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推しカプを見守るため悪役令嬢に転生しましたが、なぜか冷血公爵の本命になりました 〜私は壁になりたいのに、攻略対象たちが全員こちらを見てくる〜  作者: 鳳凰院暁月刃夜


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第17話 社交界が勝手に盛り上がる

 社交界というものは、情報の足が速い。


 それは知っていた。


 前世で言うところの、拡散力の強い匿名掲示板と、近所の噂好きな奥様ネットワークと、会社の給湯室を足して三で割らずに煮詰めたような場所である。


 誰が誰と踊った。

 誰が誰に花を贈った。

 誰が誰の前で笑った。

 誰が誰の名前を二秒長く呼んだ。


 そんなものまで、翌日には尾ひれ背びれどころか、翼まで生えて飛び回る。


 だから、覚悟はしていた。


 王宮舞踏会で、わたくしがセシリア様を庇ったこと。

 レオンハルト様と踊ったこと。

 ユリウス殿下と婚約について話し合ったこと。


 多少は噂になるだろう、と。


 だが。


 多少ではなかった。


「お嬢様」


 リタが、朝の紅茶を置きながら言った。


「本日届いたお手紙でございます」


 銀盆の上に、手紙の束。


 束。


 束である。


 通常、公爵令嬢に届く朝の手紙はそれなりに多い。茶会の招待、季節の挨拶、慈善活動への誘い、あとは母への伝言を兼ねた社交辞令。


 しかし、今日の量はおかしい。


 小山ができている。


 紙でできた小さな山。


「……リタ」


「はい」


「これは何かしら」


「手紙でございます」


「それは見れば分かるわ。わたくしが聞いているのは、なぜ手紙が地形を形成しているのか、ということよ」


「社交界が盛り上がっているためかと」


「盛り上がらないで」


「私に言われましても」


 リタは、淡々と一番上の封筒を取った。


「こちらはモルガン伯爵家のご令嬢からです」


「モルガン伯爵家……」


 思い出す。


 舞踏会でセシリア様に嫌味を言っていた令嬢の一人だ。


 わたくしが少し強めに注意した相手。


「まさか苦情?」


「いえ」


 リタが封を確認しながら言う。


「昨夜、いえ先日の舞踏会でのご無礼を詫び、セシリア様への態度を改めたいとの内容でございます」


「……まあ」


 意外だった。


 もっと反発されるかと思っていた。


「それと、お嬢様の『作法とは人を恥じ入らせるための鞭ではなく、互いに心地よく過ごすためのもの』というお言葉に感銘を受けた、と」


「ああ……」


 言った。


 確かに言った。


 その時はセシリア様を庇うために必死だったが、社交界では綺麗な台詞として流通してしまったらしい。


「そして最後に」


「まだあるの?」


「『ロゼリア様のように、王太子殿下からもヴァイスベルク公爵様からも一目置かれる令嬢になれるよう、精進いたします』と」


「そこは関係ないでしょう」


「社交界では関係があるようです」


「ないわ」


「ございます」


 リタは次の手紙を手に取る。


「こちらはバルネット侯爵夫人から。お茶会へのご招待です」


「侯爵夫人?」


「はい。追伸に、『近ごろ話題の王太子殿下、ヴァイスベルク公爵様、グランツ卿、聖女候補様とのご関係について、ぜひ内々に』と」


「内々に、ではないわ。完全に聞き出す気満々ではないの」


