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母の羽の下で――ある雛の話  作者: Kentarou Tou / Kentarou Theater


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第五話「外を見た」


ある日、温かさが羽を開いた。


いつもより大きく、開いた。


外が見えた。



広かった。


今まで見えていたより、ずっと広かった。


木があった。


空があった。


遠くに、別の木があった。



雛は、その広さを見た。


動かなかった。


ただ、見た。



温かさが、巣の縁に立った。


雛も、縁の方へ動いた。


縁から、下を見た。


遠かった。


下は、遠かった。



雛は声を出した。


温かさが来た。


雛の傍に立った。


並んで、外を見た。



風が来た。


温かさの羽が、少し広がった。


風を受けた。


雛も風を受けた。



遠くで、別の声がした。


知らない声だった。


温かさは動かなかった。


雛も動かなかった。


ただ、その声を聞いた。



温かさが、また羽の下に雛を入れた。


外を見ていた時間が終わった。


しかし雛は覚えていた。


広さを。


空を。


遠くの木を。


風を。



覚えていた。


その広さの中に、温かさがいた。


温かさの傍にいれば、あの広さへ出ていける。


そう、体が知っていた。



(第五話 了)

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