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第六話「遠くへ行った」
温かさが、遠くへ行く日があった。
朝に出て、戻らない時間があった。
長い時間だった。
雛は巣にいた。
温かさがなかった。
外の音があった。
風の音があった。
葉の音があった。
雛は声を出した。
返事がなかった。
また声を出した。
返事がなかった。
腹が減った。
声を出した。
返事がなかった。
雛は待った。
待つことしかできなかった。
待ちながら、声を出した。
小さな声を。
影が来た。
大きな影が来た。
雛は動かなかった。
温かさが来た。
くちばしに、何かを持っていた。
雛の口に入れた。
腹が満ちた。
温かさが、羽の下に雛を入れた。
包んだ。
雛は声を出した。
大きな声ではなかった。
小さな声だった。
温かさに向けた、小さな声だった。
温かさが声を出した。
低く、繰り返す声を。
雛はその声を聞いた。
いつもの声だった。
変わっていなかった。
眠った。
温かさの中で眠った。
遠くへ行っていた温かさが、戻ってきた後の温かさの中で。
(第六話 了)