「そのようです」


「断って」


「すでに奥様が興味をお示しです」


「母上!」


 思わず叫んでしまった。


 そういえば、母はこういう話が好きだ。


 娘の恋愛など、貴族令嬢の母にとっては極上の菓子である。

 ましてや相手候補が王太子、冷血公爵、騎士団長などと勝手に噂されているとなれば、母の目が輝かないはずがない。


 終わった。


 家庭内にも敵がいる。


 いや、敵ではない。

 ただ、面白がっている味方ほど厄介なものはない。


「次」


 リタは、表情を変えずに三通目を取った。


「こちらは匿名に近い形ですが、令嬢方の私的な集まりからです」


「嫌な予感しかしないわ」


「『ロゼリア様を中心とした現在のご関係について、皆で整理した図を同封いたしました。ご本人様のご見解をいただければ幸いです』と」


「図?」


 リタが封筒から一枚の紙を取り出した。


 そして、わたくしの前に広げる。


 そこには。


 矢印があった。


 たくさんの矢印が。


 中央に、わたくしの名前。


 ミリア・ロゼリア。


 その周囲に、ユリウス王太子、レオンハルト・ヴァイスベルク公爵、ダリオ・グランツ騎士団長、セシリア・フローラ聖女候補。


 そして、それぞれを結ぶ矢印。


 ユリウス殿下からわたくしへ。


『婚約者。未練あり? 最近さらに関心上昇』


 レオンハルト様からわたくしへ。


『冷血公爵、まさかの密会。実用的贈り物あり』


 ダリオ様からわたくしへ。


『殿下を案じつつ、ロゼリア嬢を警戒。しかし信頼の芽?』


 セシリア様からわたくしへ。


『お姉様呼び。完全懐き。尊敬以上?』


 わたくしからユリウス殿下へ。


『婚約見直し希望? しかし深い配慮あり』


 わたくしからレオンハルト様へ。


『本人は否定。だが動揺多数との証言』


 わたくしからダリオ様へ。


『異様に高評価。信仰?』


 わたくしからセシリア様へ。


『保護。溺愛。女神扱い?』


 最後に、紙の下にはこう書かれていた。


『現在、ロゼリア様中心の四角関係、いえ五角関係の可能性あり。今後の展開に注目』


 わたくしは、無言で紙を見つめた。


 リタも黙っている。


 しばらくして、わたくしは静かに言った。


「燃やして」


「証拠として保管なさった方が」


「燃やして」


「お嬢様」


「燃やして!」


「落ち着いてくださいませ」


 落ち着けるわけがない。


 これは何。


 何ですの、この恋愛相関図。


 しかも、微妙に的確なところがあるのが腹立たしい。


 ダリオ様への『信仰?』など、誰が書いたのだ。


 見抜かれているではないか。


 いや、信仰と言ったのはわたくしだ。

 自業自得である。


 だが、それにしても広まり方がおかしい。


「リタ」


「はい」


「この図を作った令嬢方は、暇なの?」


「社交界の令嬢方は、暇なようで非常に忙しいのです」


「人の恋愛相関図を作る暇があるなら忙しくないでしょう」


「それが社交界における情報戦の一部でございます」


「情報戦の使い方を間違えているわ」


 わたくしは額に手を当てた。


 壁になりたい。


 ただ、それだけだった。


 推しカプを見守り、ヒロイン様を守り、殿下の幸せを祈り、自分は背景美術としてひっそり存在したかった。


 なのに。


 中央。


 恋愛相関図の、ど真ん中。


 悪夢である。


「お嬢様」


