギリ理性保ててるのは、この顔面の強さだからだろうか。

折角、私好みである切長の目なのに、私が思ってたハイライトのない瞳と違う。めちゃくちゃ光ってる。眩しい。

冷徹かつ一匹狼……ではなくワンコだな、これは。

ルイ様とはちょっと違う属性キャラだけど、まあ顔が良すぎるから全て良し!!


それより、病気が今ので治ったのか、少し拍子抜けだがこの顔はさっきの寝顔と比べると全然元気そうで顔色も良い。さっきのは本当に死にかけみたいな顔してたからね。

治ったのなら良かった。


「あの、俺! 君の話を聞いてた時、何言ってるかわかんなかったけど、とても面白い子だなって思ってたんだよ!!」


キラキラとした眼差しを向けられるが。

うん? 待って、この展開ってもしや……。





「俺、君が好きだ!! 側近と言わず、俺の許嫁になってくれ!!」





は────。





はあああああああああああああああ!!??


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