「なに?」


「こちらもご覧になりますか?」


「まだあるの?」


「はい。別の令嬢方による相関図です」


「複数あるの!?」


「こちらでは、レオンハルト様が本命扱いでございます」


「見せないで」


「こちらは王太子殿下逆転説」


「見せないで」


「こちらはセシリア様がお嬢様を崇拝しているため、王太子妃ではなく聖女派閥がロゼリア様を支持するのでは、という政治的分析」


「急に生々しいわね」


「こちらはグランツ卿が不器用にロゼリア様を心配しているのでは、という少数派の熱心な考察」


「少数派なのに熱心?」


「文字量が多いです」


「見せて……いえ、見せないで」


 危ない。


 ダリオ様の考察と聞いて、思わず見たくなってしまった。


 駄目だ。


 ここで読んだら完全に負ける。

 何に負けるのかは分からないが、たぶんリタに負ける。


 リタは、すでにこちらをじっと見ていた。


「お嬢様、少し読みたそうでした」


「読まないわ」


「では処分を」


「……保管だけ」


「かしこまりました」


「リタ、今笑った?」


「いいえ」


「絶対に笑ったわ」


「侍女でございますので」


「その言葉、本当に万能ね」


 わたくしは深く息を吐いた。


 すると、扉の外から控えめな声が聞こえた。


「ミリア、入ってもよろしいかしら」


 母だ。


 終わった。


 わたくしが返事をする前に、扉が開いた。

 もちろん、公爵夫人としての優雅さは崩さない。

 しかし、目が輝いている。


 完全に噂を聞きつけた顔である。


「お母様」


「まあ、ミリア。朝から大変ね」


「お母様のお耳にも?」


「ええ。王都中があなたのお話で持ちきりですもの」


「王都中」


「少し大げさに言ったわ」


「安心しました」


「社交界中くらいね」


「安心できません」


 母は楽しそうに笑い、リタが控えめに椅子を引く。


 母は優雅に座った。


「それで、ミリア。あなた、いつの間にそんなに賑やかなことになっていたの?」


「わたくしにも分かりません」


「王太子殿下とは婚約見直し中。冷血公爵様とは東屋でお茶。騎士団長様には心配され、聖女候補様にはお姉様と呼ばれている」


「列挙しないでくださいませ」


「列挙すると、なかなか壮観ね」


「地獄絵図です」


「華やかと言いなさい」


「華やかな地獄絵図です」


 母は扇を広げて笑った。


「まあ、言うようになったわね」


「笑いごとではありません」


「笑いごとではないから、笑うのよ」


「お母様」


「貴族の社交界なんて、真面目に受け止めたら胃がいくつあっても足りないわ。笑えるうちに笑っておきなさい」


 それは、妙に説得力があった。


 母は軽やかだが、ただ面白がっているだけではない。

 公爵夫人として、社交界の面倒さも厄介さも知っている。


 その上で笑っている。


 強い。


「それで」


 母はわたくしをじっと見た。


「本命はどなたなの?」


「お母様!」


「何よ。母親ですもの、気になるわ」


「本命などおりません」


「あら」


「わたくしは、婚約の問題を真剣に考えているところで」


「王太子殿下?」


「それは」


「それとも、冷血公爵様?」


 心臓が跳ねた。


 跳ねるな。


 母の目がきらりと光る。


「今、反応したわね」


「していません」


「したわ」


「していません」


「リタ」


「はい。反応なさいました」


「リタ!」


 裏切り。


 いや、リタは最初から正直陣営だった。


 母は満足そうに頷く。


「なるほど。噂も全部が嘘ではないのね」


「お母様、誤解です。レオンハルト様とはそういう関係ではありません」


「では、どういう関係?」


「事情聴取をされる関係です」


「まあ」


 母は、なぜか楽しそうに目を細めた。


「随分と物騒な恋の始まりね」


「恋ではありません!」


「恋ではないと強く否定する時ほど、だいたい恋なのよ」


「お母様まで!」


 家の中にまでリタとセシリア様が増えた。


 もう逃げ場がない。


 壁どころか包囲された城である。


 母は笑いながらも、少しだけ真面目な顔になった。


「でもね、ミリア」


「はい」


「あなたが注目されるのは、悪いことばかりではないわ」


「そうでしょうか」


「少なくとも、今の噂はあなたを悪女として語っていない」


 その言葉に、わたくしは黙った。


 母は続ける。


「聖女候補様を庇った優しい令嬢。王太子殿下を自由にしようとする婚約者。冷血公爵様が目を留めた不思議な公爵令嬢。騎士団長様にも一目置かれる方」


「……ずいぶん好意的ですわね」


「もちろん、やっかみもあるでしょう。面白がっている人もいる。けれど、以前のあなたなら、別の噂になっていたはずよ」


 以前のわたくし。


 いや、前のミリア。


 殿下に執着し、他の令嬢を睨み、セシリア様をいじめる悪役令嬢。


 そのままなら、社交界で流れる噂はもっと冷たく、もっと悪意に満ちたものだっただろう。


 今は違う。


 恋愛相関図はひどい。

 本当にひどい。


 だが、少なくとも、わたくしは悪女としてだけ語られてはいない。


「あなたが変わったから、噂も変わったのよ」


 母は優しく言った。


「それは、悪いことではないわ」


 胸に、少しだけ温かいものが落ちる。


 母は、わたくしの変化に気づいている。


 そして、責めていない。


 それが少し、嬉しかった。


「ただし」


 母は扇で口元を隠し、目だけで笑った。


「冷血公爵様とのお茶の話は、あとで詳しく聞かせてちょうだい」


「お母様」


「母親ですもの」


「その言葉も万能ですのね」


 母は笑って立ち上がった。


「お父様にはまだ詳しく話していないわ」


「なぜですか?」


「胃薬を用意してからの方がよいと思って」


「父上……」


 父の胃が心配である。


 母は軽やかに去っていった。


 嵐のように来て、嵐のように去った。


 部屋には再び、わたくしとリタ、そして手紙の山が残される。


 わたくしは椅子に沈み込んだ。


「リタ」


「はい」


「わたくし、背景美術でいたかったの」


「はい」


「なのに、なぜ主役扱いされているのかしら」


「お嬢様が目立つ行動ばかりなさるからでは」


「わたくしは目立つつもりは」


「セシリア様を公衆の面前で庇い、王太子殿下に婚約見直しを申し出て、冷血公爵様と東屋でお茶をし、騎士団長様を熱心に褒め、聖女候補様にお姉様と呼ばれております」


「列挙しないで」


「目立たない方が難しいかと」


「……そうね」


 反論できない。


 完全に自業自得である。


 その時、また扉が叩かれた。


 今度は若い侍女が、少し緊張した顔で入ってくる。


「お嬢様。ヴァイスベルク公爵様より、使いの方が」


 心臓が跳ねた。


 また?


 リタがこちらを見る。


 見ないで。


「通して」


 わたくしがそう言うと、侍女は一礼して下がった。


 すぐに、公爵家の使者らしき落ち着いた男性が入ってくる。

 手には小さな封筒。


「ロゼリア様。公爵閣下より、こちらを」


「ありがとうございます」


 封筒を受け取る。


 深い青の封蝋。


 もう見慣れてきた自分が怖い。


 使者が下がると、リタが静かに言った。


「開けないのですか」


「開けるわ」


「封筒を撫でておられます」


「紙質を確認していたの」


「恋です」


「違うわ」


 わたくしは封を切った。


 中には、短い文。


『噂が広がっている。


 不用意な茶会や私的な集まりには出るな。

 面白半分に近づく者も増える。


 必要なら、私の名を出せ。

 それでも退かない相手なら、私が対応する。


 ヴァイスベルク』


 短い。


 相変わらず無駄がない。


 だが。


 これは、つまり。


 守ってくれている。


 わたくしは、しばらく手紙を見つめた。


 リタがそっと覗き込む。


「お嬢様」


「何?」


「これは、牽制でございますね」


「そうね」


「そして、心配でもございますね」


「……そうね」


「恋です」


「そこで結論を急がないで」


 リタは、少しだけ笑った。


 わたくしは手紙を胸に抱きかけて、慌てて止めた。

 危ない。


 リタに見られる。


 もう見られている気もするが。


「公爵様は、噂を止める気なのかしら」


「止めるというより、利用するおつもりかもしれません」


「利用?」


「ヴァイスベルク公爵様が目を光らせていると知れば、面白半分に近づく方は減ります」


「それは助かるわ」


「ただし、レオンハルト様との噂は強まるかと」


「助からないわ」


「どちらを取るかでございます」


 わたくしは、手紙を見つめた。


 面白半分の茶会や集まりから守られる。

 代わりに、冷血公爵との噂が強まる。


 困る。


 だが、ありがたい。


 ありがたいのが困る。


「リタ」


「はい」


「わたくし、壁になりたいのだけれど」


「はい」


「公爵様の隣に立つと、目立つわよね」


「たいへん目立ちます」


「では駄目ね」


「ですが、面倒は減るかと」


「面倒を減らすために別の大きな面倒を背負うのはどうなのかしら」


「人生とは、そういうものかと」


「急に哲学」


 リタは紅茶を注ぎ直してくれた。


 わたくしは、手紙を手帳に挟んだ。


 レオンハルト様からもらった手帳に、レオンハルト様からの手紙を挟む。


 それだけで、何かがまた一つ積み重なってしまった気がした。


 その日の午後。


 社交界の噂は、さらに形を変えた。


 冷血公爵レオンハルト・ヴァイスベルクが、ロゼリア公爵令嬢に近づく不審な茶会を牽制しているらしい。


 王太子殿下は、婚約者ミリアをまだ手放す気がないらしい。


 騎士団長ダリオ・グランツは、殿下のためと言いながらミリア嬢を気にしているらしい。


 聖女候補セシリア・フローラは、ミリア嬢をお姉様と呼び、誰よりも慕っているらしい。


 そして、ミリア・ロゼリアは――


 全員に愛されているらしい。


「違いますわ!」


 わたくしは、夕方になって新たに届いた噂書きを読み、思わず叫んだ。


「お嬢様」


 リタが、隣で冷静に言う。


「落ち着いてくださいませ」


「落ち着けると思う? 全員に愛されているらしい、って何ですの。わたくしは壁になりたいのよ。壁が全員に愛されるなんて聞いたことがありません」


「名建築の壁なら、愛されるかもしれません」


「そういう問題ではないわ!」


「お嬢様」


「何?」


「現実は、公爵様の形で迫っております」


「その言い方はやめて!」


 リタは、ほんの少しだけ笑った。


 わたくしは手帳を開き、今日の欄に書いた。


『社交界が勝手に盛り上がっている。

 王太子殿下、冷血公爵様、騎士団長様、聖女候補様との相関図が作られた。

 壁になる計画、重大な危機。

 特に冷血公爵様の牽制がありがたいのに困る。

 推し活より先に、自分の噂対策が必要。

 なぜ。』


 書いたところで、手が止まる。


 少し考えて、一行だけ追加した。


『でも、悪役として噂されていないことは、少しだけ嬉しい。』


 書いてすぐ、手帳を閉じた。


 誰にも見せない。


 これは、わたくしだけの本音だ。


 壁になりたいのに、中心に立たされている。

 噂は怖い。

 面倒くさい。

 逃げたい。


 でも。


 悪役ではないと、少しずつ世界が言い始めている。


 そのことは、確かに。


 少しだけ、嬉しかった。


「お嬢様」


 リタが言った。


「明日は、王宮から正式な茶会の招待が届くかもしれません」


「なぜ?」


「噂がここまで広がれば、王宮側も何らかの場を設ける可能性がございます」


「嫌な予感がするわ」


「私もいたします」


「リタが同意すると、余計に怖いわね」


「はい」


 わたくしは椅子にもたれ、天井を見上げた。


 社交界が勝手に盛り上がる。


 噂が噂を呼び、わたくしの知らないところで恋愛相関図が量産される。


 わたくしはただ、推しカプを見守りたかっただけなのに。


 壁になりたかっただけなのに。


 どうして。


 どうして、わたくしの周りだけ、こんなにも人が集まってくるのだろう。


 答えはまだ分からない。


 ただ一つだけ分かることがある。


 壁になるには、わたくしはもう、あまりにも目立ちすぎていた。


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